愚かな罪咎に捕らわれた哀れな道化へ救いの手を――
ああ……一刻も早く、獲物がほしい。苦しみにも近い欲求が体をゆっくりと蝕んでいく。自らのしたいことを抑えるということがこんなにも耐え難い事だなんて思いもしなかった。麻痺にも似た疲労感が体に重く伸し掛かる。
このままではいけない。
すでに感覚を忘れた下半身をゆっくりともたげ、近くにある小さな箱へと向かう。
否。それは箱ではない。箱に似ているだけだ。
それを開けると一瞬生臭い冷気が鼻と肌を刺激する。しかし、それは決して不快なものではない。
寧ろ心地よい。
その中にある赤黒い塊を鷲掴み取り出す。更なる悪臭がツンと鼻腔を突き刺した。だが、気にすることはない。これら全てが作品だ。
取り出したその塊を持ってくると板の上にドカッと置く。そして、側にある鋭く光った包丁を手にとった。
そして渾身の力で包丁を振り下ろす。鈍い音と共に塊から滑りのある液体が飛び散った。顔にぴしゃりと掛かる。
全身を痺れるような快感が突き抜ける。
気持ちが良い。
もしこれを本物で実行したらどうなるだろうか。
それを考えるとゾクゾクとした感覚が這いずりまわる。
嗚呼。
切ってみたい。本物の……
そう思いながら肉塊に再度刃を入れた。