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さて、どうしよう

 廟の奥にこんな場所があることを、碧玉は初めて知った。


 風の流れる方向へ向かえば、柔らかな光に包まれた空間があった。

 中庭を囲むようにして房を配した造りは、よくある四合院だ。神様のおわす場所としてはこじんまりとした大きさだが、一人二人が住むには十分な広さがある。


「知らなくて当然のことだ」


 驚いて辺りを見渡している碧玉の隣で、三秋は説明する。


「これは私の住まいだ。人間の目に映るはずがない」


「どうしてですか?」


「私が見えないのと同じ理由だ。人間というものは自分が見たいものだけが見えるようにできている」


 正堂から房に移動しながら話は続く。


「理解できないものを目にすれば混乱する。無理に見てしまってはそれこそ目の毒だ、精神を損ねてしまうだろう」


「でも、今わたしは見ることができていますよ」


「そなたの目は特別だし、なによりも今私と共にあるからな」


 そう言われて、頬が熱くなる。手を取ったときそれなりに決意したつもりだったが、今更ながらに恥ずかしくなる。

 伴侶として迎え入れよう。その意味を改めて噛み締める。

 神様という存在が具体的にどんなものか、今まで考えたことがなかった。廟に通って祈りをささげたことならある。だが神様本人と会ったのはこれが初めてだ。


「そうは見えなかったのだろう」


 客間で茶を振舞われながらそう言われて、碧玉は赤面した。品の良い青年としか思えなかったのは事実だ。

 神様というものはもっと神々しいものだと思っていた。目にすることもできないくらい眩しくキラキラとしたもので、もっと多くから傅かれるのではないかと。

 碧玉は耳を澄ませた。房内にはなんの気配もない。


「この廟にそんな余裕はない」


 神様も苦笑するのだと初めて知った。


「なにせ稼ぎが少ない」


「え」


「神も金がいる。紙銭とはそういうものだ」


 三秋はそう言って腕を組んだ。


「人々から敬われ、祈られるだけの働きをして初めて稼ぎが生じる。神とはそういう存在だ。働かなければ当然誰も参らないのだから稼ぎもなくなる。まあ霞を食べていればいいのだから飢えることはないがな」


 しかし、と彼は言葉を区切って碧玉を見た。


「そなたはそうはいくまい」


 応じるように碧玉の腹が鳴った。神に仕えることになったとはいえ、自分はまだ人間なのだ。食べなければならないし飲まなければならない。


「まずは、そなたを養うためにも私は働かなければならぬな」


 碧玉は啞然とするしかなかった。まさか神様の元で苦労することになるとは思わなかった。



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