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恋する氷華の星間戦争  作者: 遊観吟詠
破章十二、星間会戦編
107/126

13-(6) 二つ名(鉄腕レティ)

 グランダ軍左翼のアキノックの2個艦隊が星間連合軍旗艦アマテラスへ迫るなか、大和やまとと第一戦隊に配備された全戦術機が発艦はっかん

 

 旗艦大和の船腹直下せんぷくちょっかで編隊を組む。総勢146機。


 会戦に決定打を与えるために温存されていた艦載機の群れ。

 ――虎旗隊こきたい

 

 それがいま編隊を組み星間連合の旗艦アマテラスへ向かおうとしていた。準備は整ったのだ。


 天儀てんぎ彩雲改さいうんかいで編隊の中にいる。

 

 彩雲改の形状は、人型の二足機にそくきというよりジェット機のようなシルエットに近い。その機体には緑地の上に三匹の虎が描かれている。

 

 天儀がその彩雲改から146機へ通信を開き、


「長く待たせたなグランダ最精鋭戦術機隊の諸君。君たちが星間100年の戦争を終わらす。存分に暴れまわれ」

 と強くいい、さらに、


「ここに虎旗作戦こきさくせんの発動を宣言する。虎旗隊発進。進路上のもの一切を排除しろ」

 そう付け加えた。


 レティは天儀の言葉にしんから燃え上がり全身が嬉々とした。

 

 近衛隊このえたいを率いる身とは思いつつもレティは、

 ――死んだってかまわない。

 と気持ちが高揚こうようするのを自覚。


 レティはこれまでの上官からはいつも、

「やり過ぎるな」

 といわれてきた。

 

 子どもの頃からそうだ。加減を知らないむちゃな子ども。他の隊のエース達も似たり寄ったりなことをいわれてきたろう。だが、天儀は好きなだけやっていいという。


「思う存分、全力でいいのね。本当にやるわよ。私、知らないから」

 レティはそうひとりごち


 ――なら防人隊には負けないわ。

 と、強く思った。


 好きなだけやっていい。自分でもどうなるかわからない。いまレティは思考が透き通り気分が異常に良い。

 

 ――いまなら戦艦だって撃沈できるわよ。

 そう本気で思った。


 防人隊が先行し、レティの近衛隊がその後ろ、さらに天儀の彩雲改を囲むように、直掩ちょくえん15機が囲む。

 大和の船腹直下から146機の虎旗隊が飛び立ち砲火のうずの中へ入っていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 146機の虎旗隊が東宮寺朱雀とうぐうじすざくのアマテラスへ向けて直進していた。

 

 星間連合軍左翼、東宮寺朱雀率いる第二艦隊にこれを防ぐ余力はない。すでに虎の子の凶星部隊200機が撃破され、有力な艦載機隊は出払っている。

 、

「新手の艦載機隊です!」

 という報告をスサノオのブリッジでうける朱雀。

 

 朱雀が、


「数は!」

 そう叫ぶと返ってきたのは、

 

「140規模」

 という信じがたい数字。

 

 朱雀は、まだ温存していたのか。あり得ない。こちらは凶星を出したのだぞ、敵も相応に消耗したはずだ。と思うも、現実は目の前にあるのは新手の艦載機群。それも100機以上。


雷撃らいげき部隊も確認。総旗艦アマテラスへ向かっている模様です。おそらくアマテラス攻撃の特設部隊です」


「周辺の二足機を全部投入しろ!直掩機ちょくえんきもだ!」

 と、朱雀は指示を出しつつも


 ――足りない!

 という悲痛で胸間が満たされる。その横で幕僚の1人が、


「足りません!抜けられたら、負けです。何かで止めないと!」

 と、叫んだ。


 いわれるまでもない。と思う朱雀。


 だが全機をかき集めても即座に集まれるのは50機にも満たない。それにバラバラと当てたところで各個撃破されるだけ。他に動かせるものはないのか。と、朱雀が思った瞬間に、モニターの味方艦艇が目に入った。


 ――くそっ!わかった!


「艦艇を盾にして新手の艦載機群の進路を遮る!敵の予想進路上に艦艇でウォール()を作る!いや、新手の艦載機群(やつら)に艦をぶつけてやれ!」


 朱雀の付近の小回りがきく艦艇で壁を作るという判断。どれほどの効果があるかは不明だが、やらないよりはマシだった。

 朱雀の指示に、幕僚たちが一斉に虎旗隊の予想進路上の艦艇へ指示を開始していた。


 一方、虎旗隊。その行く手に星間連合軍の二足機隊18機が前方に立ちふさがるように登場。

 

 補給のため母艦ぼかんへ帰投する折にたまたま通りかかっただけだったが、これに先行する疾風の防人隊20機が襲いかかったのだった。


 レティは、その様子を編隊の中から眺めていた。

 不運な18機が、防人隊に瞬く間に駆逐されていく。


「訓練の時より動きが良いわね」

 レティは、そうくちにしてから近衛隊このえたい全機へ通信を開いた。

 

「レティ機より各機へ」

 そう前置きしてからつづけて


「防人隊が、露払いしてくれているわ。近衛隊は、残存する敵の小型艦艇、中規模戦術機隊以上の排除が仕事よ。我慢して観戦してなさい」

 というと、中隊長機の1機から、


『いやー高待遇ですな。グランダ最強の戦術機隊が露払つゆばらいとは』

 そう挑発するような軽口が返ってきた。


 これはもちろんレティの気質と、防人隊へのライバル心を知っての言葉。

 だが、レティは冷静。


「そうね。でも虎旗隊の主力は、あくまで隊の過半数を占める近衛隊よ」


 この言葉に近衛隊員たちは、自分たちの隊長がいつも通りだなということを知る。

 

 人間社会において、個は常に周囲からの値踏みにさらされる。それは立場が上の者が下の者をためすだけでなく、下の者が上を試すことも多い。

 近衛隊員たちにとって、レティはこの手の突き上げを上手く操作する良い上官だった。

 

 レティが、


「戦場で欲張れば、それはすなわち死。けれど私は宇宙最強二足機隊が望みなの。グランダ最強なんてものには興味はないわ」

 そういうと続けて力強く、


「最強無比の二足機隊は!」

 と、えると、


近衛士魂隊このえしこんたいです!』


 間髪なく、麾下の全機から返ってきた。


 レティは、この隊員たちの返答に、


「ただ最強を証明する!行くわよ!」

 といって通信を切った。


 状況は敵機18機を排除した防人隊が編隊に復帰し再び先行。

 虎旗隊は、再び全機揃っての直進を開始。

 

 そんなさなかレティは、先程聞かされた

『近衛士魂』

 というワードから開戦前の天儀とのやり取りを思いだしていた。


 天儀は、レティと近衛隊の真価を知っているのか、命をかけて仕えるにたる上官なのか。そうレティも自分が部下たちから試されるように、レティも天儀を事ある毎に様々な変化球で試していたのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ときは開戦前、まだ天儀が正式には陸奥艦長第二戦隊司令だった時期。場所は、天京てんけいのレティの隊がホームとする戦術機基地。

 

 そこを天儀が秘書官の千宮氷華せんぐうひょうかと、酒匂さかわ艦長の安心院蕎花あじむきょうかを引き連れ訪問。

 この日、基地では戦術機隊の運用勉強会がおこなわれており、天京にいる戦術機関係者が集まっていた。


 天儀たち3人もこの勉強会に参加するために基地を訪れていた。さらに酒匂には、戦力上の調整のため近衛隊の一部を艦載するので、蕎花にはその調整もある。

 

 レティは現れた3人に自ら基地内を案内。

 レティに引率される形で4人は、格納庫へ。

 格納庫内には、近衛隊の主力機ハリケーンヘルと呼ばれる二足強襲機が並んでいた。広い格納庫に、100機近いハリケーンヘルが並んでいる。圧巻といっていい。

 

 一行が倉庫内を眺めるなか、天儀が視線の先にとらえたものを指差しながら


「あれがレティ機か。綺麗な青だな」

 そういってレティを見た。


「はい。特別金の縁取りをしています。わかりやすいですね」

 

 はにかむように応じるレティ。

 

 それを目にした氷華は、

 ――チョロインさんはこれだから。

 と、面白くないものを感じた。


 なお天儀は青といったが、正確には近衛隊のハリケーンヘルは、水色に近い薄い青色で塗られている。その中でも1機だけ、金色で縁取りするように機体のディテールが塗装されていた。それがレティ機だ。

 

 氷華が憮然とするなか、天儀とレティは二足機についてのやり取りを2、3交わし、その話題が続いた。


 二足機は専門外の氷華と蕎花は、2人の口にする話題についていけずに手持ち無沙汰。

 しかも天儀が、質問するとレティは子犬がしっぽをふるように喜々として答えるので、2人は話題輪から排除されるような形になっている。


 間を持て余し気味の蕎花が、自分と同じように放置されている氷華へ目を向け、

 ――随分ずいぶんと暇じゃ。いまのうちにこの御仁ごじんに質問を。

 と、思った。


 蕎花は、いまのうちに電子科出身の氷華へ二足機に搭載とうさいされている電子兵装についての質問を終わらせておこうと思ったのだ。

 

 だが蕎花は声をかけようと、氷華の顔を見てぎょっとした。


 ――これは、これは。無表情な女じゃが、いまは明らかに不機嫌じゃな。何故じゃ。

 と、内心独りごち、氷華の視線の先を追う。


 氷華のジト目の先にはレティがいた。


 レティは、氷華に見られていることなど気づくふうもなく天儀と楽しげに喋っている。


 ――ああ、得心とくしんじゃ

 と、思い、あらためて氷華へ目をやった。


 氷華も蕎花から見られていることに全く気づかない。


 ――ダメじゃなこれは……。

 蕎花が、ため息をつき氷華へ質問をするのをあきらめた。


 氷華は、天儀とレティの様子をいつものジト目で眺めていたがついに、


「私には、全部同じ二足機に見えますが」

 と、強引に割って入っていた。

 

 これに蕎花が乗った。蕎花もあまりに暇すぎる。


「それじゃ。強襲機とはどういうことなのじゃ。他にも駆逐機とか戦闘機とか、全部同じではないのか」


 2人の突然の乱入に、レティが少し驚いた表情になるが、特に気分を害した感じもなく、


「広く言えば全部同じよ。今の戦術二足機は、総じてマルチロール機。よほどの特殊機でもないかぎり施設攻撃から対艦攻撃、もちろん二足機戦もこなせるわ」

 そう応じ、レティは専門の二足機の話題で饒舌じょうぜつ

 

「でも今でも二足機は設計する段階で主眼となる目的を設定するのが普通ね。設計もやりやすいしね。作る二足機に第一に何をさせたいか。これよ」


 このレティの熱心な言葉を聞いているのは、蕎花のみ。レティの饒舌の発端となったとうの氷華は天儀へ何か話しかけている。

 そんななかレティの二足機解説は続く。


「近衛隊のハリケーンヘルは、施設や陣地、敵艦艇への強襲を第一に念頭に置いて設計されたので強襲機と呼ばれているわけ」


「施設強襲のう。じゃあ駆逐機は何なのじゃ」


「あれはかなり特殊ね。二足機を狩るために作られた機体ですもの」


「それがわからんの。戦闘機と何が違う。戦闘二足機も敵の二足機から直掩ちょくえんを行う二足機戦を念頭に置いた機体。つまり駆逐機と戦闘機と違いがわからん」


「そうね。でも違うわ。駆逐機は、その戦闘機を狩る目的のために作られたと言ったらいいのかしら。とにかくあれは特殊な機体よ」


「その割には駆逐機防人での長距離施設強襲の作戦が、参謀部で上がっておったが」


「だから言ったでしょ。今の戦術二足機は、基本的にマルチロール機だって。何もできるのよ。ハリケーンヘルも強襲機だけれど、二足機戦が得意よ。特に集団戦がね。施設強襲の連携機能を転用した、設計段階では想定になかった思わぬ特色だったってわけ」


 レティは、そういうと、


「向き、不向きはあれどね」

 と付け加えた。


「何でも出来るという売り文句の割に、得意不得意があるというところが、使う側の我々としては不便じゃ」

 

 蕎花が勝手な感想を述べると、レティも、


「ま、あらゆる戦術単位を消滅させるために作られたのが防人ね。いけ好かないやつよ」

 と、自身の感想を口にした。


 いけ好かないやつ。防人隊の隊長草刈疾風は、飄々(ひょうしょう)としてたところはあるが、人当たりのいい好青年。だが逆にレティにとってはそれがしゃくさわった。


 レティは面白くないことを思い出し嘆息するが、その瞬間、はっと気づいたように天儀へ顔を向けた。


 レティの性質は唯我独尊ゆいがどくそん。天儀の横にいる目付きの悪い小さい女、氷華など眼中にない。

 

 天儀がレティの視線に気づいた。


「レティどうした」


「あの天儀司令。差し出がましいとはわかっているのですが、お願いが……」


 レティは、そう顔を赤らめながらいうと、続けて自身の願いを口にしたのだった。


 近衛隊長レティーツィア・ベッカートは、天儀へ自身が率いる隊の二つ名をせがんでいた。

 軍隊では、戦功を上げたり中核となる隊などには、司令官から隊へ渾名あだなが付けられたりする風習がある。


 レティの願いとしては、自分の隊はグランダ最強、いや宇宙最強を自負しているので、

 ――かっこいい渾名あだなが欲しい。

 それも直接天儀司令官に付けてもらいたい。

 

 横で聞いていた氷華は、

 ――実にチョロインさんらしい発想です。

 とあきれ、蕎花も、


 ――実にベッカートらしい発想じゃ。清々しいお間抜けさよの。

 と、やはりあきれた。


 普通、

「渾名をくれ」

 など自らは申し出ないし、仮に申し出ることがあっても、なにもないのに、こんなおねだりはしない。

 

 戦功を立てるとう必要は必ずしもないが、とにかく何かきっかけが必要だ。レティの思いついたようにねだるさまは、愚かしくも逆に純真ささえ感じさせる。


 ――というより。

 と、氷華と蕎花が同時に思う。


 レティの隊には、『近衛隊』とか『近衛連隊』とか立派なのがある。何故わざわざ、別のを欲しがるのか、そう2人は思い。レティのとんでもない特大級の甘えたわがままに、やはりあきれるしかない。


 蕎花が目にするレティの全身からは、

 ――天儀司令はいい人よ。

 というオーラがキラキラと放たれている。


 まあ、この無類の二足機バカと名高い女子おなごと馬が合う上官など今まで存在しなかったろうて、初めて心を許せる上官に喜び絶頂といったところかの。まあ、納得じゃな。とも蕎花は思った。


 レティの顔には、そう私と天儀司令とは極めて昵懇じっこんだから、意を決して思いを口にしてみたの。きっと良いのをくださるわ。そんなことが書かれている気すらする。


 天儀が、レティのおねだりに、

「そうだな」

 といって考え始めていた。


 つまり、厚かましいおねだりはあっさり成功。

 対してレティの反応はわかりやすい。ねだってみて正解だったと嬉々としている。


「レティの隊番号は十一だったな」


「はい中途半端な数字ですが」


「いや特別いいのがある。」


 これに本当ですかと、すでにレティの顔に喜びの色が浮かんだ。

 天儀は空中に指を走らせる。

 

「十と一を一つに組あわせるとだ。『士』となるわけで、『士魂隊しこんたい』というのはどうだ?」


 レティが考えこむように黙る。


 このやり取りを後ろで見ていた氷華は、

 ――それはかっこいいのか良く分からないですが。もう少しマシなのを……。

 と思い。蕎花に至っては、

 

 ――微妙じゃな。じゃが微妙に残念なベッカートには似合にあいか。

 と思い、それが顔に出ている。


 が、当事者のレティは目には感激の光を、ほほには紅潮こうちょうで弾けんばかり、


騎士の魂(ナイトスピリッツ)の部隊という意味ですね」

 そいうと、士魂隊出るぞ、士魂隊かかれ、など一人でブツブツと言い出した。どうやらとても満足したようだ。


 ――マジですかこの女。せません。

 ――まったくわからん趣味じゃ。本気で喜んでおる。

 そう氷華と蕎花は、呆れて眺めたのだった。


 翌日にはレティの部隊の全機体には二ヶ所に

『士魂』

 の文字がペイントされていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 レティが、そんなことを思い出すなか虎旗隊こきたいは、朱雀が必死で構築した艦艇の壁(アイアンウォール)をあっさり迂回うかい

 

 さいど直進を開始してからしばらくして、虎旗隊の前に星間連合軍の二足機集団が出現。


 朱雀が即席で作った艦艇の壁は、時間稼ぎにはなっていた。

 虎旗隊が迂回する間に、朱雀は二足機の集結に成功したのだ。

 

 だが、この星間連合軍艦載機集団も、そして東宮寺朱雀も不運だった。残存機を集めて、反攻を企図きとしところで偶然に鉢合はちあわせたのだ。


 出現した敵艦載機集団へ、今度は防人隊ではなく、レティ率いる近衛士魂隊が突入をしかける。


 先鋒の防人隊が、突入のタイミングを過ぎても動かなかったのだ。

 

 レティは、

 ――なるほどね。私たちにゆずるってわけね。まったくいけ好かない男ね。

 と、思い。近衛士魂隊は独自の判断で突入した。


 この意図せず発生した艦載機決戦で、天儀の中軍へ辛くも対応していた朱雀の第二艦隊の運命が決定する。


 星間会戦で最も激しい二足機闘と、記録されることになる二度目の大規模戦術機戦が開始された瞬間だった。


 レティーツィア・ベッカートは、この戦いで左腕を欠損けっそんする。


 遺伝子治療による上腕再生か、腕部擬体化で、彼女は軍務復帰が早い擬体化を選択した。

 擬体化手術後、見舞いに訪れた天儀へ


「腕を失いました……」

 とめずらしく消沈し憂鬱ゆううつなレティに、天儀がいった。


「機械の体を手に入れたなレティ」

 

 天儀の声は明るい。レティが顔を上げると、天儀の笑顔があった。


「鉄腕レティか、実にかっこいいじゃないか。また一つ伝説になってしまったか」


 レティの表情がぱっと明るくなり、ほほが紅潮こうちょう

 

 レティの頭のなかで、 


 ――鉄腕レティ。

 

 という天儀の声が反響したあと、レティがハッとした。

  

工廠こうしょうの技師に頼まなければ。なにか腕に仕込めるはずです!」


 そんな様子を眺める天儀が笑いながら聞く。


「十徳ナイフでも仕込む気か」


「いえ、出来れば消音拳銃を!」


 レティはとんでもない要望を口にして、今から技師に交渉してきますと去っていった。

 天儀は、そんなレティの後ろ姿を、


「それは難しいだろ。というか何に使う気だ」

 と笑って見送った。


 なくなった腕はもう元に戻らないが、レティは新しい相棒と上手くやっていけそうだなと天儀はレティの後ろ姿を見送ったのだった。

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