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勇者だった魔王  作者: 空愚木
10/26

勇者一行はリヴァリガイト帝国に入国しました

 本文に書かれていることはすべてギャグです


 実際するあらゆるものと関係ございません


 勇者とミルゴはなんとなんと、リバータウンに戻ってきていた。船が出ているだろうと自信満々に港へ帰ると、NPCが「船は出てないぜ」としか話さないのである。

 セイロンが困惑する中、ミルゴの素晴らしい助言によってリバータウンに戻ることになった。その助言こそ、


 「フラグの回収不足ですね」


 だったのである。セイロンは自然と釈然としない顔になっていた。


 「フラグ…」


 「王様が言いませんでしたか?『リバータウンに先代の勇者の行方を知る者がいる!』とか。ちゃーんと町の端から端までの人に話しかけないと駄目ですよ」


 確かに言っていた。セイロンも思い出せる。王様の話を聞きながら先代の勇者へ思いを馳せていたので、完全に忘れていた。


 「リバータウンは殆ど無視した形だったので気にしていなかった。先代の勇者様の行方を知る人物が王都の近くにいるのだから王が探せばいいのだ」


 「それいいますか!王様は城のあの椅子から動かないんです!」


 「動くに決まっている。寝るのも椅子の上だというのか」


 「寝ないんじゃないですかね」


 「そんなわけないだろう!!」


 「そんなんだからステータス画面の開き方もわからないんですよ!」


 「そんなもの必要ない!!」


 そんな無茶な、とミルゴが呟いたが、セイロンはその無茶を今まで通してきた。ステータス画面を広げずにミルゴが仲間になるまで攻略を進めてきた。


 「えっと、この書が言うにはー『魔法使いを仲間にしてからリバータウンの中心を流れる川の水を呑む。すると魔法使いが川の水の中に門を見つけ、魔法で門のところまで連れて行ってくれる』らしいですよ!私が仲間に成ってからじゃないですかー!」


 「その書はどこから…」


 「え、勇者様の持ち物からですよー。自分で持っておきながら何言っていらっしゃるのやら。便利な攻略本持っていらっしゃるじゃないですかー」


 魔王から送られた攻略本を手にして笑うミルゴだが、セイロンは楽しくない。先代の勇者の冒険書に頼って、自分になにが出来るというのか。ミルゴが持つ冒険の書こそ、先代の勇者の優しさで、そして自分を甘やかすものであるとしか思えない。


 「その本を捨てるんだ!私たちは私たちの道を進む!リバータウンについて、一通り聞いてもわからなかったら港に戻るぞ!」


 「川って書いてあるのにー!」


 ミルゴが叫んだがセイロンの決意は固いのか、目にはゆるぎない光が宿っている。わざわざ攻略本を持っているのに使わないなんて、とミルゴは悲しんだが、セイロンは冒険を楽しみたい派なのである。


 「聞き取り調査開始!」


 だからこうやって意気込んでいたのだが、


 「き、聞き取り調査、終了」


 その日のうちに意気消沈となった。

 そもそも広い町ではない。二時間もあれば全員に話を聞くことが出来るぐらいだ。とても王都に最も近い町とは思えないほど小さく、人も少ない。いくら素通りといえど、一度目の時にわかるはずだった。


 「ほらー、勇者様ー!素直にフラグ回収に行きましょう!」


 「い、いや!そもそも先代は君を誘わなかったのだろう!?なのになぜ先代の冒険の書にそのことが書かれている!?それを持ってきたのは魔族だった!魔族の罠に決まっているのだ!」


 「えー…」


 ミルゴの目が語る。面倒だ、と。ただそれだけだ。それだけが視線に込められている。

 だがセイロンも曲がらない。宣言したことは宣言したこと。宿に泊まる準備すらしていたというのに、旅支度に戻ろうとしている。ミルゴは非難の色を強めた。


 「やだ!一晩ぐらいゆっくりするー!」


 「なら君の魔法で移動して港で泊まればいいんだ!」


 「いいもん!いいもん!勇者様に遠慮して使ってなかったのに!」


 「え?」


 「どっぺるげんがー!」


 「お、おいっ!!」


 まぁ、ミルゴが移動したのだろう。掛け声はともかく実力は本物なので港に行ったに違いない。

 が、セイロンはリバータウンの宿屋に留まったままだ。移動したのはミルゴだけ。便利な魔法を仕えるのはミルゴだけ。

 セイロンは使えない。


 「ミルゴーーーー!!」


 セイロンが叫ぶが、もちろん聞こえない。

 慌てるべきではない。落ち着いて、休んでからでもいいからミルゴを追うべきだ。焦って追いかけても意味は無い。


 「お、お茶でもの、飲もう。先代の好きな、麦茶!」


 「私もー!」


 「ミルゴ!?」


 「寂しい!勇者様いないと寂しい!我侭言ってごめんなさい!だからお茶頂戴!」


 「こちらこそ、悪かった。今日はここに泊まろう。ほら、飲みなさい」


 セイロンがお茶を差し出し、ミルゴが受け取る。なぜかこれが毎晩の光景と成っていて、そろそろおちゃっぱが切れそうになっている。補充したいところだ。ミルゴだけではなくセイロンだって好きなものだ。途切れるのは辛い。


 「帝国に行こうか…。リヴァリガイト帝国。あそこには四獣がいる。このお茶は四獣サクロスからもらったものだ。四獣のもとへ行けば在るかもしれない」


 「四獣狩りですかー?ならパワー系が欲しいところですね。打撃につよいサクロスがもう終わってるなら、次は魔法に強いはずです。パワー系パワー系!」


 「リヴァリガイトで傭兵でも探してみるよ。それでいいだろう?」


 「はーい!じゃ、明日一番で港へ行って、明後日に船!明々後日には帝国ですね!私、リヴァリガイト始めてなんです!お師匠様はリヴァリガイトの逆、セミリヒールにいますから!用事もないんです」


 楽しみなら何よりだ、と思うのだが。

 うむ、新しい仲間か、とセイロンは思う。傭兵なら金が要ることになる。船代も安くはないだろう。金が要る。


 「お金を稼がなくては」


 「モンスターが全然いないんですよねー。どうやって武器買ったんですかー?」


 「バイト」


 「…勇者様が?」


 「あぁ」


 ミルゴの目が再び細められた。今度は哀れみが篭っている。


 「わかりましたー。勇者様がどんなにお馬鹿なのか、じゅーぶんに。帝国までは何事もなく!この私が守るからねー!」


 「あ、あぁ…。よろしく頼む」


 ミルゴがやる気を出した理由がわからないが、やる気になってくれたというのならセイロンとしては万々歳だ。

 そしてミルゴは宣言どおりセイロンが出来ないことを滞りなく進めてくれた。船が動かない云々についてもミルゴが魔法で何かしていたらしい。セイロンは後ろで「魔法って便利なのだな」などと言っていただけだ。


 のちに、ミルゴ曰く


 「あの勇者様、絶対天然で、物事失敗するタイプなのです」と。



 >>セーブしときますよね?

  >はーい

   いや、ここはするべきではない



 



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