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商店街のご近所さん  作者: クロクマせんぱい
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第1話 二階の窓とほのぼのショッピング

二階の窓から買い物できる街、空中商店街。

今日もいつもの注文……のはずが、ちょっと気になる“謎のシンボル”を発見!

これって何? もしかして、大きな変化の前触れ……?


――さて、今日もひとつ、新しい発見を!

薄曇りの空の下、健一の家の二階にある注文窓が、今日も静かに開いていた。

街の上に広がる空中商店街からの柔らかな光が差し込み、室内をほのかに照らしている。


「みちこ、今日の注文はどうする?」


父の健一が、キッチンで湯気の立つマグカップを片手に、のんびりと声をかけた。


「うーん、お母さんが野菜が足りないって言ってたから、サラダ用の野菜セットかな?」


みちこは注文パネルに触れながら、画面に表示された色とりどりのアイコンを眺めた。

その隅には、どこかで見たことのある小さなシンボルが揺らいでいる。


「これ、なんだろう?」


指先で触れてみるが、特に反応はない。


外からは、今日も空中商店街を忙しなく行き交う配達員たちの声が聞こえてくる。

この街の日常が、また静かに始まろうとしていた。



第一部:日常の注文

「いらっしゃいませ!」


注文を確定した直後、窓の向こうから明るい声が響く。


空中商店街の配達員が、軽やかに手を振っていた。

彼は小さなリュックを背負い、肩には注文伝票の束を抱えている。


「今日も元気だね、たかし君」


健一が笑いかけると、配達員のたかしは頷いた。


「ええ、今日は特に忙しくて! ほら、雨が降りそうだから、みんな早めに注文してるんですよ」


その言葉に、みちこが窓の外を見上げる。

確かに、雲が少し重たくなっている気がした。


「でも、便利だよね。この注文窓があるおかげで、いちいち買い物に行かなくても済むし!」


みちこが嬉しそうに言うと、たかしが小さく笑う。


「そうですね。でも、最近この辺りでも通路を作ろうって話が出てるみたいですよ」


「通路?」


健一が驚いたように眉を上げる。


「ええ、直接空中商店街まで行けるように、各家庭が繋げるみたいで。でも、規格がないからみんな手探りで……」


「へぇ……」


みちこは興味津々といった様子で頷いた。



第二部:謎のシンボル

注文の品が届いたあと、みちこはダイニングテーブルの上に並べられた野菜セットの箱をじっと見つめた。


「お母さん、見て! ここにもある!」


「え?」


美佐子が顔を上げると、みちこは箱の端を指さしていた。

そこには、小さくて細かなシンボルが刻まれている。


「なんだろうねえ、これ。最近よく見かけるけど……」


「さっき、注文パネルの隅にもあったんだよ」


美佐子は少し考え込みながら、箱を手に取った。


「もしかしたら、お店のマークか何かじゃない?」


「でも、うちだけじゃなくて、ほかの家の注文品にもあるみたいよ」


「へえ……」


健一も興味を持ったように箱を覗き込んだ。


「ちょっと気になるね。でもまあ、特に問題があるわけじゃないなら……」


そう言って笑う健一に、みちこは少し不満そうに頬を膨らませた。


「私は気になる! もっと調べてみる!」



第三部:通路の噂

夕方、外の風が少し強くなり始めるころ、隣の山田家から話し声が聞こえてきた。


「なあ、うちも通路を作った方がいいと思わないか?」


それは、山田家の父親の声だった。


「そうねえ、あれば便利かもしれないけど、ちゃんと安全にできるのかしら?」


母親の慎重な声が続く。


「でも、みんな作り始めてるって聞いたよ。うちも試してみない?」


「そうねえ……」


会話を聞いていたみちこは、窓の外をじっと見つめた。


(もし、うちにも通路ができたら……?)



夜になり、街の明かりが静かに灯るころ、みちこはベッドの上で目を輝かせていた。


「お父さん、お母さん、うちも通路を作らない?」


そう尋ねると、健一と美佐子は顔を見合わせて苦笑した。


「まあ、安全のことも考えないといけないからなあ……」


「それに、作るのは大変そうよ?」


「うーん……」


みちこは少し残念そうに唇を尖らせたが、すぐに笑顔を取り戻した。


「じゃあ、まずはもっと調べる! 明日、配達員さんに聞いてみようっと!」


こうして、みちこの小さな探求心と、街の住民たちの新たな動きが、少しずつ始まろうとしていた。


夜空の下、空中商店街の灯りが、静かに瞬いている。

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