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No.3 変わらぬ日々

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第三弾!

今回のお題は「悲恋」「ビッチ」「方言」


9/6 お題を出される

9/8 色々不具合発生

9/9 お題の内容に悩む

9/10 簡単なプロットを立てるも納得がいかない

9/11 焦りながらも書き始める

9/12 滑り込む


今回、お題をあんまり汲めてない orz

 その少女は国語辞書を引いてある単語を調べていた。

「び……び……び……」

 事の始まりはその少女の今憧れている先輩、桐ケ谷先輩の発言が原因である。

『俺、ビッチが好きなんだよね』

 先輩よ、なぜそんな発言をした。

 そんな、周りの想いを他所に少女は国語辞典を引き漁る。

「だぁー! 備中とかしかないべ!」

 そんな叫びを上げる少女の傍で少年が少女に口を挟む。

「はい、見つけたよ。ビッチ、bitchyの検索結果」

 フォーマルなスーツ、されど痛んだスーツぶかぶかのスーツの少年はそういって、少女に英訳辞書の一ページを見せる。少女は国語辞典を投げ出して少年の英訳辞書に飛びついた。



Bitchy 【形容詞】


発音記号/bítʃi/

(bitch・i・er; ‐i・est)

《俗語》 意地悪な.~



「なんだべ? 先輩はこげなのが良いだっちゃか?」

 さてお気づきの方もいらっしゃるだろう。少女の言葉遣いが複数の方言で縫い合わされていることに。他でもなくこれもまた、憧れの人の影響である。

『方言女子ってなんか可愛くねぇ?』

 それを聞いて以来、彼女の発言は複数の方言が入り混じっている。

 少女の発言を少年は無言でながした。

「嫌な女さそこらじゅうに居るっぺ……」

 そして少女は頭を抱えて悶えはじめる。

「あかぁぁぁぁぁん! うち嫌な女にならんと先輩が更に離れてしまうちゃぁ」

 なおも冷静にその場を達観する少年を無視し少女は喋りまくる。少年はそれを無視して室内の珈琲メーカーから珈琲を入れてすする。その間約3分弱。よくしゃべるものである。

「先輩を見かけて早数年にもなるちゅうのに、来る日も来る日も先輩を追いかけて発言を逃さんように傍受しおったのに、まさか先輩は悪女好きやったなんてぇぇぇえ!」

 少女の悲痛な叫びをBGMに少年はため息をついた。そのため息も耳に届かないと言わんばかりに少女はエセ関西弁、エセ津軽弁、エセ博多弁などを経由して……

「とにかく、先輩に振り向いてくれるように、私、ビッチになる!」

 その標準語の発言に少年は珈琲を吹き出した。


 翌日、それは唐突に始まった。部屋に入ってきた少年――今日はブルーの患者服を着ている――が見たのは、少女は部屋の隅で膝を曲げて股を開き腰を下ろしながら地にでん部を付けない、いわば「うんこ座り」の状態で、これ見よがしに眉間に皺を寄せて天井を仰ぎ、不平不満の象徴とでも言うべき見事な「への字口」をしている姿だ。それを目撃した、いや、目撃してしまった。

 少年は思わず口をついて出た自分の言葉に同意してしまった。

「うわっ……なにあれ」

 少女が顔くれながら少年の方へ向き直り、近場の観葉植物の葉を毟りながら口にした言葉は、

「何みとるんじゃわれぇ、ぼてくりまわすずら? このかるこべあがぁ」

 翻訳すると『何見ているんですかあなた、殴りまくりましょうか? この頭の足りない方め』となる。

 少年は珈琲メーカーのスイッチを入れて、少女を無視して椅子に座り込んだ。



 ……



 沈黙。少女は先ほどの発言以来固まっている。反応をうかがっているのは言うまでもない。珈琲メーカーは空気を読まずにゆっくりと、そしてゆったりと珈琲豆を挽いて抽出している。この沈黙の中、空調以外で唯一の音の発生源である。少年の気まずさから逃れるための貧乏ゆすりを除けば……

 そして……このガン見である。瞬きひとつせず少年を片方の目だけを大きく開き、その上の眉は眉間の皺に合わせ八の字に吊り上がっている。顎はこの世の暴言を吐かんとばかりに少々横にズレながら固定されており、ひんむかれた唇の向こうには、白い歯とピンクの健康的な舌が見える。

 珈琲メーカーに付属されたお湯が沸騰を初め、ぐつぐつと音を立てる間、少女はひたすらその顔で、手に毟った観賞植物、バオバブの悲痛な象徴を持ったままフリーズしている。それに耐える少年はトントンと貧乏ゆすりをしながら、見られている感覚に耐えている。無論、そっちは向けないまま、数分が過ぎようとしている。



 ぐつぐつ


 じぃー


 トントン



 ぐつぐつ


 じぃー


 トントントン




 ……




 ぐつぐつぶく


 じぃー


 トントントントン



 ぐつぐつぐくぅーゎゎー


 じぃー


 トントントントントントントントントントン! がたん!


 少年は限界を迎えた。椅子からおもむろに立ち上がり、相も変わらず顔くれる少女へ侮蔑の表情を投げ――とここで少女は自分が少年の機嫌を損ねたことに気づいたが、時すでに遅し――少女と逆方向へ向かい、珈琲メーカーから珈琲を取り出し、一口飲んで熱がってから、何かに満足して少女の方へ珈琲を持ったままやってきた。

「な、なんばしよっと? ちょ、乱暴はやめてけろ!」

 少年は少女へ迫る。珈琲を持ったまま、万遍の笑みのまま。

「悪かった、悪かったけん許してくんろ! おらさ悪かっただ!」

 少年は少女へ迫る。珈琲を持ったまま、万遍の笑みのまま、額に青筋を立てて。

「すみません。すみません。すみませんすみませんすみませんでしたぁぁぁ」

 少年が少女の前にたどり着いた時には、少女は半ば泣きが入っていた。少女はバオバブの葉を頭にのせながら床に額を押し付け、目の前に現れた無言の圧力が引くのを待った。


 少年は少女のすぐ横に腰を下ろした。持ってきた珈琲を口に運び、自分がもう怒ってないと少女が気づくまで、そのままそっぽを向いていた。

「も、もう、怒ってないっちょ?」

 少年は無言で答えた。少女は少年の傍にそのまま座り、少年に尋ねた。

「ビッチ、イコール悪い女、ってことで暴走族っぽくしてみたんじゃけんろ……いかんかったじゃっろか?」

 少年は少し黙ってから口を開いた。

「ビッチって、そういう意味じゃないんじゃない?」

 いや、突っ込むべきところは他にも多くある。多くあるにもかかわらず、少年はとりあえずスルーした。特に、エセ方言とか。

「なんと! せだばどういう意味だっちょ?」

「それは……」

 少年は自分が赤面し始めていることに気が付いた。少女はそれを不思議そうに眺め、少年が言わないということはどういうことなのか考えていた。



 さて、感の良い方ならそろそろお気づきだろうか。この違和感に……



 翌日、少年――今日は白衣を着ている――は部屋に入るなり部屋で本を読み漁る少女を見る。見れば漁っている雑誌は数学の学本ばかり。少年の記憶の中には、少女がこうして本を漁る絵面がいくつもある。その都度目的は違い、その都度彼女は様々な事柄を残してきた。

 少年は少女のそういう行動を見て、机の上に紙と筆記用具を、すぐに書くことができるようにセッティングする。

「紙!……紙、紙紙紙紙ぃー!」

 机にもう突進する少女を少年は回避する。そして、少年が部屋に入ってきていることにも気づかず、猛烈な勢いで何かをひたすらに書いている。正直、少年には少女が何を書いているのかさっぱりわからない。さっぱりだが、少女がこうなっている時は周りが見えてない時だ。少年はそう理解していた。だから、少女の気が済むまで少女を遠巻きに見守ることにしていた。

 少年が散らかった本を本棚に戻し、手短に簡単そうな本を持って読み進み、ある程度飽きた頃、少女は少年に気が付いた。

「あ、何時からおったん? 気ぃつかんだわぁ」

 あっけらかんとして発言する少女を、少年は眼中にないという具合に興味も無い本に目を向けながら無言で答えた。

「これで、シュッケンマイヤー博士に色よい報告が出来るものができそうや」

 少年はそれを受けて少女に聞いた。

「ねぇ、憧れの先輩、名前なんだっけ?」


 なぜ少年がこのようなしたのか。


「先輩? んー、憧れてる先輩なんぞおらんとね。うちの憧れはシュッケンマイヤー博士じゃけんの」


 少女がなぜこう答えるのか。


 少年はその質問の答えを聞いて、また無言で答える。

「変なやっちゃなぁ」

 少女の言葉に少年はよく沈黙で答える。理由は、少女の発言についていけなくなった時の対処法の一つだからだ。少女からすると寡黙な少年と映るだろう。いや、映っているのだろうか? 少年は思う。もしかすると、毎日来ても意味はないのではないか、と……

 少年が思わず口にする。

「ところでさ……方言。なんで続けてるの?」

 少女は少し疑問に思ったが、何も分からないとばかりに首を振るだけだった。



 翌日、少年――今日はぶかぶかで黄ばんだシャツを着ている――は部屋に入るなり、少女の怒りの声を聴いた。

「なんばしよっとね! だれさこげなことをおおお!」

 頭を振り乱して怒りをシャウトする少女。そして、その対応に困って無言で答える少年。部屋に入ってきた少年に気づき、少女は言う。

「バオバブの慶次兄ちゃんの葉っぱを千切ったんは誰や!」

 少年は無言で答える。少女は怒りをあらわにし、しなびたバオバブの葉を振り回す。

「こげなこっちゃ、憧れのアレイスター教授に怒られてまうやんけぇ!」

 また別の名前。この部屋では、名前は意味をなさない。

 バオバブの葉をなんとか観賞用植物の根元に植えた少女は、怒り疲れたのか、ため息交じりに呟いた。

「慶次兄ちゃんの第十二番目の腕をもう一度蘇生するためにどうしたらええやろか?」

 少女はまた本を漁り始める。少年はため息交じりに筆記用具を机に用意する。みれば、昨日書いたどこかの博士が求めているという奇怪な数式が書かれた紙が置かれたままだった。少年はそれを握り潰し、白紙をセッティングする。もう、これで何度目かの一日がまた、過ぎていこうとしていた。



 意図的とはいえ、少女がどこにいるのか、少年が何者なのか、それらをそろそろ説明せずに居るのが苦しくなってきた。決して書き込むスペースが無かったとか、話の流れがうまく切れなかったとか、そんなことはあると思うが突っ込まないでほしい。

 さて、ではその説明には、少年の一日を見ればいいだろう。


 少年は深夜遅くに起床する。何もないコンクリ部屋、壁の一部が崩壊し、外が見える。そこから広がるのは広大な砂漠、ただそれだけだった。少年はそこから出て、暗い廊下を歩いていく。床には無数の白骨死体。研究服、フォーマルなスーツ、あるいはクランケの装い。遺体も様々である。骨格が異常に大きい者、眼窩が三つある者、人外の装いもある。ほとんどの部屋は崩れ、広がるのは死体ばかり。生者は彼と少女のみ。

 少年は、今日も少女に会いに行く。少女の居る部屋に入るには、様々な侵入者用の罠があり、そのどれもが致命傷に至る傷をつけてくる。それでも少年は少女に会いに行く。刻まれ、焼かれ、溶かされ、それでも少女に会いに行く。

 この施設は、人とよく似た人外の存在を集めた施設である。元は人間であるというのに病気で収容された物が最初であっただろうこの場所は、次第に本格的な人型生命体の研究施設となっていた。精神、肉体の構造はもちろん、知能や直感、ESPなども研究されていたようである。だが、ある時研究所は崩壊。理由は少年にも少女にも分からない。もちろん私も分からない。ただ、壊れるべくして壊れる時が来た、そういう事なのだろうと、少年は理解していた。

 少年は少女の収容されている研究室前のシャワー室で自身の血を洗い流し、自身の姿がいつもと寸分たがわなくなるまで待ちながら、近場の遺体から衣服を拝借、それを着て少女に会いに行く。それが少年の日課にしてすべてだった。少女は記憶能力が非常に弱く、一日たてばすべてを忘れてしまう。それに少年が気づいてから、少年は日参せざるを得なかった。

 少年が日々何度も死んでまでこの道を往復するのは、きっと少年に課せられた精神操作の影響なのだろうと、私は思う。私もまた、目を閉じれば聞こえてくる。あの研究者たちの怒号が……。



『早うせんかいじれったいのう』


『はは、かるこべあってしっちょるか? うちのとこの方言で阿呆うこっちゃ』


『ぼてくりまわしたろかほんまに!』


 まぁ、方言で怒鳴ってくるようなのはごく一部だったんですけどね。

 もうその研究者たちは白くなって床に散らばっているだけだというのに、誰かそれを教えてやればいいのに……

 かくて、ただ死なないという体を持った少年は今日もまた、すさまじい演算能力を持つが故に記憶に異常を抱える少女の部屋へやってきたのだ。

 今日は白衣を白骨死体からはぎ取って着る様子。むしり取られた白骨遺体はばらばらと砕けコンクリの床にばらまかれた。様ぁない、と感じることも、もう少年にはないのだろうか……



 ああ、いつか、少年の愛が少女の記憶に残り、二人が幸せにならんことを……

 白衣を着た少年が部屋に入ると、少女は少年に言った。

「ああ、聞きたいことがあってな? ちょっと、いい? 昨日……」







 私? いえ、私に関しては……まぁ、いいではありませんか……

きっと直前に読んだゾンビ物のTRPGのルールブックのせいだ。

施設についてはそれなりには決めてあります。

場所は日本で、外国からの支援をもらってる~とか。


少女の憧れの人たちは基本彼女の記憶の中に点在するキャラクター達です。

押さない時に見たアニメや映画、あるいは実在の人物を研究者たちに重ねていたわけです。

少女は記憶が曖昧なので研究者たちへの嫌な記憶はあまり残っていません。

逆に、不死身の少年は記憶を一から十まで記憶しており、それ故に散らばる遺体たちには無関心、あるいは敵対的です。


ってか

この手の説明を作中にしなきゃならんのに……

んー……実力不足です。




ストーリーテラーさん?

ああ……彼は……まぁ、いいじゃないですか

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