熱海!
こまちちゃんは、売れない漫画家さんが握りしめて手汗でペトペトになっている福引券を見て言った
「あー、それぇ、今日の夕方5時までだからぁ、早く引に行ったほうがいいですよぉ
ウチの店も商店街の加盟店に入っててぇ、こまちもガラガラ係やりましたぁ」
梨乃さんがパッと壁掛け時計を見た
四時五十分
「売れない漫画家さん、走れっ」
梨乃の男前な掛け声に、売れない漫画家さんは反射的にドアを飛び出し猛ダッシュした
福引のガラガラを回さなければ!
それが彼の使命なのだ!
売れない漫画家さんが走り抜けた後に、
ドアベルのカランコロンという余韻みたいな音が鳴り響く…
そして5分後
商店街にもカランコロンという祝福の鐘の音が鳴り響くことになるのである
⭐︎…⭐︎…⭐︎
「結構近いわねー、熱海」
梨乃さんは熱海駅に降り立った時に大きな声で言った
東京からだと新幹線なら1時間もかからない
「どうりで不倫旅行に使われるはずよね〜あはは」
周りにいたカップルが何組かビクッとした…かどうかは分からないが、梨乃さんは愉快そうに笑う
「おおお思ってもそーゆー下品なことは口に出さないでくださいよぉ、もう」
今回の王様、功労賞、要するに「商店街の福引で熱海温泉旅行を当てた」、売れない漫画家さんは焦った
「てかさ、超意外だったんだけど、アンタまだ25歳なんだって⁈」
梨乃さんは売れない漫画家さんの顔をマジマジ見る
推定年齢34歳ぐらいだと思っていたこの桜桃男は、なんとまだ25歳だった!のである!
なぜ分かったかというと、福引に当たった時に特賞なので住所氏名年齢を書かねばならず、
そこにバッチリ
25歳
と明記したからであった
「イイヨネ〜イイヨネ〜若いって」
半蔵さんは呑気に言った
イイヨネ〜とはつまり、還暦も過ぎると、若さを羨むというより、健康体が羨ましくなるのだ〜ということである
体は軽く、揚げ物平気で、目も霞まない、物忘れもない、アッチもコッチも100パー元気!
まさにワンダフルワールド!素晴らしきかな…
アラフィフ以降は首がもげるほど同意してくれるに違いない
さて、またまた登場人物の紹介を兼ねて(いちいち覚えてられないよねー)、
今回の熱海温泉旅行のメンツです↓
*****コウレイジャーとその他*****
◯梨乃 (なしの)…62歳、カフェ「さんぽがてら」の店長、紅一点、割と毒舌、必殺技
◯半蔵 (はんぞう)…60歳、最年少、お茶目な性格、庭師、必殺技(怪力)
◯秀治 (しゅうじ)…63歳、元教師、クール系、必殺技
◯三郎 (さぶろう)…61歳、おっとりデブ、よく寝るよく食う、黄色系、必殺技(スモークandスメル)
◯謎のイケおじ …高いスーツを着ている
◯売れない漫画家さん …推定年齢34歳だと思われたが実年齢は25歳
売れない漫画がソロソロ打ち切りになろうとしているヤバい立場
桜桃男らしい
こまちちゃんが好き
◯こまち …近所の花屋さん「レイニーレインボー」の一人娘「大角こまち」ちゃん、20歳
短大出たけどプー太郎ナウ、実家花屋の手伝いを気ままににやっている
低身長ちょいぽちゃで顔が可愛い系(メイクが上手い)、くるくるふわふわした髪、くりくりの瞳、低い鼻、
いわゆる“ちょうどいい”感じで、愛嬌と若さもプラスして今のところモテまくり無双している(ほぼコピペ)
*****
なぜ謎のイケおじとこまちちゃんまでご一緒かと言うと、話せば長くなるのだけど、
イケおじは「行ったことないので行きたかったし、温泉にスキーマー(宇宙怪物)が出るかもしれないので、謎の組織の経費で熱海に行くという強い意志」と、
こまちちゃんは「じじいとばばあと旅行なんて罰ゲームでしかないけど(ホントにこう言った)、不倫旅行してるカップルを観察したり花屋の手伝いをサボったりしたい」という理由からだった
ちなみにこまちちゃんの分は無理やり「謎の組織」から出した…なんかの口止め料らしい…なんやねん…
とにかく、以上6名は熱海という観光温泉地に降り立った
平日だと言うのに(福引旅行券は平日限定だった)、結構な人混みだ
駅前はタクシーやバスを待つ人でごった返している
休みの前の日とか、ものすごく混むだろうなぁと予想ができた
東京様から近い手頃な観光地は舐めてはいけない…肝に銘じておこう
「レンタカー借りたら地獄だったわね…」
梨乃さんが周りを観察しながら言った
人が多いし道路が狭くて坂ばかり
初見で運転するのは大変そうだ
「なるほどぉタクシーかバス移動が基本なんやな」
半蔵さんも納得
「こまちぃ、バス苦手なんですよねぇ、ぷんぷん」
こまちはタクシーが良い、タクシーじゃなきゃ嫌だ歩くのはもっと嫌だと言っている
秀治さんがスッと皆の前に立って言った
「まだ旅館のチェックインまでには時間があるし、どうしようかということだね
私の提案は、
熱海といえばココ!な
MOA美術館か、
アカオハーブアンドローズガーデン
のどちらかに行くってのはどうだろう?」
かなり調べてきてるな…秀治さんはヤレヤレ仕方ない、冷静なオレが怪物が出るがしれない熱海旅行についていってやるしかないかぁみたいな顔をしてたけど、かなり楽しみにして色々調べたんだなぁ
とその他の5人は思ったが、口には出さなかった
「ローズガーデンはぁ、多分季節外れなんでぇ、美術館の方にしませんかぁ?」
さすが花屋の看板娘こまちちゃん、花のことなら寺の小坊主のお経並みに自然に覚えている
ちなみにバラのシーズンは5月前後じゃなかろうか
「決定〜!じゃあ美術館ね!」
デブの三郎さんはさっそく美術館で食べられそうなグルメを調べ始めた
「昼飯がてらお茶しようよ、お茶」
昼飯かお茶かどっちかにしたほうが良くないか
「バスがけっこう出てるみたいよ!乗っちゃいましょ」
少し歩いたところにバス停がある
19分で320円…タクシー2台よりも安いと踏んだ梨乃さんは、不満そうなこまちちゃんを引っ張ってちょうどやってきたバスに詰め込んだ
バスは混んでいたので5人はそれぞれ空いてる席にバラバラに座った
そんな中で梨乃さんは特等席を引き当てる!
なんと、通路を挟んだ隣の席に
不倫カップル
らしき2人が座ってるのだ!
「これは…何かある予感!」
宇宙規模の怪物ではなく、ありふれた不倫カップルに興味津々の梨乃さんであった…!
そろそろ聞こえづらくなってきた耳に全神経を集中させてカップルの会話を盗み聞く
この後、このカップルのおかげでめっちゃくちゃ大変なことになるとも知らずに…ね!
お久しぶりのコウレイジャーです
いつもより少し長め!お楽しみいただけたら嬉しいです(^人^)




