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勇者だった魔王  作者: 空愚木
25/26

勇者は魔王城へたどり着きました。

 本文に書かれていることはすべてギャグです


 実際するあらゆるものと関係ございません


 城を見上げる勇者。バルコニーから勇者を見下げる魔王。勇者は光の剣を魔王に向け、その首を叩き斬ると宣言した。


 魔王はバルコニーから室内に戻り、優雅に腰掛けた。この部屋にやってくるまでに二人の魔族を倒さねばならない。勇者がやってくるまで時間がある。一芝居を終えたラ・ジューンが魔王のそばに控え、ケノスとアクロスはそれぞれに与えられた部屋に待機する。

 サクロスを始めとした四獣も城に配置させた。倒されるためだけに部下をバラけさせて配置させるなんて、と魔王は自らに呆れを示す。乾いた笑みを浮かべる魔王に、忠実な下僕であるキミタルシア・ラ・ジューンも心配そうにその顔を覗き込んだ。


 「魔王様。やはり総力を集めていたほうが……」


 「いいのいいの。形式上"倒した"っていう結果が勇者側にあればね。だから勇者がきたらキョミョルシア君は隠れてね。もう君は倒された魔族なんだから」


 「キミタルシアです! この私の心配をしてくださるなんて、魔王様! 一生ついてきます!」


 「ケノスもアクロスも、サクロスたちも、その他の魔物たちも、みーんな倒されたフリでさっさと撤退しろって言ってあるからね。大丈夫大丈夫。勇者は俺が滅ぼすから。勇者が滅びたあとで、ゆっくりキミタルシア君の屋敷の掃除もしよう。魔界もゆっくり立ち直らせよう」


 「はい! 魔王様!」


 「キミタルシア君だけ先に屋敷で戦ってもらったのは光の剣のこともあるけど、例の件も進んでる?」


 「はい。各自への指示は屋敷での戦闘前に終了し、それぞれ指示に従っています。半分ほどはすでに終了し、己の場に戻ったと報告を受けています」


 「うん。そっちは確実にお願いな。あっ、でも、自分たちの意思で従いたくないってやつはそれでいいからな」


 「はい」


 ラ・ジューンも立ち上がり、魔王の命令を完遂するために退室する。魔王は騒がしい城門あたりに思いを馳せた。そこで戦っている勇者とその仲間、自分の部下たちの実力でシミュレーションする。本気で戦わせれば自分たちが負けるはずがない。


 (わざと負けて撤退しろとは言ったけどな。アクロスはできるだろうけれど、ケノスは不安だな。一度俺に負けてるってのもあるし、プライドが許すかどうか。頼むから作戦通りに動いてくれ……)


 魔王はかつての仲間を一人も誘わなかった。彼らはなんだかんだと人の社会で生きていこうとしているからだ。魔王がやり遂げたいことをこなせば、彼らのその願いはかなわない。


 「勇者が滅びた世界で、そんなことできるはずないし」


 美味しいお茶を飲んで気持ちを落ち着かせる。控えめなノックの音がした。その扉の向こうにいるのが誰かも理解して、魔王自ら扉を開けるために立つ。思ったとおりの人物がそこに立っていた。震える体を抑えるように自らを抱きしめている。それでも震えが止まっている様子はない。


 「大きくなったとしても、そういうところ変わらないな」


 「……どうして、魔王になったんだよ」


 「その話もする。今は、俺の目的も話す。だから中にお入り」


 勇者のもとにやった魔王の相棒、真っ黒の巨体でありながらおとなしくしている鳥が、後ろから客人の背を押した。客人になついているようで猫や犬がするようにその体に頭を擦り寄せている。

 魔王は客人と相棒の鳥を中へ入れて扉を締めた。騒がしい音から遮断するように。


 * * *


 何かがおかしいと、勇者は思う。何かが、おかしい。今、私は勇者として魔王城の中を駆けているのではないのか。出てくる魔物は全く手応えがない。与えられたステータスを確認し、レベルが高するなんてことはないはず、と頭で何度も繰り返した。

 扉が開かない部屋もあり、四獣も倒しながらまず鍵を回収していく。勇者にあった違和感は、四獣のうちの一匹、サクロスと戦っていた時に明確なものになった。


 「お前、☓☓☓☓じゃないな」


 「何を言っている?」


 「いや、違うなら、これもいらないか。勇者になるしかなかったやつなら同情できるけど、自分で勇者になったやつなんて話す必要もないね」


 仲間である魔法使いと伝説の傭兵が顔をしかめる。勇者を侮辱する言葉にレアミルも己の武器に手を伸ばした。


 「戦って殲滅する。その侮辱には剣で応える!」


 「いいだろう、くるがいい! 愚かな勇者!」


 四獣サクロスは持っていた書物を投げ捨ててこちらに向かってくる。雑魚とは違う殺気に一瞬ひるんだが、これこそが勇者の戦いだと己を奮い立たせた。


 「えっ」


 一撃目の衝撃から負けを悟った。勇者としての補助もあるはずだが、それが感じられない。何も感じられない。そんな馬鹿な。私は、勇者として魔王を倒すものとして、魔を滅ぼすものとして!


 「勇者様!」


 魔法使いと伝説の傭兵、そしてレアミルの補助を受け、四獣サクロスの攻撃を捌く。物理攻撃が効かないと察した魔法使いとレアミルが中心となって四獣サクロスを撃退した。動かなくなった遺体を見下げて、はっきりとしてきた違和感を殺すために、追い打ちする。死体蹴りだと避難されるはずもない。私は勇者なのだから、私は正しい。

 レアミルが鍵を見つけたといい、私達は次の部屋へ向かった。


 


 >セーブできません。

 >あなたはセーブできません。



現在の勇者一行

 ■◇※△  Lv.61 "魔を滅ぼす者"

 ミルゴ   Lv.62 "大魔法使いの弟子"

 ゼゴン   Lv.62 "伝説の騎士崩れの傭兵"

 ハースレア Lv.60 "光の一族"


前勇者一行の公開情報

 全員漏れなく屑

 前勇者現魔王 Lv.??? "元屑勇者現屑魔王"

 ウィル    LV.94 "大魔法使いにて超がつく変人で一番の屑"

 アルバス   LV.95 "諦めの僧侶"

 ミーナ    Lv.93 "水に住む変人"


魔王側メンバー

 前勇者現魔王 Lv.??? "元屑勇者現屑魔王"

 ケノス    Lv.??? "アップルティー好き"

 アクロス   Lv.??? "教育係"

 キミタルシア Lv.102  "貴族"


 魔王のペット Lv.203 "魔王の相棒の鳥"

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