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そのまま家の中を見て回っていると、色々なものを見た。
だが、その時、後ろからうなり声が聞こえてきたのだった。
僕はそれが何なのかはすぐにわかった。
ちょうどキッチンにいたのは運がよかったようだ。
目の前にあったナイフを取り上げると、後ろに振り切った。
グサリ、という感触を感じると共に、ドサリ。地面へ倒れる音が聞こえてきた。
後ろの地面を見ると、一人の男性が倒れていた。
だが、ゾンビのような姿になっていた。
皮膚はなぜか苔が生えていて、ところどころ皮膚も見えていた。
まるでとろけ落ちたかのようだ。
しかも、目は真っ白になっていた。
爪はちゃんとあったが、ところどころ傷跡が残っていた。
服は普通に着てあった。
だが、そこには赤い血が染みついていた。
まだ新しい。
どうやらここら辺に残っていた血はこのゾンビが人間を食べた時にできた物のようだ。
俺はそのナイフをとると、カバーを付けた。
ちょうどいいナイフだったので、持っていくことにした。
今はサバイバルだ。
何でも使えるものは使いたい。
窓を開けて塀を上ると、一瞬だけ固まってしまった。
そこはまるでゾンビタウンのようだった。
人が全員ゾンビになっているか、地面で倒れているだけだった。
もう生きた者はいそうにない。
僕は塀の上を駆け出した。
ゾンビは追ってきたが、角で止まってしまった。
どうやら兵を上る能力を持っていないようだ。
何とか逃げきることができ、一つの家に入った。
そこでも何かを見つけることができると思ったからだ。
僕は中に入ると、そこにいたゾンビに全くびっくりはしなかった。
いるとは予想していたからだ。
なので、容赦なく棒を振り下ろして、その後にはナイフで仕上げた。
二階に上がると、一つの部屋に入った。
その中は女の子の部屋だった。
僕はその中を回った。
特に不思議なものはなかったのでそのまま出ていこうとした。
ちょうどその時、音が聞こえてきた。
それは人の声だった。
だが、ゾンビのようなうなり声ではなかった。
誰かの鳴き声だった。
縦に長いタンスを開くと、その中には女の子がいた。
僕はナイフをしまうと、しゃがみこんだ。
彼女はまだ食学生だろうか。震えている。
別に助ける気はなかったが、ここを住まいにしたいと思っていた僕には少し邪魔だった。
「どうしたんだ、ここでいて」僕はほかの人と話すのが苦手だ。
何を言ったらいいのかがわからなかった。
彼女はふと顔を上げると、僕の顔を見てきた。
それから少しの沈黙の後、彼女は急に僕へと飛び込んできた。
「お兄ちゃん!」僕は目を丸くした。
どういうことかがわからない。
この彼女のことは初めて会った。
もしかすると彼女の兄が僕に似ているのかもしれない。
「一つ言っておくが、僕はお前の兄ではないからな」俺はとりあえず、すべてのドアに鍵をかけた。
庭にたどり着く大きな窓にはタンスを引きずっていった。
これでこの中は安全だ。
さっきいたしたいとゾンビの死体は外に置いておいた。
だが、彼女はそのままにしておいた。
まるでこのことを予測していたかのように、冷蔵庫の中には食べ物があったし、棚の中にはたくさんの缶詰が入っていた。
これで数日は過ごせるだろう。
だが、それ以外にもそれからのことが問題になっていた。
彼女はそこまで食べそうにないので、問題はないだろう。
だが、2人だといろいろと調達が大変だ。
そこで僕が考えたのは、たった一つのことだった。
食べ物をためるということだった。
その夜になって気づいたことだが、夜になるとゾンビはもっと活発になる。
だが、次の朝になれば、なぜかゾンビが一匹もいなかった。
どうやら一日目だけ、ポータルがあったのでゾンビは大丈夫だったが、次の日からは太陽に当たると消え、太陽が沈んでいくとまた現れるようだ。
なので、昼間の間に食べ物は調達しておきたい。
彼女は邪魔になるので、家に残すことにした。
彼女とはそのことをちゃんと話していたので、大丈夫だろう。
夜になれば家の中に入り、ドアにカギを書ければ大丈夫だ。
それから数日間は平和だった。夜になれば外からうなり声などが聞こえてきたが、中に入ってくる様子もなかった。
夜にも少し外に出た。
危険だが、試してみることに悪いことはないだろう。
死ねば死んだということでゲームオーバー、もしも死ななければ有力な情報を手に入れることができたということだ。
そのことでわかったのは、ゾンビは目の前に人が現れるまで追ってこないということだ。
しかも、夜の0時に近ければ近いほど素早くなるということだ。
なぜそれが分かったかというと、二階の窓から遠くにかすかに見える大通りを見ていると、普通にわかったからだ。
それぐらいのことはしておかないといけない。
身の安全のためだ。
あのポータルが現れてから、自分の人生は、今のことを考えることで精いっぱいになってしまった。
だが、この生活はいつか乱れるとはわかっていた。そして、それがいつ起きてもおかしくないということも。