表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
15/31

第十四話 影人族の少女

サブタイトルを修正しました。

※2017年10月30日

※2017年11月25日 再修正しました


 現れた少女はオレの姿を確認すると微笑みを浮かべたが、直ぐに違和感を感じ取ったのか、大きく目を見開いた。

 どうやらオレの出方を窺っているようだ。


 レノの記憶によると彼女の名前は“ルーネ”。

 レノとは幼馴染で、二人でよく狩りに行く仲でもある。


 そして、オレが夢の中で出会った美しい銀色の髪をした少女だ。

 今は黒色のワンピースをカラフルな腰帯で締めている。

 夢ではないのだとすると、あの景色は本当に存在している可能性がある。



 (良い場所だったよな。行ってみたいな)



 レノには聞きそびれてしまったが、情報共有の際にでも聞いてみればよいだろう。

 取りあえず、いきなりの戦闘という事態には陥ることはないみたいで安心した。

 だが、明らかに彼女は警戒しているみたいだ。


 「……レノ? レノ、よね?」


 オレのほうから話しかける前に、彼女から話しかけてきた。

 本当はゆっくりと話し合って、信頼感を得るのが良いのだろうけど、今は時間をかけている余裕はない。

 それに、今回のオレはサトラセというスキルを持っている。


 「冷静に、驚かずに聞いてほしいんだけど。オレの名前はケイタ。

 貴方はルーネ、だよね?」

 「っ! なぜ、私の名前を? 

 いや、そんなことより、ケイタ? どういうこと?

 なんでレノの姿をしているの?」


 ケイタと名乗ったことでルーネは警戒を強め、身構える。

 どこまで説明していいものかと思案するが、今の時点で伝える情報は最低限にした方がいいだろう。


 「そのままで良いから、話を聞いてもらえるかな。

 オレは別の世界から転移させられ、その際にレノと融合したんだよ。

 このことはレノから教えてもらった。

 だから、オレとレノは、えっと共生状態にある、らしい」


 ルーネはこれでもかという位に目を見開いて、驚いている。


 「な、なんなのよ。転移? 融合? 嘘ではないみたいだけど……。

 でも、どういうこと? レノと話はできないの?」

 「今は無理、だね。だけど、オレもそうしたい。

 だから、その方法を探すつもりだよ」

 「そう。ケイタと言ったわね。

 それは理解したのだけど、聞きたいことがいっぱいあるわ。

 転移させられたはずの貴方が何故そんなに冷静なの?

 私は何人か転移者を見たことがある。みんな一様に冷静さを失っていたわ」


 それはごもっともだ。

 ただし、転移した人と融合した人には大きな差がある。

 この世界の知識を事前に得ているというのは、精神的に優位性がある。

 しかもスワンとレノの記憶があるため、この世界に住んでいたかのような感覚すらある。


 「今までの転移者がどういう状態でこの世界に来たのかは分からないけど。

 オレはレノと記憶や知識を共有している。

 だからかもしれないけど、不思議と不安は感じてないね」

 「融合……ね。分かってるのかしら。それが本当だとしたら、とても厄介よ。

 無駄だと分かっていて聞くけど、貴方とレノが元に戻る方法はあるの?」



 (そうだよな。考えないようにしていたけど、そうなんだよ)



 避けられない選択だったとはいえ、いずれはその問題にぶち当たる気がしていた。

 スワンはベロスと別れる方法は見つからなかったと言っていた。

 でも、オレは諦めるつもりはない。方法は探し続けるつもりだ。


 「正直言って分からない。だけど、その方法は諦めずに探すつもりだよ。

 レノのため、というのもあるけど、オレ自身のためでもあるしね」

 「はぁ。レノ…………なんで……」


 ルーネは両手を胸の前で組んで、俯いてしまった。


 「極めて最悪な状況であるということは理解したわ。

 それで、この後はどうするつもり?」

 「レノからは街か村に向かえと言われているけど」

 「村に戻るのは危険だと思うわ」

 「危険? レノの住んでいる村じゃないの?」


 彼女は俯いたまま、美しい顔を曇らせる。


 「私はレノが心配なの。申し訳ないけど、貴方のことは心配していないわ」


 そう言って、彼女は顔を上げて強い目でオレを睨みつける。


 「あのね、レノは狩りに出かけてから、一週間戻ってこなかった。

 本格的な狩りであれば一週間くらいは普通だけど。

 その時はその日の内に帰ってくる予定だったのよ。

 だから、何日も野宿できるような準備はしてない。

 いくらなんでも、準備をしていなければ生き残れないわ」


 体感的にはかなり長い時間、あの空間で鍛錬を積んでいた。

 結界の外の時間もそれなりに進んでいる思ってはいたが、たったの一週間。

 それはつまり、レノが行方不明になって一週間と同義。

 その期間は、ルーネを不安にさせるには十分な長さであったということだ。


 「私達はこの近くの村には住んでいないわ。

 その村が人手不足だから、定期的に視察に来ているのよ。

 だから、この視察中にレノがいなくなるなんて誰も想定できなかった。

 私は何度も森に探索に出かけたわ。それで、三日目くらいね。

 半球状に結界が張られている場所を見つけたのよ」


 間違いない。

 オレ達が閉じ込められていた結界のことだろう。


 「そこを重点的に調査していたら、今日になって急に結界が消えていた。

 それで、慌てて索敵してみたら気配を感じたから様子を見にきたのよ。

 そうしたら貴方がこちらを見て立っていた。でもね、レノならそんなことしないわ」


 ルーネはオレに聞こえる位のぎりぎりの小さな声で

 『レノならえらそーに、かっこつけて座って。こっちを見ずに待ってるもの』

 と言った。


 「村人はレノが急に行方不明になったことを知っているわ。

 その状況で、一週間戻ってこなかったレノが急に戻ってきて、しかも中身は違う人。

 そんなことが発覚したら村の皆が混乱して、何が起こるか予想できないわ」


 レノからは街か村に向かえと言われていたが、あわせて最初にルーネと話すようにとも言われていた。

 懸念事項はもう少し詳細に説明しておいてほしい。

 そして、もう一点だ。ルーネを旅に連れて行って欲しいと言っていた。


 だが、スワンの記憶からは、旅の途中も最後の場面にもルーネの姿はなかった。

 そうすると、旅に参加していない、もしくは旅の途中で命を落としたか。

 オレは率直に懸念をレノに伝えた。


 それでもレノは

 『僕の気持ちは変わらないよ。

 だから、今までの僕も同じようにケイタに依頼したはずだ。

 ルーネを旅に同行させてあげて欲しい』

 と言った。

 そこまで言われたら断る理由はない。

 会話が落ち着いたところでルーネを旅に誘うことにした。


 「確かにそうだね。村には戻らない方が良いっていうのは分かったよ。

 えっと、でもさ、今のオレ達には君の助けが必要なんだ。

 何か良い案はないかな?」

 「……君ではなくルーネと呼んでもらえる?

 レノの顔で“君”と言われると気持ちが悪いわ」


 そう言ったルーネは眉をひそめ、心底嫌そうな表情をしている。


 「あ、うん。分かったよ。ルーネ、助けてほしい」

 「ふぅ。そうね……。なるべく人との接触は避けて、族長のところに行きましょう」

 「族長?」

 「そうよ。族長であれば、何か方法を知っているかもしれないわ」


 彼らは影人族というのだから族長だ。

 それに、神殿や封印角とともに“国都”も海に沈んだ。

 つまり、今は国を維持することはできず、国と呼べる状況にない。


 「誰とも話さずに、ね。人によっては違和感を持つんじゃないかな?」

 「見た目はレノだから平気じゃないかしら。注意は必要でしょうけど。

 それに、貴方からは敵意を感じないから大丈夫だと思うけど。

 族長に害をなすつもりはないでしょね。

 まぁ、族長に手を出して勝てるとは思えないけど」


 族長と言うからには、それなりの実力者であることは想像できる。

 それに求めているのは支援であり、争うつもりはない。


 「その通りだよ。オレ達は事を荒立てるつもりは一切無い」

 「分かったわ。それなら急いで街に行きましょう。

 それじゃ、少しだけ注意事項を伝えておくわ」

 「注意事項?」

 「レノは私以外の人とはあまり話さなかった。

 だから、感じが悪くならないように注意しつつ、無口を演じるようにして。

 それから、私は貴方のことをレノと呼ぶから。

 無視しないで返事するようにしてね」


 こうしてオレ達は族長のところに行くことになった。

 そしてルーネはここに至り、ようやくオレへの警戒を解いた。



 「それは問題ないかな。オレはもともと無口なほうだと思うし」

 「助かるわ。でも、これだけは言っておくわね。

 貴方の話は本当みたいだけど、私が心配なのはレノのことだけ。

 レノの体が傷つくのは許せない。

 だから……、族長のところで詳細を聞くまでは、協力してあげる」

 「それでかまわないよ。ありがとう」


 握手をしようと右手を差し出すが、ルーネは首を傾げる。

 握手の文化がないのかもしれないが、右手は行き場所を失った。

 若干の気恥ずかしさを感じつつ、仕方がないので無駄に右手をわきわきしながら元の位置に戻した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ