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恋する氷華の星間戦争  作者: 遊観吟詠
破章十二、星間会戦編
110/126

13-(9) 老兵の意地(中央の戦い)

 開戦直後から押しまくる天童愛てんどうあいの星間連合軍の中央戦闘群ちゅおうせんとうぐん


 天童愛は、李紫龍りしりゅう三面三角錐陣形さんめんさんかくすいじんけい(スリーサイズ・ピラミッドフォーメション)を見て、


「ピュラミッドですか……」

 と、口にしてから黙考。


 宇宙空間でも艦艇は基本平面運が基本。立体陣形は運用が煩雑はんざつで手間だ。


 陣形が上下に広がり立体的に見えても実は横面を縦にしただけとか、もしくは平面を2枚組み合わせただけ、平面に毛が生えた程度に上下に艦艇を配置しているだけなどということが多い。つまり陣形の基本は宇宙でも平面。


 だが、天童愛がいま目の前にした陣形は、

 ――完璧な立体陣形。

 

 天童愛は、

 ――美しい。

 すら感じてしまい。同時に、


 ――敵は手強い。

 と、強く確信した。


「ですが、隊形を維持した移動は面積が少ない方が優れます。これは基本ですね」

 と、黙考していた天童愛が口を開いた。


 つまり、

 ――新陣形といっても、目の前のものは隊形を維持した前進に向かない。

 と、天童愛は初見で看破かんぱしたのだ。

 

 地上でも巨大会戦となれば戦線は何キロにも及ぶ。右・中央・左の間には山あり谷ありだ。地形の拘束を受ける上、右が進むように、中央と左は進めない。右翼が進む地形と、中央と左翼の地形は違うのだ。


 これは宇宙でも同様だ。宇宙空間は無限だが、何もないというわけではない。宇宙は艦艇の進行を阻害するデブリにあふれる。宇宙で横一列を維持して進むのも難儀なんぎなのに、それが立体的となれば苦労は単純に倍だ。



「新型陣形ですか。ま、考えましたわね。ですが攻勢は苦手と見ました。守って得るのですか。敵のほうが数は少ないのです。揉み潰します。」

 

 天童愛のこの言葉の下、中央戦闘群の大攻勢が開始されていた。


 それから3時間が過ぎようとしたころ、天童愛は座乗するヤマトオグナのブリッジでかんばしくない表情で戦況を見守っていた。

 

 いまの天童愛には予備1個艦隊を補強されたのに、

 ――上手く使えなかった。

 という苦味がある。


 予備の1個艦隊の早々の中央への投入。


 天童愛は兄から、

「勝負を決めろ」

 といわれたと感じ、心は勇躍し奮い立った。


 嬉々とした天童愛は口から冷気を吐き、手ではブリザードを操るよう。開戦1時間半で、三面三角錐陣形の先端部分を突き崩し、敵の陣形は崩壊。


 それは天童愛が、

「勝ちました!」

 と、確信した心中で瞬間だった。だが、その後も戦闘は続いていた。



 さらに状況が悪いことに先程、

「愛様、右翼が撃破されたそうです」

 という常守からの耳打ち。


 自軍の右翼が撃破されたという情報。

 ――本来ならもうとっくに勝っていてしかるべきですのに。

 という焦りが天童愛を支配。冷気を放ち苛立いらだっていた。

 

 その苛立いらだちが、


「敵は粘りすぎです。理由がわからない。なぜ降伏しないのです」

 という言葉となって天童愛から吐かれた。


 副官の常守つねもりが応じる。


 常守は真っ白な髪と髭の老人、対して天童愛は若い。2人は孫ほども離れている。

 この天童正宗が激情家の面のある妹へ付けた沈着ちんちゃくで優秀なこの男が、


「愛様、敵はおそらく我々が中央を突破してくると予想しており、対応策を練っていたのでしょう」

 と、冷静につげた。


「根拠がわかりません。理由は?」

 そう鋭く問う天童愛に、

 

「それは」

 と、常守がいいよどむ。


 理由がわかれば勝ちを確信してから1時間以上粘られるなどという事態にはなっていない。

 

 いいよどむ常守を見て天童愛のこめかみに苛立ちが走った。

 立派な風貌の老人が、すごすごとする姿は情けない。

 

 ――もう!常守は何がいいたいんですか!わかりません!

 天童愛は、はっきりいえばいいのに。と、カッとなったのだ。

 

 老常守は、いつもそうです。わたくしに気を使って言葉を選ぶ。これはわたくしに自ら答えを見つけるようにという手合いの気づかいでしょうか。常守老つねもりじい毎回そうです。


 愛らしくかしこい愛お嬢様へ気を使い常に婉曲えんきょく老常守ろうつねもり。天童愛は、常守が伝えたいことをとを理解するのに一手間かかる。


 ――こんなときまで回りくどい言い方はやめてくださいません?

 と、天童愛は苛立いらだち、さらに、


 ――まだ子こども扱いなんですか!

 と、憤慨ふんがい


 そうですか。常守老つねもりじいなかでは、まだ私は手足の短いお人形さんのような孫娘ですか。ここは戦場なんですよ。いい加減にしてください。とすら天童愛は思う。


「開戦前から我々が中央を重視するなど予想できるはずがありません」

 

 天童愛は苛立ちを、そのまま言葉へのせて外に出した。

 

「しかしこの粘りは、第四星間戦争開戦の計画段階から、我らが中央押しをすると予測していたとしか思えませんが」


「私たちは、敵に見事に誘導されたというわけですか」


 常守が、この天道愛の言葉に強くうなづいた。

 

 対して感情を声にのせることで天童愛は、高ぶった気持ちが収まっていた。


 老常守は、天童兄妹の守役として幼いころから付けられており、特に天童愛の感情を制御するのが上手い。


「思えば、重鼎じゅうていもそうでした。敵は我々の動きを的確に捉えている。情報が漏洩ろうえいしているというより、打つ手を読まれているという早さですね」


「それです。グランダ軍の対応があまりに早く、迷いもない。確信を以って手を打たれております」

 

 冷静さを取り戻したかに見える天童愛が黙考もっこう

 

 ――勝つには?

 と心の中で自分に問いかける。


 その答は単純だった。下軍司令李紫龍のいる扶桑ふそうを撃破すればいい。これはわかりきったことだったが、肝心の扶桑を撃破しようと何度も試みたが上手く行かなかった。


「扶桑さえ撃破すれば、勝ちです」


「上手くかわされております。扶桑に通じる進路を開けたかと思ったら埋められる。敵は何を捨てて何を守らなければならないかよく分かっています」


「常守、敵は私たち何をしてくるか予め分かっていて準備しているといいましたね」


「はい、故にこの粘りだと思っております」


 この常守の答に、天童愛の表情がゆがみその目容もくよう冷酷れいこくな色がでた。

 

「なるほど、敵には方策がある。それを聞き出せれば撃滅できますね」


 天童愛の冷たい思考の結果の言葉。


「それはそうですが」


捕虜ほりょがいましたね」


「何をなさる気ですか」


「喋らせます」

 

 途端に真っ青になる常守。


拷問ごうもんは不味いですぞ。だめです。条約に違反します」

 

 青くなって思いとどまるよういさめる常守の顔は真っ青で脂汗が浮かんでいる。そして形相ぎょうそうは必死だ。


「勝ってこその条約です。条約を守って負けて何が戦争ですか!」


「なりません!そもそも星間連合では条約以前に拷問を禁止しております。たとい勝とうが後に必ず問題にされます。正宗様でもかばいきれませんぞ。これまでどおり粘り強くお攻めになって下さい」


 かたくなに反対する常守に、

 ――悠長な!

 天童愛の表情に怒気が浮かぶ。


 状況は、そんなことをいっている余裕はない。右翼が負けたのだ。一刻を争う。

 

 天童愛は焦燥が怒りとなり、その怒りが、


「右翼が抜かれました。お兄様が危ないのです!」

 という怒声となって外へでていた。


 常守はそんな天童愛にさらに反対を口にするが、愛はそれを黙殺、自身の目の前のモニターに捕虜のリストを表示、目星をつけた年配の男を尋問室へ移動させるように指示。


 脂汗さえ浮かべる常守の顔が苦悶にゆがんでから、フッと息を吐いた。あきらめ同時に覚悟を決めたのだ。


 情報を聞き出すとなれば、相手は士官以上、下手をすると将官クラスへの拷問となる。問題にならないわけがない。

 

 常守からすれば、愛お嬢様に手を汚させるわけには行かなかった。拷問を指示しても、おそらく艦内の誰もが拒否するだろう。誰もやらなければ、天童愛本人が捕虜を傷めつけるのはわかりきったことだった。それだけは避けるべきだ。


「愛様、私は対テロ特殊部隊におりました。だいぶ昔ですが、それだけに情報を聞き出すのは得てとしております」

 

 諦めた常守は一転。捕虜の尋問じんもんを買って出た。


 これなら拷問進言して、無理やり実行したのは自分だと言いつくろえなくもない。常守は苦しい判断をしたのだった。

 

 天童愛が、この常守の提案にうなづくと、常守は続ける。


「尋問室へ入るのは、私と愛様だけにして頂きたい」

 

 天童愛もこの提案も受け入れた。

 常守が愛を先導するように、尋問室へ向かって歩き出したのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 第二艦隊旗艦ヤマトオグナの尋問室で、天童愛と常守の2人はグランダ軍の捕虜を目の前にしていた。

 後ろ手に引きずり出されたのは初老の男で、髭にも白いものが混じっている。


 そして天童愛が足元に、ひざまずく捕虜の初老の男を冷たい目で見下していた。


 呆れた。随分年配ですこと。わたくしの父親より上の年齢でしょうねこれは。こんな廃兵院はいへいいんが、お似合いの老人を第一線でつかうとはグランダも知れています。


 が、そのグランダ軍を殺しきれないのが天童愛の中央戦闘群でもある。

 押しに押しまくってもう死んでいるような相手が、あとひと押しを何度繰り返しても死なない。天童愛の率いる4個軍は、徐々に消耗して勢いが削がれた。


 ――捕虜を拷問してでも、敵が降伏しない絡繰りを聞きだします。

 と、激情にかられてここまできた天童愛だったが、老兵を前に躊躇ちゅうちょした。同時に躊躇した自分にも驚いた。


 天童愛は、

 ――今更ためらうだなんて。わたくししっかりなさい。

 と、自身を鼓舞するも老兵を傲然と見下ろすのが精一杯。


 さらに天童愛は、

 ――お兄様のためなら何だってできます!

 と、思うも引きずり出させた捕虜を前にできたことは、唇をみ手を握りしめるだけ。体はあいかわらずこわばって動かない。


 天童愛のこの様子を後ろから眺めていたのは常守。

 

 ――無理でしょうな。

 と、常守が冷徹に思った。


 人間は追い込まれればなんだってできる。だが、同時に痛めつける相手を目の前にすれば、いすくむ人間は少なくない。

 そう情報を聞き出すといっても訓練は必要だ。拷問にもマニュアルはある。


 艦隊司令は軍のあらゆる事柄に精通するといっても天童愛は、尋問の高度に専門的な教育は受けてはいない。

 高度に専門的とは拷問も含む。ということが言外に含まれる。


 常守から見れば素人丸出しの天童愛。可愛らしい愛お嬢様は、捕虜を目の前に悄然しょうぜん。顔が青い。だが常守は、

 ――これでよかった。

 と思う。長年天童兄妹を見守ってきた常守にとって、天童愛はいまでも愛くるしい幼女。それが拷問など悪夢にひとしい。

 

 常守が一歩踏み出した。

 私がやりましょうという意味だ。


 天童愛がサッと常守へゆずった。その表情は冷々として心中は読めない。


 常守が進み出たと同時に、

 ――ガツン!

 と、老兵の顔面を蹴り上げた。


 天童愛は驚きで目を見開き口は一文字。

 いま天童愛の目の前で、まるでボールのよう浮きが上がった老兵が半回転。

 

 ――ドッシャ!

 と頭から床に落ちていた。


 拷問を躊躇した天童愛は、

 ――どうやって喋らせるのか?

 と常守を眺めていたのだ。


 そう天童愛は拷問といっても、ケリを入れればいいのか、髪の毛をつかめばいいのか、それとも、もっと過激に目をペンで突けばいいのか。天童愛が「拷問」で連想したのはその程度のこと。水攻めなどは大掛かりすぎて、すぐにはできない。それに手っ取り早く喋らせるには、殴る蹴るていどの発想だった。


 常守が床に伏せる老兵に素早くちかより老兵の手首を取った。老兵の手は、常守にガッチリと握られている。

 いま天童愛から老兵の力なく中途半端に開かれた五指がよく見える。その一本を常守が無造作に握った。


 握ったとともに、

 ――ヴーッ!

 という叫びにならない音が老兵からでていた。

 

 中指の骨を砕かれたのだ。


 苦悶くもんの叫びの直後に老兵からでたのは、


「小娘が!」

 と、叫び。老兵は叫ぶと同時に天童愛をにらみつけた。


 老兵からすれば年齢は常守が上だが、どうみても偉いのは将官の軍服を着た小娘のほうだ。自分に対するこの処遇の発端を見抜くのはたやすい。

 

 天童愛が目に冷気を宿して見下すと、老兵が、


「わしの軍歴は紫明しめい将軍の薫陶くんとうから始まる。そして今、その孫に使えている。誰が喋ろうか」


 痛みで汗を浮かべながらも大声で叫んだ。

 老兵は突然の暴力に、自分が拷問され何かを喋らされようとしていると、理解することもたやすい。


 常守が静かに、

 

「李紫龍の下軍は、なぜ降伏しない。喋れば戦後の身の安泰を保証する」

 そう問いかけ、今度は老兵のくすり指が砕かれた。叫び声が部屋に響く。

 

 荒い呼吸の老兵。吐きながら傷めつけてくる常守でなく、やはり天童愛を睨みつけ、


「さては小娘、紫龍将軍の采配に打つ手がなくなったな。今、わしを痛めつけているのが何よりの左証だ!」

 と、声を絞り出した。さらに痛みに耐えつつ続ける。


「良いだろ拷問しろ。拷問など恐れるところではない。わしが死ぬ頃にはお前らは負けている。もうすでに遅いのだ」

 

 天童愛が気圧され、常守が冷静に老人を眺めている。


「李紫明将軍の名誉回復のため我らが何十年恥辱に耐えてきたと思っている。今、数時間耐えるだけなど瞬きするようなもの。そして死は一瞬だ。わしは今お前らの蛮行で勝ちを知った。もう悔いはない!」


 瞬間、常守が男を力の限り殴打。老兵がもんどりうって昏倒こんとう。常守は、すぐさま続けて猿ぐつわをかませる。


 常守は老兵の言葉に、舌を噛み切って自殺すると直感したのだ。その前に止めた。拷問に応じない最も手っ取り早く確実な方法は死ぬことだった。


 ――目の前の敵に何も策などない。

 天童愛も老兵の態度を見て悟らずにはおれない。敵は、ただ驚異的に粘り強いだけだ。

 

 天童愛は事後処理をする常守へ、

 

「ブリッジへ戻ります。時間の無駄でしたね。もう時間がりません。先に戻りますよ」

 とだけいい尋問室を立ち去った。


「もう敵陣にヤマトオグナを突入させ、扶桑に肉薄にくはくし直接撃沈するしかありませんわね」

 

 ブリッジへ戻る天童愛が独りそういいけわしい表情になったのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「今からヤマトオグナは、敵扶桑まで最短のBルートを直進。ヤマトオグナと麾下の護衛艦は敵残存艦隊へ突入します!」

 

 天童愛がヤマトオグナのブリッジ戻るなり、げきを飛ばすように宣言していた。


 ブリッジ内に緊張が走る。指示されたルートは、敵艦の火線が交差しており十字砲火受ける。被弾の可能性は極めて高く、被弾すれば当然撃沈しかねない。

 

 しかしブリッジの乗員たちには、そんなことより天童愛の語気に込められた冷えきった怒りの方が恐ろしかった。


 天童愛の怒りとともに体貌から発せられるのは冷気。ブリッジはたちまち空気が凍るほどに緊張し静寂が支配。


 攻勢作戦最強と噂される天童愛が、冷気を帯びた闘志とうしを体貌にみなぎらせたせいで、ブリッジどころか艦全体が天童愛の存在で満ち、冷え上がった。

 

「右へ四十度回頭。回頭後一杯で前進」

 

 この指示を受けた操舵手が、確認するように天童愛を見る。指示通り操舵すると進路上の敵艦に衝突しかねない。


 天童愛が復唱しない操舵手を、冷気を帯びた瞳で見て、


「聞こえませんでした?」

 と、冷えた一言。

 

 その言い様は、進路上の小型艦艇などには、ぶち当ててやればいいのですよ。といったぐあいだ。見られた操舵手は心底冷え上がり指示を復唱。


 熱い冷気という矛盾したものを天童愛はその身から発して、部下たちに有無を言わせない存在感を発揮していた。

 その口から出る言葉は、一々部下たちの心を氷結させ、ただ諾々と指示に従わせた。


 副官の常守がブリッジに戻ってきたのはそんなおり。

 

 常守がブリッジに入るなり苦笑した。艦内に寒冷前線が移動してきたような雰囲気が漂ってきたと思ったら原因はブリッジにあったのだ。

 

 尋問室から戻る常守とすれ違う乗員たちは、緊張で汗をかきながらも震え上がっていた。


 常守は、天童愛の横に立ち、


「愛様、敵でなくてクルーたちを震え上がらせてどうするのですか。皆凍え死にそうなですぞ」

 と、笑語しょうごした。


「あら、緊張感があっていいじゃないかしら。それに今から敵陣へ突入するのですよ。ヤマトオグナは重力砲を一身に受けて熱くなります。冷えているぐらいがちょうどいいと思います」

 

 天童愛が悪びれずにいうと、常守が苦い顔になる。


氷結女ひょうけつおんなって、あの口さがないランス・ノールから言われたのを思い出しました」


「ま、愛様がお怒りになると、皆(きも)が冷えますからな。冷や汗で顔と背中、それに腋間えきかんも寒々します」

 

 この常守の言葉に、天童愛が微笑して鼻を鳴らした。

 

 操舵手から、

回頭かいとーう終わり!前進ぜんしーんを開始!」

 と声が上がる。

 

 どこか間延びしているが、聞き間違えをなくすため独特のアクセントを付けているのだ。


 天童愛が砲術長へ指示を飛ばす。


「砲戦準備、艦首かんしゅ一番砲塔を敵旗艦扶桑へ、二番砲塔以下三基は進路上の異物を排除」


 砲術長が指示を復唱して、パネルでターゲットを指定し各砲塔へ指示をつたえる。

 直後にヤマトオグナが前進を開始。


 各砲塔内では砲塔長の指示が飛び兵員たちが慌ただしく動く、ブリッジの砲術指揮所では移動しながら射撃するための座標計算を開始。


 もうヤマトオグナは砲術指揮所だけでなく、ブリッジ全体、いや艦完全体が慌ただしい。

 

 天童愛は、


「人にやらせず自分でやればいい。簡単な話です。誰を怒らせたかわからせてやります」

 と、その瞳に冷気をやどしながら誰へとなく言葉を口にしたのだった。

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