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勇者だった魔王  作者: 空愚木
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勇者は四獣サクロスを倒しました


 本文に書かれていることはすべてギャグです


 実際するあらゆるものと関係ございません


 冷静になれ、冷静になるんだ。

 大丈夫、此処まで魔物と戦ってきた。こいつを倒さなければヤルフト港へいけない!

 こんなところで手こずっている暇など私にはない!!


 「はぁっ!」


 勇者の掛け声と洞窟に響く魔物の声。

 勇者セイロンは四獣の一角であるサクロスと対峙していた。


 「ま、負けてしまう!?このままでは…」


 「勇者とてこの程度か!この四獣サクロスの相手ではないわぁ…?え、あ、はい、はい…」


 「何を話している!?」


 「じゅ、呪文の詠唱だ!貴様を闇に葬ってくれる!……え?魔王様がまた?わかったからちょ、ちょ…」


 四獣サクロスがかわいそうなことになっていた。後方から部下に何度も話しかけられている。部下が手に持っている魔石が魔王と繋がっているらしい。


 「てやー!」


 「ちょ、おれ打撃に強いって聞いてないの?蚊に刺されたみたいですごく嫌なんだけど」


 「ふ、ふざけるな!この勇者の剣が蚊だというのか!」


 「レベル低いし打撃技しか持ってないし!仲間もいないお前なんて蚊以下なんだよ!ちょっとだまってくれませんかね!?今魔王様が鬱陶しいからそっちから片付けるんで!!順番は守れよ、お前勇者だろ!!」


 「じゅ、順番なら仕方あるまい…。待たせてもらおう」


 「あ、待ってくれるの?ありがとうございますぅー。すぐ終わらせるんで、ホントスイマセン」


 「いえいえ、お気遣いなく」


 四獣サクロスが奥のほうへ姿を消してから数分。オドオドとしたようすでサクロスの部下がセイロンにお茶を出した。一応客人扱いになっているらしい。


 「魔物の施しなど結構!」


 「え、あの、その。おいしいですよ?」


 「魔物の施しなど結構…」


 「おいしいんですって。お客様にお茶出さないわけにも行きませんし。あ、毒とか無いですよ。魔界名物の麦茶です」


 「魔物の施しなど……」


 「…元勇者、というか先代の勇者の大好物です」


 「頂こう!」


 先代の勇者に一種の崇拝心を持っているセイロンは光速とも思える速さでお茶を取る。


 (……なるほど、おいしい。流石勇者様の好物であるだけある)


 「おかわりはいただけるか」


 「えぇ、えぇ!!いくらでも飲んでください!セイロン殿!」


 「うむ、うまい…」


 「サクロス様の用事はすみました!もうすぐ戻ってまいりますので、武器の準備をしていてください」


 「何から何まで本当にすまないな」


 魔物が差し出してくれた鉄の剣を握り、木の盾を構えてサクロスを待つ。

 奥から出てきたサクロスは疲労しきった様子だった。


 「えっと、あぁ、勇者セイロン。この四獣サクロスが相手してくれるわ」と、ものすごく棒読みだ。


 「先ほどの勢いはどうした!?」


 「え?ちょっと、台本に無いこと言わないでくれませんか。ここ、これ言ってください」


 「な?え、えっと、『港への道を開放しろ!!』」


 「言われて素直に開放すると思うか、バカなやつめ」


 「えっと…ちょっと台本遠いです。見えないんですけど」


 「もしかして目悪いのか。勇者の癖に。仕方が無い、お前が持て」


 「スイマセン。ここからですよね、『ならばここで討つのみ!』あ、お茶おいしかったです」


 「かかってこい勇者よ!って、お茶飲んだんですか?持って行きます?糞魔王が一杯贈ってくるので山ほどありますよ」


 「望むところだ!お茶もらいます!」


 お互いが素で丁重語になっていた。

 二・三回剣と斧がぶつかり、互いにため息を漏らす。


 「助っ人って何ターンで来るんですかね」


 「あ、5ターンですよ」


 「そうなんですか?あと七・八回だけ剣あわせてもらえます?たぶん勇者の5ターン目なんで」


 「わかりました」


 キィンと金属同士がぶつかる音が何度か過ぎる。

 いくら防御体勢とはいえ勇者のHPは赤ゲージに入っている、はずだった。


 「一人で戦う孤独な勇者よ!その無謀とも言える勇気に呼ばれて助太刀に参ったぞ!」


 入っているはずだったのでここでの助っ人は思わずやったと叫んでしまうほど嬉しいはずなのだが。

 実際は赤ゲージどころかHPが満タンで、さらにはセイロンとサクロスに奇妙な友情が生まれ始めていたので、微妙な空気となった。


 「あれ?これどういうこと?」


 「助っ人も来ましたし、戦闘は終わったということで。皆の衆、引くぞー!あ、イベント頑張ってください」


 「あ、はい。また会いましょうね。お疲れ様でした!」


 笑顔で魔物を見送る勇者という異物を見つめる助っ人。いまだにこの状況がわかっていない。


 「ちょ、ちょっと、勇者セイロン。どうなってるの?」


 「わかりませんが、お茶がおいしいから助かったんです!」


 「お茶?え、そんなイベントフラグあったけ?」


 「もらったんですよ!おちゃっぱ!」


 ざっと勇者の手一杯にある葉っぱ。この勇者、葉からお茶を入れられるのだろうか。


 「う、嬉しそうで何よりです。とりあえず経験値もらった?」


 「あ、もらってませんね。でも退散してしまいましたし」


 「何やってんの勇者ぁぁぁぁぁ!?」



 >>セーブしますか?

  >はい

   いいえ


  勇者Lv4

  E:鉄の剣 E:木の盾

  特殊アイテム:先代の勇者の冒険の書

  消費アイテム:おちゃっぱ

 


 

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