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サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
12/31

第十一話 結界からの解放

サブタイトルを修正しました。

※2017年10月30日

※2017年11月25日 再修正しました



 「さて、そろそろ休憩も終わりにして始めよっか」

 「……なんだか立場が逆になってきた気がするよ」


 オレのステータスはレノに確認してもらっているから良いけど、レノのステータスを確認する方法が無いのがつらい。


 「ステータスは肉体に紐付くって言っていたよね。

 魂の融合で資質は上がるのは確認できている。実績ある事実だ。

 だけど、ケイタのステータスは資質に比べるとかなり低い。

 肉体に紐付くというのは、ステータスは共有されない、ってことだろうね」

 「おそらく、そうだと思う」


 資質やステータス、そして肉体に魂。

 それぞれ関連はあるようだが、全ての情報は曖昧だ。

 関連性を紐解く方法があれば知りたいところだ。


 「スワンはベロスに姿を変えることができた。

 スワンの姿の時はスワンのステータス、ベロスの姿の時はベロスのステータス。

 上手くすれば戦略的に活用することもできるなんじゃないか。

 いずれにしても、融合後にステータスを確認すれば分かることだよ」

 「うん、そうだね」


 オレは既にスワンとベロスの魂と融合をしている。

 仮にレノと魂の融合をした場合、三人と一匹が融合したことになる。

 そうすると、資質はまた上がる。

 それがスワンの言っていた反則的に上昇した資質なのだろう。


 きっと、レノも考えているのだろうけど、今はお互い口に出さなかった。

 魂の闘争はまだ終わっていないから。

 どちらが主になるのかはまだ決めていない事項だ。



 (レノの魂に融合されることになったら、スワンとべロスの魂も融合されるのかな?)



 魔族はこういうケース、イレギュラーを想定していなかったのか。

 それとも、イレギュラーが発生しても、勝てる自信があると言うことなのか。

 もしそうだとすると、魔族とそれ以外の種族の間には大きな実力差があることになる。

 やはり、慢心せずにステータス、スキルを磨き、経験を積み続ける必要がある。


 休憩後の鍛練はさらに気合を入れて頑張った。

 長々と続く鍛練と、ゾンビのように食らいつくオレにレノは悲鳴を上げていた。



--------------------------------------


 この空間の中でどれほどの時間が過ぎたのか。

 オレはスワン達と魂の融合を実施したことで資質は上がり、上限も上昇したはずだ。

 だが、鍛練でのステータス上昇はかなり緩やかになってきていた。

 ステータスは資質によって制限が設けられているが、ステータスは鍛練や戦闘によって上昇させることができる。


 ステータスの成長が努力の証明。スキルに関しては熟練度が努力の証明となる。


 パッシブスキルに熟練度はないのでアクティブスキルが対象となる。

 熟練度を上げるためにはスキルを使用し続ける必要があった。

 鍛練は長期計画であったので、この期間中に一つのアクティブスキルを使い続けることにした。


 魔源力が枯渇すれば魔源力の上限も上がるので、一石二鳥。

 オレが選んだのは魔法っぽいスキルの“生活魔法”である。

 レノが生活魔法の熟練度をあげることを勧めてきたのが決め手だった。


 コモンスキルである生活魔法は、上位スキルよりも熟練度が上げやすい。

 熟練度が上がれば、追加効果や消費魔源力の減少等の恩恵が受けられる。


 生活魔法といえば、体を洗浄する効果が基本と言っていた。

 そこで体を洗うイメージを膨らませ、頭の中で生活魔法と唱えてみる。

 すると……、手や顔に付着した汚れが消えてきれいになった気がした。

 その効果を見たレノに『最初はそんなもんさ』と笑われてしまった。


 だけど、オレはそんなことが気にならないくらい、生活魔法が使えたことが嬉しかった。

 現在所持しているスキルの中で、目に見えて魔法っぽい効果を発揮してくれたのは生活魔法だけだ。

 それに、生活魔法も魔法の一つだと考えれば、他の魔法も使いこなせる可能性はある。


 スキルも大事だが、魔法が使えてこそのファンタジー世界だ。


 ちなみに、レノが生活魔法を唱えると体だけではなく服や装備もきれいになった。

 正直言ってオレは驚いた。

 熟練度の違いが、目に見えるほどだとは思っていなかったからだ。

 これをきっかけに、オレはこと有る毎に生活魔法を使い続けた。


 そして、長い時間をかけて、ようやく生活魔法の熟練度が上限に達した。

 透視を使っても各スキルの詳細、熟練度を確認することはできない。

 上限に達したことが分かったのは、レノの情報によるものだ。

 生活魔法が上限に達した際の追加効果に“パーティメンバーへの効果適用”がある。


 オレが生活魔法を使った瞬間にレノの体も洗浄されたのだ。

 それも装備も含めてきれいにピカピカ。

 詳細を確認できないのは残念だけど、達成感があって地味にうれしかった。

 そして、使い続ければ上限に達することが分かったのは精神的にも大きかった。



 魂の闘争を終わらせる判断は難しかった。

 少しずつではあったが、ステータスは上がり続けていたからだ。

 生活魔法の熟練度が上限に達したこと、レベルの近い者同士の鍛練ではステータスの成長に限界があること。

 この二点を悟ったことで、オレ達は闘争を終わらせる決断をした。


 レノのステータスに近づくにつれて、オレのステータスの成長は上がり辛くなった。

 上がらないと言うことではないが、はっきりと言って効率的ではなかった。

 やはりゲームでいう“倒す”という行為が必要なのかもしれない。

 これらを切っ掛けにオレ達は鍛練を終了することにし、融合後のルールについて話し合った。



 そして、オレ達は魂の融合を果たした。融合してみれば実に簡単なことだった。

 簡単だからこそ、恐ろしいと感じた。

 魂の割合についても二人で合意した通りに設定することが出来た。

 闘争が終わり、融合を果たし、魂の割合が決定すると、結界は光を放ちながら発散し消え去った。



--------------------------------------



 結界が発散した後、オレは同じ場所に立っていた。

 長い時間、結界の中にいたことで何かしらの影響があるかもしれない。

 そう思って警戒していたが、特に何も起こらなかった。

 

 「拍子抜けした気分だな」


 もちろん、何もないほうがいいのだが。

 もし、結界の中でステータスやスキルを確認していたら、どうなっていたのだろうか。

 この時点から魔族が追跡を始める可能性があるのだとすると、非常に危険な潜在リスクと言える。

 そのリスクが頭を過ったが、今は少しの不安と大きな好奇心を感じていた。



 (そりゃそうだろ。ここから異世界での生活が始まるんだからさ!)



 「レノ?」


 返事は無い。


 「やっぱり覚醒状態にあると話をするのは無理か」


 結界の外は、オレがいた世界の森と同じように土や木、草の香りがした。

 そこには大きな違いがあるようには見えず、結界に張り付いていた景色にも大きな変化は見られなかった。

 ただ、風は木々の葉を揺らし、空で停止していた鳥達は既にいない。

 目に見える変化は、時間の流れが戻ったことを実感させた。


 レノに教えてもらったが、ここは“クダの森”と言うらしい。


 暫くすると、スワンの時と同じようにゆっくりと記憶が共有されてくる。

 一般的な常識、基本知識に関しては二人の情報に大きな差異はない。

 むしろ不足していた情報が相互に補われ、じわぁっと頭に馴染む感じがした。


 なぜだか懐かしく、元々この世界で暮らしていたような気がしてくる。

 これであれば、容易にこの世界に溶け込める、そんな予感がした。

 違う世界の人間として、周囲に違和感を感じさせることもないだろう。

 なるべくリスクは無いほうが良い。


 次に頭に流れてきたのは、レノの個人に依存する記憶だった。

 スワンの時と同じく断片的な情報であり、写真のような映像だった。


 スワンと違うのは映像にノイズが掛かっていないことだった。

 それに、もう一つの大きな違いがあった。

 レノが幸せそうにしていたのは子供の頃だけ。

 それ以外の記憶はオレにとっても辛い情報だった。



 レノが感じている辛さは、オレがレノと行動することで解決できるかもしれない。

 その道程は一つではない。オレはそう信じたい。

 気がかりなのはスワンの映像にノイズがかかっていたこと。情報の違いはオレに不安を感じさせた。



 オレがこの世界で取りえる手段は多くない。

 それにここで悶々と考え込んで、じっとしている訳にはいかない。


 「レノとの約束通り、まずは街か村に向かって移動してみようかな」


 その時、木々の間を一陣の風が通り抜け、風に混じった“塩の香り”に気がついた。



 (海が近くにあるのかな?)



 塩の香りが風に乗って流れてくる方に木々の間を縫って進み、森をぬけた先には――断崖絶壁から見下ろす広大な海は陽光に煌き、その向こうに果てしない大陸が広がっていた。

 そして、大陸を覆う遥か空には“明らかに鳥ではない何か”が優雅に舞い、この世界の空の支配権を主張しているようだった。


 その景色に圧倒され呆然とするオレに向かって風が強く吹きぬける。

 まるで、オレを森林に押し戻し“さあ、進め”と促しているような気がした。


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