【第8片】感情を描いてみよう
どんなきもち?
詩のテーマにはいろいろあります。
そのなかでも。やはり「描きたい」というきもちにさせるものは、なんらかの感情であることが多いと思います。
嬉しい、悲しい、寂しい、愛しい。
妬ましいに、煩わしい、なんてのもありますね。
テーマというには、もっと具体的なもののばあいもあるでしょうが。今回は。
大雑把に、その感情じたいをテーマに設定し、それをどう描くか考えてみましょう。
テーマは「寂しい」です。
① そのまま描く
『寂しい』
寂しい ものすごく寂しい
ものすごく寂しいんだよ
ああ もう 寂しいったらありゃしない
ねえ ちゃんと聞いてる?
わたし ものっすごく 寂しいんだってば!
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
そのまま(?)描いてみました。
どうですか?「詩」になってますか?
——なってないとは、思いませんが。
でも、これじゃあ。
ただ寂しいのがわかるだけで、その寂しさがどんなものなのか、ぜんぜんわかりません。
もちろん、それを狙った作品もあるのでしょう。
漠然とした感情だけを、描きつけたい。
そんな衝動もあることと思います。
ですが「描いてみよう」に、それはちょっとそぐわない気がします(苦笑)
「描きたい」と思える感情を、テーマの例にあげた以上。それは、あるていど具体性をもった感情に設定したいところです。
② 感情をくわしく描く
『ものすごく寂しい』
寂しい ものすごく寂しい
ひょっとしたら
私は世界一寂しい人間かもしれない
そのくらい寂しいんだけど
こんな寂しさは だれかに話しても
きっと だれひとり理解できないよ
そのくらい寂しいんだ
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
どのくらい寂しいのか、描いてみました。
もっと、具体的に
・なかみのない枕カバーになりそうなくらい寂しい
・切符を買って満員電車に乗りたいくらい寂しい
なんてのでも、いいかもしれません。
これならテーマである「寂しさ」が、どんな寂しさなのか、ちょっとだけわかったんじゃありませんか?
③ 感情の原因を描く
『わかってもらえなくて寂しい』
わたしのひらめきを わかってくれるひとはいない
そのきらめきで ひとみを輝かせてくれるひとはいない
がっかりよりも もっとつらい
わたしひらめきを あなたのひとみのきらめきで
ともにしてくれるひとなんて どこにもいないんだ
それって すごく寂しいことだと思う
「輪ゴム」のことをまちがえて
「和ゴム」ってかいちゃったら
「なごむ」みたいで ほんわかするって
どうしてわかってくれないんだろう?
それってすごく寂しいよ
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
どうして、寂しいのか、原因を描いてみました。
原因に共感できれば、感情移入もしてもらいやすくなるはずです。共感できなければ——まあ、それでも原因がわかることで、感情への理解が深まることでしょう(笑)
④ 感情からの展開を描く
『寂しいから寂しくなくした』
寂しいって ひとりで泣くのに疲れたから
寂しくなくなることにした
ねこのぬいぐるみを買ってきて
へんてこりんな名前をつけた
可愛い耳を じぶんのくちびる越しにあまがみしたり
可愛いおひげを 指ではじいたり
可愛いしっぽを うねうねしたり
へんてこりんな名前をつけられた
可愛いねこのぬいぐるみ!
きみのおかげで わたしは寂しくなくなったよ
ありがとう
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
感情が生まれた原因をではなく、むしろ感情を原因として、どんな展開からどんな結果がうまれたかを描きます。
時系列でいえば、③と逆の部分を描くわけです。
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さて、こんなふうに。
ある感情についてとりあえず、描いてみました。
どうでしょう。
描きたいものとは、まだかけ離れているかもしれませんが。
それとなく、詩っぽいものは、描けそうな気がしませんか?
少なくとも。詩に描きたいと思える感情を、とりあえず描いてみることくらいは、できるんじゃないかと思います。
なら、まずはそこから。
詩に描きたいと思える感情を、とりあえず描く。
それを「詩を描く」ことの第一歩にしてみませんか?
単純で技巧的でない反面、シンプルでわかりやすく。
読むひとに、伝わりやすいことと思います(ここに、テキトーに描かれた詩もどきが、そう評価できるかはさておき)。
あなたの胸のなかにも、なんらかの感情、もてあましているのかもしれません。
ならば、ぜひ描いて、私たちにも読ませてください。
それはつまり、だれかがあなたの感情に触れるということ。
このことが叶っただけでも、詩を描いてみてよかったと思えるひとは少なからずいるはずですから。
私、こんな詩を「作品」としては描きませんけど(笑)