勇者セイロンが旅立ちました
本文に書かれていることはすべてギャグです
実際するあらゆるものと関係ございません
目の前の国王は本当に辟易しているように見えた。
これもすべては悪しき魔王が復活したせいである。
「勇者セイロンよ…、そなたにすべて任せる形となってすまない…」
「いいえ!国王陛下が民のために力を尽くされたことは承知しております。国王陛下が城を離れるわけにも参りません。このセイロン、勇者の名を授かるにはあまりにも未熟でございますが、力の限りを尽くしたいと思っております」
「そういってくれるとありがたい…。先代の勇者は行方知れずでなぁ…。これも魔王が何かしたに違いない。新たな仲間を見つけ、先代の勇者一行の行方も捜して欲しいのだ。なにせ、魔王を破る剣は先代の勇者しか持っておらぬ」
「勇者様…。お会いするのがいまから楽しみであります!」
「期待するような奴ではないがのぉ」
「え…?」
「いや、なんでもない。早速ではあるが、勇者セイロンよ、東の橋を渡った先にある小さな街に先代の勇者の仲間の行方を知る者が居るという。そこへ向かって欲しい。街の名は、『リバータウン』じゃ。橋を渡ったとは川に沿って歩くがよい」
「はい!」
勇者はきびきびとした動きで退室した。
その背中を見送った国王は…、
「今回は頼りになりそうじゃの!前回の勇者…えぇっと名前はなんと言ったかの!?まぁ、あの屑よりはよい働きをするであろう!!」
「王様、先代の勇者など捜させなくともよいのでは?勇者セイロンは一人でも魔王を倒してくれますぞ!馬鹿高い褒美をやる必要もなさそうですな!」
「ふははははは!全くその通りであるよ!だがな、剣は必要なのだ。あの屑め、宝剣だけはちゃっかり奪っていきおって…。魔王と一緒に倒してしまえばよいわ!」
「なるほど、剣ですか!そういえば先代の勇者一行はそれぞれ最強の武器・防具をもっておりますからな!それを毟り取らなければすっきりしませんぞ!」
「ふははは!!」
「あはははは!」
バチン、と画面のようなものが消える。
元勇者である魔王には、魔族の術式は全く分からないが、遠くの様子をそのまま映しだす鏡のようなものらしい。
「まったく、全く懲りてないな、糞国王め!」
「魔王様?」
「あいつ、前回の冒険の時、俺にたった3000Gだけ持たせて一人で旅立たせやがった!今回は1Gすらやってないじゃねーか!セイロン?だっけ、あの次代の勇者もかわいそうに!これから苦しみしかない旅が待っている!!」
「元勇者の叫びだ…」
「うおおおお!!最初の街、というか王都の物価糞たけーんだよ!回復薬10個買ったら使い切ったわ!王様だろうが!もっと金だせ!いい武器が!糞!高い!!」
「魔王様の古傷|(精神面)が!」
魔王が映像を見つつ、床の上を魚のように跳ねる姿を見て、重臣であるアクロスとケノスは心配し始めた。このかわいそうな魔王を、ではない。これから自分たちを倒しに来る勇者セイロンを、だ。
((あんな清純派の勇者でいいんだろうか…。魔王はこんなのなのに))
「あ、そ、そういえば魔王様!人間界に遊びに行っていた四獣のサクロスから報告がありましたよ」
「サクロス…!?まって、聞いたことある…。あ!最初のダンジョンで出てきたかわいそうなボスだ!」
「その覚え方やめたげてよぉ!!」
ケノスの悲痛な叫びを無視して魔王は振り返る。いやだって、本当に可哀想だったんだもん。
強かった。勇者一人で挑んでいたのだ。
リバータウンは近くにある洞窟に魔獣が住み着き、隣国であるリヴァリガイト帝国にわたる船が出ているヤルフト港に繋がる道が通れなくなっていたのだ。そこで、勇者であった現魔王は、洞窟に住まう魔獣を退治しに行った。一人で。
「うわぁぁ!!回復薬ぅ!回復薬!!財布が軽いよぉ!!」
「魔王がまた暴れてる!!」
「ま、まぁ何とかサクロスのところまでたどり着いたんだけどさ、5回ぐらい教会のお世話になって」
「5回も死んだのかよ!!」
ケノスが思わず突っ込むが、アクロスと魔王に無言で睨まれたので、小さい声で謝罪しておいた。
魔王は一回きりでも、勇者が蘇れることは禁句である。
「サクロスつえー、これ無理だわ。これイベント戦だわ、負けてもいいやつだわ。って思い始めた頃、助っ人が入ったんだよ。一撃でサクロスの体力半分ふっとばすぐらい強い奴」
「な、なんだってー!」
相槌が棒読みだが、魔王は機嫌よく話を続けていく。
「まぁ、そいつが誰かっていうのはネタバレになるから言わないけど。そいつがサクロス倒してくれて、『勇者よ、一人では魔王は倒せない。仲間を集え!』ってカッコいい言葉決めてから姿消して。ここから仲間集めの始まりよ!」
「ではサクロスには助っ人に要注意と伝えましょう」
まてまて、と魔王。ケノスが疑問を込めて魔王を見つめると、魔王はドヤ顔で返してきた。
「いや、まずすることがある」
「は、はい?なんです?」
「どんな雑魚もボスの間まで引かせるんだ!勇者にレベル上げさせるな!!」
「うわ!コイツせこい!!流石人間の王様に屑とか言われてるだけある!」
「うははははは!!勇者よ!お前の冒険をすべて把握している魔王が相手だぁぁぁ!!」
「一生ついていきます、糞魔王!!」
「きゃー、魔王様かっこいいぃ!!」
勇者が王都を旅立ちました。
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