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魔王、現る

例えば、貴方は夜、寝る前に、洗面所で歯磨きをしていたとしよう。


そこで、歯ブラシを口に咥えながら、「明日の天気は晴れかな?」と、窓を開けて星空でも確かめようとか、ちょっと思ったりして……洗面所から居間に通じるドアを開けたとする。


そしたら見知らぬ誰かの、自分の下着の入ったタンスを開けている背中を見たら――――――貴方ならどうするだろうか。



その誰かというのが、黒いマントを背に羽織り、長く黒い髪を緩くゴムで結び、更に図体もでかく……頭部から牛の角っぽいのが左右にニョキッと生えてるような、そんな誰かだったら――――――貴方ならどうするだろうか。



とりあえず私の場合は、何も見なかった事にして洗面所に戻ると、口をすすぎ顔を洗って一息ついて。

ぎゅうっと目を閉じて、顔にタオルを押し当てて、自分自身にしっかと言い聞かせた。



夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ。白昼夢を見たに違いない。いや、今は夜だけど。そうか、夜だからただの夢だわ。




世間ではその行動は現実逃避と呼ぶものに該当するのだろう。けれど有り得ない事態に直面した今ならば、この状態はやむなしであろう。

普通なら居るはずのないモノが、いつも生活している場にいたとしたら、間違いなく私みたいな反応してしまうはずだ。私はそう思う。




何度も自分に言い聞かせながら、一応、念のため、気のせいとか幻覚だという事を確かめるために。

タオルからばっと顔を上げ、居間に続くドアを思い切り開けば――――――。



牛の角を生やした不審人物が、私のお気に入りのレースのパンツを、それまた長く黒く尖った爪でつまみ上げて掲げていた。



「キャアアアアア――――――――――――!!」






此処は、王都トリーヌから南方にはるか遠く遠く離れた地。

同盟国リンバルとの境にある、片田舎の辺鄙な村だ。

その名は、ポポル村。


私はその村に一軒しかないパン屋を営んでいる娘で、名前をミーナと言う。




両親を幼い頃に亡くし、叔父の家にお世話になっていた。パン屋はもともと両親が営んでいたが、私が継げるようになるまでは叔父に管理して貰っていて、2年前にやっとパン屋を継いだばかりだ。

パン屋の1階が店で、2階と3階が住居になっていて、私は2階で1人暮らしをしていた。



そんな私の目の前でパンツをつまみ上げていた人物は、叫んだ声に反応し、相変わらずパンツをつまんだまま私の方に振り向いた。

通った鼻筋、切れ長の瞳、薄い唇。100人の人間が見れば、100人がイケメンだと答えるくらい、整った顔をした男だった。

なぜそんな男がこんな所にいるのかと、驚き固まっている私の方に、男はパンツを放り投げてこう言った。



「俺は魔王だ。そこの小娘よ、俺をここに(かくま)え。さすれば褒美をやろう。」



偉そうに、そして尊大に。男は腰に手をあてて踏ん反り返ると、長い爪の先を私に向けた。




やりたいこと詰め込んでみました。楽しんでいただけるとありがたいです。

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