第5話:高橋家の懐かしの注文
昔ながらの朝ごはんを作るため、高橋家が注文したのは懐かしい食材たち。
けれど、届いた箱にはまたあのシンボルが……?
おばあちゃんの古い日記に残された、不思議な記録。
それは“空中商店街の守り神”に関係しているかも……?
さて、この謎、ますます面白くなってきたぞ!
空中商店街の朝は、静かで穏やかだった。
屋根の上に広がる市場はいつもどおり活気に満ちているが、地上の住宅街はまだ朝の眠気を残しているようだった。
そんな中、高橋家の注文窓が静かに開く。
「よし、今日の注文は……」
高橋家の主人・義一は、手元の古びたメモ帳を見つめていた。
「おじいちゃん、何を注文するの?」
孫の翔太が興味津々で覗き込む。
「昔ながらの朝食の材料さ。おばあちゃんと一緒に作るんだよ」
義一の妻・静江は、優しく微笑みながらお茶をすする。
「ふふ、おじいちゃんのこだわりね」
そう言いながら、静江は窓の外を見上げた。
そこには、長年変わらない空中商店街の風景が広がっていた。
(でも、最近何かが変わり始めている……)
彼女の視線の先、注文パネルの端にあのシンボルが小さく光っていた。
第一部:懐かしのレシピ
「今日は、昔ながらの和朝食を作ろうと思ってな」
義一はパネルを操作しながら言った。
「ふりかけに、焼き魚に、味噌汁……」
「えー、なんか地味じゃない?」
翔太が少し退屈そうな顔をする。
「ばかやろう、これが日本の伝統の味なんだぞ!」
義一は孫の頭をくしゃくしゃと撫でながら、懐かしそうに笑う。
「おばあちゃん、昔はこういう朝ごはんが当たり前だったんだよね?」
「ええ、そうね。でも、こうやって注文窓で簡単に材料が手に入るのは便利になったわ」
「でも、昔は商店街まで歩いて買いに行ったんだろ?」
「そうよ。お店の人とおしゃべりしながらね」
「そっちのほうが楽しかったかもな」
「今は観光客ばかりで混雑してるしね」
義一は注文を確定しながら、ふと呟いた。
(時代は変わった……でも、大切なものは変わらないはずだ)
第二部:届けられた箱と謎のシンボル
「お待たせしましたー!」
配達員のたかしが、いつものように元気よく窓の向こうから顔を出した。
「おじいちゃん、届いたよ!」
翔太が嬉しそうに箱を受け取る。
「おう、ご苦労さん」
義一が箱を開けると、中には綺麗に梱包された食材が入っていた。
「うん、いい魚だ」
義一は満足げに頷いた。
しかし、その横で静江が箱の隅をじっと見つめている。
「このマーク……」
「え?」
翔太も覗き込むと、そこにはいつもの謎のシンボルがあった。
「またこれか……」
「やっぱり最近よく見かけるよな?」
義一も腕を組んで考え込む。
「そうね……でも、このマーク、どこかで見たような気がするのよ」
静江は少し考えたあと、ふと席を立った。
「ちょっと待ってね」
第三部:古い日記の発見
静江は、押入れの奥から古びた日記を取り出した。
「これは?」
翔太が興味津々で覗き込む。
「昔、おじいちゃんと若い頃につけていた日記よ」
「へえ!」
静江がページをめくると、あるページに目が止まった。
「……あった」
そこには、シンボルとよく似た模様が描かれていた。
「これは……」
「ばあさん、これは何のマークだ?」
義一も顔を寄せる。
「昔、この商店街には“守り神”のような存在がいたって聞いたことがあるの」
「守り神?」
翔太が首を傾げる。
「ええ。このマークは、その象徴だったんじゃないかしら……」
「ふーん……」
義一は静かに箱のマークを指でなぞる。
「まさか、今でもこのマークが使われてるとはな……」
「うん、これ、みちこちゃんたちにも教えてあげようよ!」
翔太がわくわくした様子で言う。
「そうだな……もしかしたら、もっと何か分かるかもしれん」
こうして、高橋家もまた“シンボルの謎”に関わり始めた。
夕方、義一と翔太は庭で一息ついていた。
「なあ、おじいちゃん」
「なんだ?」
「昔ながらの朝ごはん、意外と美味しかったよ!」
「だろう?」
義一は満足げに頷く。
「伝統ってのはな、残していくから意味があるんだ」
「うん!」
その頃、静江は日記を見ながら、空中商店街を眺めていた。
(あのマークは、一体何を意味しているのかしら……)
静かに風が吹き抜け、注文窓の向こうに、いつもの活気ある商店街が見えていた――。