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勇者だった魔王  作者: 空愚木
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勇者は洞窟へむかいました

 本文に書かれていることはすべてギャグです


 実際するあらゆるものと関係ございません


 勇者セイロンはリバータウンに着いた。

 帝都で武器を買うにはお金が足りず、仕方がないので下町で物運びの仕事をしてお金をためていたのでかなり遅くなってしまったが、おかげさまで武器はすんなり買えそうである。


 「それにしても魔物の姿を見ないな…。本当に国王が辟易するほど魔物が攻めてきているのだろうか」


 「にーちゃん何も知らないんで?この辺りの魔物はぜーんぶ洞窟へ向かったんだぜ?おかげで港町への流通物が滞って困りもんよ」


 「ヤルフト港へ行けないのか!?」


 「まぁそうなるなぁ。で、にーちゃん、何買う?それとも売るのか?」


 「武器と防具…あと薬草をもらおうか。この辺りに稼ぎのいい仕事などはないだろうか。空っぽになってしまった」


 「仕事?にーちゃん腕はいいのかい?」


 ニヤリと嫌な笑顔で武器屋の男が笑った。勇者セイロンは自らの剣の柄を握り、大きく頷く。


 「私は魔物と戦う運命にある。腕に自信がないというのなら鍛えなおさなければなるまい」


 「おっけー、にーちゃん。いい奴紹介してやるよ。この街のあるバーに夜だけ現れる男が居るんだ。その男はなんと、魔王を倒した勇者様一行のお仲間様の友人らしくてな!今度、魔物の巣窟である洞窟へ討伐隊を集めていらっしゃる!それに参加すれば大金はないにしろ、生活に困らない程度にはお金が手に入るはずさ!」


 「先代のお仲間様の友人…、もしや王様が仰っていた…」


 先代の勇者一行の行方を知る人物なのかもしれない。だとすればセイロンにとっても好都合である。

 が、武器屋の男が反応した言葉は一つだった。


 「勇者、だと?」


 「え、えぇ…」


 「あの屑、かえってこねーし。うちの壷壊しやがって…」


 「えっ?」


 「いやいや、なんでもない!今日その男に頼むといいさ!」


 「あ、はい」


 一瞬見えた武器屋の黒い顔を、セイロンは忘れることにした。

 だが、忘れる前に思い出す。国王ですら先代の勇者を語るとき、一瞬くらい顔をしなかったか。


 「まさか…」


 セイロンは思い立ってしまった。

 自らが憧れ、その名を口にするのすら恐れ多いと思う先代の勇者。いや、セイロンの中では先代などではなく、絶対唯一の勇者。

 彼は…、


 「誰もが考えるだけで暗い顔になるほどの辛い過去をお持ちなのか…。勇者として輝かしいだけではなく、その内面には多くの苦しみを抱えていらっしゃるに違いない。その苦しみを乗り越えて、さらには人々の平和を祈っていらっしゃったのだろう…。ははっ、ぜんぜん敵わないな」


 セイロンには少し妄想癖があるようである。

 実際の先代の勇者は国王に屑と言われ、町の人々に壷割り小僧と呼ばれ、現在の部下であるケノスに糞と呼ばれているような人物だ。


 「ぶえっくしゅっ!」


 「うわきたねぇ!こっち向くな!」


 「うぅ…、誰か噂してるのか?はっ!風邪?風邪!?ちょっと寝るね!風邪だから!」


 「風邪で寝込む魔王なんて聞いたことないわ!」


 その頃の元勇者現魔王はこんな様子だったが。


 「それにしても勇者セイロンとは少し残念な思考回路であること以外、弱点という弱点はなさそうですね。人様の家の壷割るどころか、ちゃんと仕事で稼いでいますし」


 「勇者はフリーター!これは定番だろ!なに崩してくれちゃってんの!」


 「荷物運びぐらい誰でもしますよね。なぜ今までの勇者は魔物が持っている小銭を欲しがったのでしょう」


 「アクロスたん!あのねあのね、その言い方やめてくれない?魔物じゃなくてもどんな小銭でもよかったんだよ?たとえば人の家の壷の中にある小銭とかね!」


 「だからと言って魔王城の壷に小銭を入れて回る遊びやめてくださいませんか?あれでは勇者が来る前に壷の中がお金で一杯になってしまいます」


 「えー、だって俺が来たときも魔王城の壷一杯だったよー?」


 「元魔王様が…、いや、そんな馬鹿な。だって、元魔王様だぞ…」


 「元魔王様がそんなことするはずないでしょう、ケノス様」


 「そ、そうですよね、アクロス様。私が間違っておりました」


 「なんなの!お前らのその先代の魔王への信頼度!?」


 「お前とは違うんだよ糞がぁ!」


 「うえーん!ひどいよぉ!!」


 泣きまねをする魔王をアクロスが思い切りぶっ叩いた。それもいい笑顔である。


 「すいません。苛々したものですので」


 「そ、そう?ご、ごめんなさい」


 「アクロス様怒らせたら死滅ですよ、魔王様」


 ケノスからありがたい助言をもらい、魔王はアクロスにごめんね、と繰り返す。もちろん手渡された仕事の書類はすぐに受け取った。


 「う、うん。ちょっと仕事する気になったかも」


 「叩いて仕事してくださるのでしたら……」


 「い、いや!もういらないかな!」


 「そうですか?」


 「うん!」


 にこっと笑い、アクロスが部屋を出て行く。

 ケノスと二人っきりになって魔王が何に聞こえないようにか、こそこそとケノスに話しかけた。


 「ねぇ、アクロスって先代の魔王にもこんなことしてたの?」


 「元魔王様は怒られるような人じゃなかったので分かりませんよ」


 「な、なんかごめんなさい」


 「まったくです。勇者が動き出したので勇者撃退策を考えましょう」


 「はーい」



 >>セーブしますか?

  >はい

   いいえ

 

 

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