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サトラセ士ケイタの言霊(旧作)  作者: 海地日向
第一章 デノーフ・バ・フィアー
11/31

第十話 息抜きと情報共有

サブタイトルを修正しました。

※2017年10月30日

※2017年11月24日 再修正しました


 初戦の結果から三点ほど分かったことがある。


 一点目は自然の助力だ。

 自然の助力が発動しなかった原因を知る必要がある。

 魔源力が足りないからか、それとも何かの条件を満たしていないからか。

 いずれにせよ、まだ戦闘では使わないほうがいいだろう。

 まったく。攻撃系アクティブスキルは破壊の拳だけって刷り込んだ意味が無かった。


 二点目は生命力だ。

 生命力がゼロになってもオレは生きていた。

 結界による回復効果の発動前に、生命力がゼロになっていたにも関わらずだ。

 つまり、生命力がゼロになったら直ぐに消滅するのではない。

 猶予時間があり、その間であれば蘇生が間に合う可能性がある。


 三点目はステータスだ。

 生命力がゼロになった結果、生命力の上限が上がった。

 ゼロになると死ぬので、ゼロでなくてもいいのだろう。

 減少量に応じて上限が上がるのか、生命力が低い状態であれば上がりやすいのか。

 他のステータスとあわせて検証が必要だ。



 こうして、オレとレノの二人はこの結界の中で長い鍛練を積んだ。

 長い鍛練の間、

 『もう限界だよ。もういいんじゃない。もう、いいんじゃ、ないかい?』

 と懇願するように言ってくることがあった。


 だが、オレは頑なに

 『積み上げが大事なんだ。こういうことは。

 コツコツとコツコツとやり続けることが大事なんだよ。

 時間をあまり気にしなくていいなんて最高の環境じゃないか』

 と言うと、抗うことを諦め、遠い目をして付き合ってくれた。


 その時、レノが最後に放ったの一言は

 『ケイタがここまでしつこいとは想像していなかったよ……』

 だった。



 休憩時間にオレ達はお互いに情報共有することにした。

 その中で、オレはレノの一族の歴史について少しだけ話を聞いた。



  ハイエルフは卑劣な罠に嵌められ、呪いをかけられた。

  灰色の肌は呪いの証。

  呪いは、徐々にハイエルフの貴重な過去の記憶を蝕んでいった。

  ハイエルフの記憶は徐々に、確実に失われていった。

  いつしかハイエルフは古い歴史にのみ存在する種族となる。

  影人族がハイエルフであったということを覚えているものは少ない。


 

 この歴史が本当であったとして、レノが成し遂げたい事はなんだろう。

 夢の中で伝わってきた感情からすると、復讐なのかもしれない。

 レノの記憶は失われていないということなのだろうか。

 諦めきれない復讐心を抱え、悶々と過ごしてきたのだろうか。


 レノはコツコツとしつこくやり続けることに抵抗感を示していた。

 だけど、いつしかネガティブに考えることを止め、オレに付き合うようになった。

 何がレノを変えたのか。


 最初は一方的にオレのステータスが上がっていくだけだった。

 ステータスに差があったので、当たり前のことだけど。

 でも、レノもステータスが上がっていることを実感したんだと思う。

 だから、自分がやるべきことを見つけられたのかもしれない。


 与えられてばかりいたオレが、何かを提供できたのかもしれない。



 次はオレの番だ。

 重要なことを思い出したので、その事をレノに共有することにする。


 「そういえば、スワンは意識を維持したままベロスに姿を変えていた。

 つまり、魂の融合後であっても、姿を変えることは可能ってことみたいだ。

 具体的な方法は共有されていないから、何度か試してみる必要はあるけど」

 「ほお」

 「どうやら、複数の魂を融合した魂には“揺らぎ”という物があるらしい。

 その揺らぎに魔力で干渉することで、精神世界に場が構成されるみたい」

 「……ふむ。魂の融合時に魂の割合が決まると言っていたね。

 おそらくだけど、その際に見た目を選べるんじゃないか?」


 眉間に皺を寄せて考える。可能性としては十分あり得る想定だ。

 

 「例えば、融合後は一つの魂に見えるが揺らぎのある不安定な状態だ。

 この魂の揺らぎに干渉し“更に不安定な状況”を作り出す。

 すると、低い割合であった方の魂が、魂の割合を奪いに来る、とか?」

 「結界はどうなる? この空間は作れないよね」

 「結界を張るには魔法を発動する必要があるからね。

 既に魂は一つの塊になっているから、精神は共有状態になっている可能性が高い。

 個人の精神世界は、他人が干渉できない結界の中のようなものじゃないか」



 (うーん、難しいな。そんなことができるのか?

 仮にその想定が正しいとしても、普通は実施しないだろう。

 だって、再戦するってなると……)


 

 「再戦するとなると、信頼関係が成立していることが大前提だよね」

 「そうだよ。スワンとベロスの場合は、ベロスが犬だからできたんじゃないかい。

 二歳の犬なんて無邪気でかわいいもんでしょ」


 確かにその通りだ。犬の姿になれても嬉しいとは思わないけど。

 オレはスワンを不憫に思い、そしてはっと気がついた。


 「服は……、どうしてたんだろ」

 「意外だな。ケイタもそういうことを考えるんだな」


 レノが今まで見たことがないくらいニヤッとしている。

 意外も何も、レノがこういう話が好きなことこそオレにとっては意外だった。



 「さて、そろそろ休憩も終わりにして、始めようか」

 「そうだな。そういえば、こっちの世界に来た時に顔を覆ってた布はなんだい?」

 「ああ。マスクね。オレの世界に慢性的な病のようなものがあってね。

 その病の原因になる物が空気中にあるから、吸い込まないようにしていたんだよ。

 だけど、この世界にきてからは治まっているから、今は使う必要はないけどね」

 「そうか。それは良かった。あの布をつけていると目立ってしょうがないからね」


 そう言うとひと事だと思っているレノは声に出して笑っている。

 だけど、これは歓迎すべきハッピーなことだった。

 今のところかもしれないが、この世界ではアレルギーは発症していない。

 そういえば、海外に住むとアレルギーが治まるという話を聞いたことがあった。



 (屋外で思いっきり息を吸うことができるなんてな。

 本当に、いつ以来だろう。

 ここはレノの助言を聞いてマスクは着けないようにしよう。

 今はつける必要もないし、敢えて目立つ必要もないからな)



 「それにしても、ケイタの資質は本当にどうなっているんだ。

 やっぱり、ケイタが人間族と同じ種族だとは思えないね。

 魂の融合の影響がここまで大きいと、さすがに脅威に感じる」

 「資質の高さ、か。オレだけじゃないからな。

 スワンから聞いている限り、全ての魂の融合者が対象になるな。

 敵に回ったら非常に厄介な存在になりかねないね」

 「その通りだ。警戒した方がいいだろう。

 ステータスを見る限り、ケイタの種族は人間族なんだよね。

 だから、この世界の人間族と同じ資質が基本だと思っていいと思う。

 しかし、だ。ケイタが本当に優れている点は資質の高さじゃない……。

 数えきれないくらい死んでも、死にかけても決して諦めない。

 いつまでも鍛練に打ち込もうとするしつこい姿勢だと思うね」


 レノが遠い目で遠くの動かない空の雲を見ながらそんなことを口にした。

 レベルが無ければ、ステータスを上げるのは基本中の基本。

 オレにはレノの言っていることがすごいことだとは思えなかった。


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