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【完結済】ワナビー《出版を賭けたデスゲーム》【B-presents】  作者: ネームレス
【日曜日:Sunday】

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第27話 自己紹介 【日曜日:Sunday】

 「なんなんだね。そのワナビーとは?」


 三木元さんはSIMカードにつづきほんとうにワナビーって言葉を知らないんだろう。


 「そのむかし。ある民俗学者がワナビーという謎の言葉を求めて文明から隔離された村に潜入した。そこにはある因習があって……」


 「有名な小説のタイトルかね?」


 権藤さんの口元がみるみるうちに膨らんでいきついにぶわっと吹きだした。


 「か、門倉くん。ちゃんと教えてやれよ?」


 権藤さんがはじめて門倉さんの名前を呼んだ。

 でもまだ笑いを堪えている。

 

 「本当はどういう意味なのかね?」


 「簡単にいえば作家志望者のことを指す言葉です」


 当然、宮野さんだってワナビーのことくらい知ってるよな。

 宮野さんは今回も三木元さんに対して礼儀正しくワナビーの意味を伝えた。


 「それは一般人でも知っている言葉なのかね?」


 「ネットスラングなんかでは一般的ですのでたいていの人は知ってると思います。作家志望者の多くも知ってる言葉ですから。ワナビーは蔑称でもあり自分のことを控えめに言うときにも使います。意味の捉えかたはTPOによって人それぞれということになると思います。早い話、作家になりたい人のことですね」


  宮野さんの表現は的確だと思う。


 「俺はワナビーって言葉は作家になりたい願望をマイルドにしてくれるから助かってます。本気で作家になりたいけど一次で落ちてばっかりだからそこまで声を大にして言えないみたいな。ダメダメな部分をオブラートで包んでくれるお守りみたいな言葉です」


  熱く語ってしまった。


 「私もそれわかります。本気なんですけど。本気を悟られたくないみたいな気持ち、とか」


 弓木さんがこんなにしゃべったのはここにきてから初めてだ。

 物静かだけどこの娘にも秘めているものがあるんだろう。

 じゃなきゃ意図したわけじゃないけどあの苦いコーヒー飲んでこんなところまできてない。


 「私は恋愛小説をずっと書いてるんですけど。愛と殺意って同居できるんですよ」


 弓木さんって恋愛小説家志望なんだ。

 愛と殺意の同居って文学的だし恋愛小説において信念があるみたいだ。

 

 愛憎みたいな? 「001」はいないけど、八人とも作家になりたいって一心でここまできたんだよな。


 なんやかんやで八人それぞれ短編小説集を出して、そこから各個人で本を出版していくって方向にはならないか? 俺のこの考えは甘いか? 甘いんだろうな。

 こういうときって自分が自分がって他人を蹴落とさないと作家になんてなれないのかな? なんで自省してるんだろ俺。

 弓木さんの情熱に(ほだ)されたか。


 「気をとりなおして。ここに連れてこられたみんなも作家の夢を叶えにきたんだろ? ブックマンが提示してきた出版条件みた。すごいよね? 初版で一万部だってさ」


 門倉さんが話題を振ると、誰より早くそうだと回答したのが三木元さんだった。

 三木元さんもやっぱりワナビー(・・・・)なんだ。


 「僕らはいつも本気だってのに世の中がそれを認めないんだよ。じゃあまず僕から自己紹介させていただきます。008番、門倉清太、三十八歳。歴史小説家志望です」


 へー見かけによらない。

 いやだから作家を見た目で判断したらだめなんだよ。

 門倉さんって歴史小説を書くんだ。

 俺も歴史小説の短編を書いてみたことはあるけどまったく畑違いだったな。


 「僕は007番、宮野亮。推理小説志望の三十四歳」


 うすうす気づいてましたよ。

 冷静沈着、観察眼に優れ博識で知的。

 でしょうね、としか思いません。


 「つぎはきみなんかどうかな?」


 宮野さんが弓木さんを指名した。

 弓木さんのさっきの熱量を受けてのことかもしれない。


 「わ、わたしは二十二歳。003の弓木可憐と申します。恋愛小説を読むのが好

きで、書くのも恋愛小説一筋です」


 自発的に言ったとおり恋愛小説家志望。

 恋愛小説ってなんとなく小鳥遊さんのほうかと思ってた。

 いや、だから作家を見た目で判断したらだめなんだって、何回目だよ、俺。


 「おお、可憐ちゃんの口から本当の可憐(カレン)がきけるなんて」


 門倉さん頬が緩んでる。

 ほ、本性が漏れてる気がする。

 女好き? つぎは弓木さんの隣にいた俺が答えることにした。


 「002番の諸星健、三十一歳。ジャンルはノンジャンルで書きたいものを書くってスタンスです」


 「それって全方向書けるってことじゃん!」


 門倉さんが俺の腕をバシっと叩いた。

 

 「あ、ありがとうございます」


 褒められてると受け取っておこう。

 でも嬉しい。


 「優奈は小鳥遊優奈です。番号はこのとおり」


 小鳥遊さんは萌え袖のままつなぎの「005」の部分を引っ張って伸ばした。

 門倉さんが合いの手で優奈ちゃんと声をあげた。

 か、門倉さん……。


 「優奈はスポーツ小説を書いて応募してます」


 「へー優奈ちゃん。見かけによらずにスポーツ小説書くんだ。熱いねー」


 また門倉さんが舞い上がっている。


 「優奈は可憐ちゃんよりもみっつだけお姉さんの二十五歳です」


 マジ!? 弓木さんよりも年上だったのか……。

 やっぱり見かけじゃない。

 だからそう思ったの今日で何回目だよ!


 「004番。三木元隆之。七十一歳。純文学一筋」


 純文学か。

 純文学は売るのが大変だときくけど。

 三木元さんもまあ、予想の範疇ではあるな。


 「006さん。あなたは?」


 宮野さんは言いにくそうにしていた権藤さんに話題をふった。


 「いや、俺はいいよ。つぎいってくれ。つぎ」


 権藤さんは頑なまでに答えない。

 流れがすこし変わって雰囲気がわずかにピリついた気がした。


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