勇者は金欠だったようだ
本文に書かれていることはすべてギャグです
実際するあらゆるものと関係ございません
峠を越えてから暫く歩くと街を発見し、その街で一晩を過ごすことにした。休むには少し早いが状態異常のせいで歩いていくのも辛い。
「サクロスさんの話では魔界と人間界が通じてしまったそうだからな。その通じてしまったところを閉ざせば浄化されるはずだ」
「そりゃたしかにそーですけど、どうやって閉めるんですかぁ?」
「魔界への門なんて魔法使いでも閉ざせないぜ? ミルゴだって無理だろうよ」
「無理ですねー」
「心配するな。わが一族にはこんな言い伝えがある」
ミルゴとゼゴンは、やっと勇者の血筋とか勇者らしい設定きたっ! と腰を上げたが、続いたセイロンの言葉に落胆するしかなかった。
「魔界と人間界への通路を管理する一族に聞け、と」
「それ言い伝え……?」
「その一族の場所もついでに言い伝えてないのかよ」
「通路と穴は別だろうが我々よりは知っているだろう。そして実はその一族に心当たりがある」
再びミルゴとゼゴンが身を乗り出す。さすが勇者! などとミルゴは叫んでいた。
「次の街はレアミルというのだが、その街を治めている一族がその通路を管理する一族ではないかということだ。なにより、その街には魔界への通路が存在すると噂されているらしい。外部の人間を嫌う街だが、前回の勇者殿はそこに行ったきり人間界には姿を現していないそうだ」
「あれ? 最後の情報いる?」
「前回の勇者って現在行方不明なんだろ」
「うむ。魔王討伐後、陛下より褒美を授かったものの、その褒美を全て仲間に譲り、自らはそのレアミルという街に向かったと。それから行方不明だそうだ。その後すぐに魔法が復活し、もしかして勇者殿は魔王の復活を感じていらっしゃったのではないかと思っている。現在も一人で魔王と戦っていらっしゃるかもしれないだろう!」
「魔王の復活を感じて一人で魔界に行くために、魔界に通じてるレアミルへ行ったってわけか。まー、なさそうな話じゃないけどよ」
「でもさすがに一人じゃ今頃教会のお世話になってると思うんだけどなー」
「そうだとしてもレアミルの教会だろう?」
「それもそうか。じゃ明日はレアミルに向かうんだな」
「そうなるな」
と言って布団を被るせいろ――
「まてーーい! 何寝ようとしているんだ!」
「はっ! 歩きつかれたせいで眠ることしか考えられない! 憎きまおうめぇ~」
「後半寝てるだろう! おいっ!」
「………」
「あーあ、寝ちゃった」
ベッドの上で、まさしくちょこんとというにふさわしい姿でセイロンは眠っている。猫のように体を丸めて布団を巻き込んでいた。
「おちゃっぱどうするんだよ……。街の奴に配っても有り余ってるぞ」
「てか四獣サクロスって結構気が利くね~。運ぶの大変だろうってこの街に届けてくれたんだし」
「それはおれも驚いた。おかげさまでこの街までは楽だったけど、これからこの大量の箱をどうすればいいんだ」
「セイロンの荷物入れ入れといたら? 魔法かって言うぐらいたくさん入るよ!」
「嫌だつーの。こいつの荷物入れ、途中で拾った毒草とか入ってるだろうが」
「あ、確かに。いらないもの出して売ってこようよ、セイロンがいつもしてくれてるじゃん」
そういって二人でセイロンの荷物入れを探る。さまざまなものが突っ込まれている。中には所持金も生のまま突っ込んであった。
「おい、いくらはいってた?」
「367G」
「この街の回復薬の値段は?」
「200G」
「回復薬、切れてたな」
「うん」
沈黙。ちんも、
「あぁぁぁ!! 全部セイロンに任せてごめんなさぁーい! この人勇者なのにバイトとかしだす人だったぁ!」
「なんだってぇ! 今までやけに出発を遅らせたり色々してるなぁと思ったらバイトなんてしてるのか、勇者なのに!?」
「ごめんなさい、せいろーーん! 私たまには魔力回復薬もちゃんと買ってきてなんて言ってごめんなさーーい!」
「うおぉぉぉ!! 新しい武器買えよって思ってすまん! 新しい武器買わせるために今の武器雑に扱ってすまん!!」
二人してセイロンが眠るベッドに向かって頭を下げる。
今思えばセイロンが眠る姿を二人はあまり見かけない。もしかして二人が眠っている間にアルバイトに行っていたのだろうか。
「おい、ミルゴ。今日はおれたちが稼ぐぞ。いらんもの売れば5000Gぐらいになるだろ。いらねぇ武器とかも拾ったし、それ売れば」
「よっしっ! 互いに10000Gぐらい稼ごう! セイロンが起きるまでにお財布買ってこよう! お金生で入れなくてもいいように!」
「いくぞ!」
「おうー!」
こうしてミルゴとゼゴン、二人は仕事探しに夜の街へ出て行った。
スヤスヤと眠るセイロンの武器はまだ初期武器だということも気づかずに。
>>セーブしますか?
お金貯めろよ
>レアミルにパッとする