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頑張る俺と妙な誤解

その日俺は、早速封筒を買って帰った。


恐らく、毎月この程度使っているだろう、という大体の額を封筒に納める。……足りなくなると嫌なので、少し多めに。いいんだ、最初にいやんなると、続かないからな。大丈夫、慣れたら段々と額を減らしていく予定だ。


で、遊ぶ時は、全てこの封筒から出した。Web決済の場合、その分、封筒から引いた。タッチ&ゴーな電車代も、運賃分だけ封筒から取り出して、出した分は、それ専用に用意した貯金箱に入れてみた。


俺は、頑張った。最初の月は、既に一週過ぎてたにも拘らず、最後はなくなりかかるという事態になったが、何とか乗り切った。


月末に振り返ってみて思ったのは、俺、思ったより無駄に使ってるなってこと。遊ぶ時、飲み代だけが出費のように思ってた俺だったが、定期外に構わず行ってるせいで、思ったより交通費が馬鹿にならない。あと、コンビニで買うちょこっとしたもんが、積もり積もって、結構な値段になってた。ガムなんて、買ってその場で一枚食ったら、まんま忘れたりしてるし。鞄見たら、同じガム、何個も入ってやんの……。


その他、友人達とのノリで特攻かけてるガチャガチャや、時々発作的に課金してるスマホゲームも、一回数百円だからと気にしていなかったが、結構いく。


今まで、クレジットだったり、減っても引き出し出来る状態だったせいで、何とも思っていなかった出費。けど、これをやってから、増えることのない封筒から取り出そうとする度、それって本当に必要か? と考えるようになった。つまりはケチっぽくなったわけだ。


明らかに財布の紐が固くなった俺に、仲間達の不満が噴き出すかと思いきや、そんな事は全然なかった。肩透かしを喰らった俺だったが、よく考えてみると、無駄な買いもんの時なんかは、買いたいやつだけ買って、買うもんないやつは普通にパスしてた。


買いたいやつが買って、他はそれを冷やかすだけ。そういや、ガチャガチャのダブりとか、皆に渡してた。全員がやってたら、皆ダブって貰い手なんているわきゃねーんだ。


俺がいかに、その場のノリだけで、買いまくってたか分かってしまった。


「何だよお前、今頃気付いた訳?」


「俺たち、お前がいつでもバンバン使うから、金持ちだなーって思ってたけど?」


「ついに、お前にも金を貯めたい理由が出来たかって話してたんだぜ」


皆、買いたいやつの邪魔をしないってだけだったらしい。仲間の中でも一際金遣いの荒い俺を、密かに心配していたと聞いて、がっくりきた。言ってくれよぉ。


「で、どうなんだ? 長い長い冬を過ごしたお前にも、とうとう春が訪れたんじゃないかって噂してたんだが?」


「は!?」


何だそれ。


「とぼけんなよ。金貯めたい理由が出来たんだろ? でなきゃ、今まであんだけ使いまくってたお前が、急に出し惜しみし始めるはずがねぇだろ。誰だ? お前の心を射止めた女神は」


肩をうりうりしながら言われて、思い出すのは、歪な笑顔。


「はんっ! んなわけねーだろ、あんな嫌味女!」


俺は、こ憎たらしいあいつを見返して、ぎゃふんといわせてやるために頑張ってるんであって、あんなやつに惚れるなんて、勘違いもいいところだ!


「大体、先輩が忙しいせいで、あいつと数ヶ月、話してないんだ。何かあるわけもねーだろ!」


所詮、先輩と同期というだけの、部署すら違う存在。先輩と話す機会がなくなりゃ、顔を合わすこともない。精々、ちらっと通りすがりを見かける程度だ。


そもそも、あいつとは、初対面から印象最悪だった。先輩に呼ばれて振り向いたあいつは、後ろで座ってる俺を見て、ふんっと見下しやがった。美人は心も綺麗だなんてうそっぱちだ! いけ好かない性格したやつなんだよ、あいつは。


俺とあいつの間には、そういった甘ったるい雰囲気は皆無だと、口を酸っぱくして訴えたにも拘わらず、皆はニヤニヤ笑うばかり。


あー、なんだかむかついてきた。それもこれも、全部あいつのせいだー!!

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