一話 欠けた月の夜に 1-3 ~夜緒~
前回言ったように短くしようと思いましたが、残念ながらどうしても長くなってしまいましたorz
なので、丁度三つに分けることができて、尚且つ三人それぞれの視点で同じ時間枠を書いたものなので、三日間連続で投稿したいと思います。
明るい茶髪のポニーテイルが見えた。
逃げるように駆けていくその姿は何かから逃げるように必死で、その『何か』が自然と自分の事だと悟るのは考えるよりも直ぐに答えが出た。
無気力にガードレールに背中を預け、自分の前髪を摘んで月明かりに照らしてみる。
――白い、髪の毛だ。
染めている訳でもなく、歳を取ったからという理由でもない。自然とこの色になり、黒髪に戻る気配も訪れない。そして、更に普通の人間と違うのは血のように赤い瞳。
両方とも色自体は気にしてはいないが、周りから見られる好奇の視線や避けられることは流石に気にする。恐ろしい、忌むべき存在なのだろう。
だが、そんな思考に至ったとき首を横に振り、自らの考えを否定する。
髪の色が黒色で、瞳の色も同色だったとしても普通の人間では無い事には変わりない。
空を見上げる。暗くて、都会では見つけづらい星の輝きや、世界を跨ぐ飛行機の残す明かりの中でも、一番の輝きを放つ月。
妖しく、怪しく、赤い輝きを放つ欠けた月、欠月。
人間の目には映ることのないその輝きは、嘲笑うかのように堂々と輝いて、暗闇の世界を照らし続けている。
照らす、否暗闇を巻き起こす存在。――本当に恐れるべきなのは欠月、そして――月獣の存在だ。
自らの使命を再確認して、ガードレールから背中を離す。
「まずは、姉さんがどこに行ったか探さないと……」
そして黒衣の騎士団、夜緒はその後、少女の駆けていった方向から聞きなれた重苦しい銃声を耳にすると、急いで駆けていった。