四季折々の詩(うた)
とろり とろり
とろとろ ぴたん
氷の柱は溶け落ちて
黒く湿った土を打つ
とろり とろり
ゆっくり 大地に染みた雪解け水は
春を告げるレンゲを育てる
レンゲはうるうる光る蜜をため、
蜂はレンゲの蜜を巣に集める
景色すら溶かす夏の日差しに
かわいい幼子を団扇であおげば
ちりん ちりんと 風鈴が鳴る
幼子がそれに手を伸ばすと
笑うようにちりちりちりりと鳴り響く
焼き芋をはじめて頬張った幼子がへらりと笑う
その笑顔を照らした秋の夕日が揺れていた
はじめて触れた雪で紅葉のように赤くなった小さな手
よちよち歩きで霜柱を踏み 霜焼けで小豆のようになった足の指
身を寄せ 湯たんぽを引き寄せて
手足をさすり 包み込み
この子はどんな夢を見ているだろう?
思いを馳せる母も
とろりとろりとまどろんで
暖を求めた三毛猫は縁側でまるくなり
気の早い庭の梅の木は
目覚めはまだかと朱を帯びる
穏やかな早春のひだまりは
とろり とろり
とろとろ とろり