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商店街のご近所さん  作者: クロクマせんぱい
8/20

第8話:配達員の秘密

夜の空中商店街、静かな配達所で交わされる“特別な依頼”。

届け先は、高橋家。そして、箱にはまたあのシンボルが――?


「配達員たちは、知らないうちに何かを運んでいるのかもしれない」

浮かび上がる、空中商店街の昔の記録。

このシンボル、一体何を意味しているのか……?


さて、謎はさらに深まるぞ!

夜の空中商店街は、昼間の賑やかさとは違い、どこか幻想的な雰囲気に包まれていた。

ネオンの光がほのかに揺れ、店じまいをする店員たちの姿が見える。


「ふう……今日も忙しかったな」


配達員のたかしは、配達バッグを肩にかけながら、商店街の端にある休憩所へ向かった。


「そろそろ帰るか……」


そう思った時、ふと自分のキャップに刻まれた小さなシンボルが目に入った。


「……やっぱり、最近よく見るよな」


配達用の伝票、注文パネル、そして配送ボックス。

このマークは、いつの間にか街のあちこちに現れるようになっていた。


(このシンボル、一体なんなんだ……?)


たかしは少し考え込んだ。



第一部:深夜の特別配達

「たかし君!」


突然、背後から声がかかった。


「おお、親方!」


そこに立っていたのは、空中商店街の配送責任者であり、ベテラン配達員の親方・佐々木だった。


「ちょっと頼みたいことがあるんだが……特別配達、行ってくれないか?」


「特別配達?」


たかしは驚いた。


「ええ、今夜だけの特別な配送だ」


「でも、もう営業時間は終わりじゃ?」


佐々木はニヤリと笑う。


「だから特別なんだよ」


たかしは戸惑いながらも、佐々木から手渡された黒い箱を見つめた。


(この箱……他の配達と違う……)


箱の隅には、またしても例のシンボルが刻まれていた。



第二部:シンボルの刻まれた箱

たかしは、指定された場所へ向かうため、空中通路を駆け抜けた。


「届け先は……高橋家?」


老夫婦が暮らす高橋家は、昔ながらの注文方法を大切にしている家だった。

特別な配送があるとは、珍しい。


(なんでこの家に……?)


たかしが箱を持って窓をノックすると、中から義一ぎいちが顔を出した。


「おお、来たか」


「えっ、おじいさん、この配達知ってたんですか?」


「まあな……さあ、入れ」


義一は箱を慎重に受け取ると、そっと室内に運び込んだ。


「実はな、たかし君。このマーク……昔からこの街に伝わる“あるもの”を示しているんだ」


「え……?」


たかしは驚いて義一を見た。


「何か知ってるんですか?」


「さあな……でも、この箱を受け取るのは、決まった家だけなんだ」


たかしはますます混乱した。


「何が入ってるんです?」


「それは……」


義一が箱の蓋をゆっくり開けると、中には古い帳簿と木製の札が入っていた。


「こ、これは?」


「この街の昔の商店街に関する記録だよ」


「記録……?」


「今の空中商店街ができる前、ここには特別な商人たちがいてな。彼らが使っていた“印”が、このシンボルの元になったんじゃないかって話さ」


たかしは息をのんだ。



第三部:配達員だけが知る秘密

「たかし君、お前、このマークを最近よく見るようになったって言ってただろう?」


義一が静かに聞く。


「はい……」


「実は、俺もずっと気になっててな。どうやら、この街で働いてる配達員たちは、何かしらこのマークの影響を受けているらしい」


「影響……?」


「配達用の伝票や帽子、配送センターの古い地図にまで、このマークが入ってるんだよ」


「なんで……?」


「さあな。ただ、昔の商人たちが、この商店街を守るために作った“何か”が、今でも生き続けているのかもしれん」


たかしは、帽子を脱ぎ、そこに刻まれたシンボルを指でなぞった。


「じゃあ、このマークって……」


「俺たち配達員にとって、何か大切な意味を持ってるのかもな」


義一は穏やかに笑った。



深夜、たかしは配達所に戻り、静かに空を見上げた。


(このマーク……もしかしたら、俺たちが気づいていない何かを教えてくれてるのかもしれない)


遠くで空中商店街の明かりが、やさしく揺れていた。


注文パネルの片隅では、シンボルがいつもよりゆっくりと光っていた――。

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