第二章 背後天使…?
今年の夏は、11月で81歳になるが、毎朝散歩に行き、要らんゴミを拾ってくる余力有り余りまくりの我が祖父も、そろそろくたばるんじゃないだろうか?…と思うほどの猛暑にみまわれた。
…ピンピンしてるらしいが…。
らしい…と言うのは、この僕、燐音 零斗は、一人暮らしだからである。
僕の通う松本工業高校は、安曇野市にある実家よりも、松本市内に建っている親戚の別荘の方に近いところにあるため、そこで一人暮らし生活を満喫中なのである。
そしていまは、高校生活初めての夏休み。
遊びまくりの真っ最中なのだ。
7月29日―起床時間八時。
ベッドから這い出て、階段を下りると…飼い犬であるシェルティーの サテン が階段の一番下の段で寝ていた。
「そんなとこで寝るな、踏むぞ」話しかけると、サテンはあくびをしながら
「ふぁぁ。いやね、忍者が忍び込んでも、俺につまづくだろうから、防犯になるかな〜なんて思って…『なるか、ってか忍者っていつのじだ…』みなかったり」
「思ってないなら言うなっ」
サテンのフェイントにずっこけた。 こ…これは別にサテンが喋れるわけじゃないんだからねっ!
僕が生物と喋れるだけなんだからっ!
…サテンに変な目で見られたので自重します。
ちなみに僕はツンデレじゃないし、僕っ子でもない。
キャラがどうたら、の前に…僕は男子だ。
それはさておき、僕の持つ、役に立つかは微妙なこの希少スキル、生物と会話ができる力は生まれつきの能力だ。
あっても困らないからいいんだけど。
さて、とりあえず植物に水をやらなければ。
「おはようさん、水やりにきたよ」いつも通りに植物たちにはなしかける。
談笑に熱中していた植物たちが少し遅れて朝の挨拶を返した。
手前の方から水をあげていく。
ヒマワリの花がぼやいた。
「あぁ…美味しいお茶が飲みたい…」
「…お前、花だろ?お茶なんて飲んだら…」
「しおれるのいやー!!」
「わかってんなら言うなー!」
いつもの朝…だよ?
普通の朝の風景のはず…だよ?
こうして花達とたくさんおしゃべり(?)した後、食パンとサラダ(サラダのレタスとは会話しないように僕、頑張った!…毎日やるとさすがに疲れる。)で軽めに済ませた。
今日は天気がいいので(今は真夏!)じっとしていると干物になりそうな暑さから逃げるべく近所のデパートへとむかった。
そう、デパートに行くはずだった。
通りかかった公園の前、ふと…何の理由もなく僕は振り返ってしまった。
…状況を簡潔に説明しよう。
そこにいたのは…僕と身長が同じくらいの、よくありそうなブレザータイプの制服に身を包んだ髪の短い少女&白いワンピースを着た髪の長い少女、各一人づつが…宙に浮いていた。
髪の短い少女は手にしているファッション誌を、逆さまになってよんでいるため…その…す、スカートの中身が…水色が…しましまが…察してください。
「…退屈。なんかおもしろいことないかしらねぇ…メルカ?聞いてる?」しましま…もとい、短髪が口を開いた。
髪の長い少女はメルカというらしい。
「…あるよ…。おもしろいこと…。彼が…エメトのこと…見てる…」
短髪はエメトという名前らしい。
エメトが逆さま(しましま)のまま胸を張って、「やっと私達のことをが見えるようになったみたいね!!私達はあんたの守護天使よ。さぁ、崇め奉りなさい!!」宣言した。
…意味不明だよぅ〜!
「…ツッコミどころしかないんだが…とりあえず下着を見せつけるの…やめたら?」
僕はとりあえずエメトとか言う子に答えてみた。
「ってもどうせ見えてないし聞こえないんでしょ?それくらいわかって…えっ?…下着?……もしかして…本気で見えてるの?」
「いまさらー!?」 エメトはどうやらわかっていなかったらしい。
慌ててくるりと回って、真っ赤になりながらスカートを抑えるエメト。…おそすぎたけど…。
「ぱっ…パンツ…見た?」
「み…見てないよ!!…た、多分…」やっぱりここは優しい嘘をついてあげるべきだろう。
「…一番最近見た色は何色だった…?」
「み…水色のしまし…なん…うっ!」
「ばかぁー!!」
無表情にメルカが見つめる中で、僕はエメトの跳び蹴りを鳩尾にくらって… 気絶した。
天使って…ひとにさわれるんだ…。
鳩尾キックから約十分後、目をあけると…僕は公園のベンチに座っていた。
「なにがあったんだっけ……」
回想中回想中かいそ……思考停止中、思考停止中!
「夢であってほしいようなほしくないような…」
「夢にしときなさいよばかぁー!!」
後頭部に跳び蹴り再び…。
何はともあれ夢…じゃなかったらしい…しましま☆
「しましまゆーなぁ!!☆…もつけんなー!」
「言ってねーよ!!」
「言わんでもわかるわぁー!!」
コイツ…ニュー○イプか…!?
「エメト…墓穴…掘ってる…(笑)」
「(笑)…ってなによー!メルカもばかぁー!」
いよいよ全くもってメルカの性格がわからない。
ってか…「お前らどこの誰だー!!」
遅すぎる疑問点。
「えっへん!聞いて驚け、見て笑っ…ちゃだめか…。私達は日々あんたの平穏を守る、守護天使様よ!!」
胸…(?)をはってエメトが言い放った。
「その平穏が守護天使さまさまによって、今まさに崩れ去ったけどな…」
『(?)ってなぁにぃ?』ニコォッ☆byエメト。
…コイツマジでニュー○イプ適性あるんじゃないだろうか。
「ん〜、でもね〜」晴天の青空に向かって伸びをしながら、エメトは
「守護天使つってもねぇ…ふわふわ浮いてるだけで何もしないのよね〜…ハァ…飽きた」
爆弾発言。「ぜ…………」
「ぜ?」
頭の上に、ちょこんとかわいらしい、?マークを浮かべるエメト。
「前言撤回しやがれぇぇぇ!!」
「えぇぇぇぇぇっ!?ってか前言ってどれ!?」
「なぁにが【崇め奉りなさい】だ!!崇める理由が存在しねぇよ!!」
「…あぁ…そんな昔のことは忘れたわよ♪」
「ごまかしのネタが古すぎるわぁっ!!つーか…あぁ…って明らかに思い出したリアクションだろ!?」
「きっ、気にすんなー!!だいたいっ、年がら年中植物とお話ししてるような厨二病患者に言われたくないわよっ!!」
「あれは生まれつきの能力だって!守護天使なんだからそれくらいわかってるだろ!?」
「…うぁ…もう重症…手に負えない…(笑)」
「メルカさん…お願いだから(笑)ってゆーのやめてぇぇ!!(泣)地味に心が割れるからぁぁぁ!!」
さっきから世間さまの視線が痛い。
彼らには天使が…エメトたちが見えないのだろう。
つまり…端から見れば…僕はイタさMAXの厨二病少年。
こんな日常生活って…大丈夫なんだろうか…社会的に…orz。