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9/23

【第8片】感情を描いてみよう

 どんなきもち?

 詩のテーマにはいろいろあります。

 そのなかでも。やはり「描きたい」というきもちにさせるものは、なんらかの感情であることが多いと思います。


 嬉しい、悲しい、(さび)しい、(いと)しい。

 (ねた)ましいに、(わずら)わしい、なんてのもありますね。


 テーマというには、もっと具体的なもののばあいもあるでしょうが。今回は。


 大雑把に、その感情じたいをテーマに設定し、それをどう描くか考えてみましょう。


 テーマは「(さび)しい」です。


① そのまま描く


(さび)しい』


 (さび)しい ものすごく(さび)しい

 ものすごく(さび)しいんだよ

 ああ もう (さび)しいったらありゃしない

 ねえ ちゃんと聞いてる?

 わたし ものっすごく (さび)しいんだってば!


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 そのまま(?)描いてみました。


 どうですか?「詩」になってますか?

 ——なってないとは、思いませんが。

 でも、これじゃあ。

 ただ(さび)しいのがわかるだけで、その(さび)しさがどんなものなのか、ぜんぜんわかりません。


 もちろん、それを狙った作品もあるのでしょう。

 漠然とした感情だけを、描きつけたい。

 そんな衝動もあることと思います。


 ですが「描いてみよう」に、それはちょっとそぐわない気がします(苦笑)


「描きたい」と思える感情を、テーマの例にあげた以上。それは、あるていど具体性をもった感情に設定したいところです。



② 感情をくわしく描く


『ものすごく(さび)しい』


 (さび)しい ものすごく(さび)しい

 ひょっとしたら

 私は世界一(さび)しい人間かもしれない

 そのくらい(さび)しいんだけど

 こんな(さび)しさは だれかに話しても

 きっと だれひとり理解できないよ

 そのくらい(さび)しいんだ


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 どのくらい(さび)しいのか、描いてみました。

 もっと、具体的に


・なかみのない枕カバーになりそうなくらい(さび)しい

・切符を買って満員電車に乗りたいくらい(さび)しい


なんてのでも、いいかもしれません。


 これならテーマである「(さび)しさ」が、どんな(さび)しさなのか、ちょっとだけわかったんじゃありませんか?



③ 感情の原因を描く


『わかってもらえなくて(さび)しい』


 わたしのひらめきを わかってくれるひとはいない

 そのきらめきで ひとみを輝かせてくれるひとはいない

 がっかりよりも もっとつらい

 わたしひらめきを あなたのひとみのきらめきで

 ともにしてくれるひとなんて どこにもいないんだ

 それって すごく(さび)しいことだと思う

「輪ゴム」のことをまちがえて

「和ゴム」ってかいちゃったら

「なごむ」みたいで ほんわかするって

 どうしてわかってくれないんだろう?

 それってすごく(さび)しいよ


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 どうして、(さび)しいのか、原因を描いてみました。

 原因に共感できれば、感情移入もしてもらいやすくなるはずです。共感できなければ——まあ、それでも原因がわかることで、感情への理解が深まることでしょう(笑)



④ 感情からの展開を描く


(さび)しいから(さび)しくなくした』


 (さび)しいって ひとりで泣くのに疲れたから

 (さび)しくなくなることにした

 ねこのぬいぐるみを買ってきて

 へんてこりんな名前をつけた

 可愛い耳を じぶんのくちびる越しにあまがみしたり

 可愛いおひげを 指ではじいたり

 可愛いしっぽを うねうねしたり

 へんてこりんな名前をつけられた

 可愛いねこのぬいぐるみ!

 きみのおかげで わたしは(さび)しくなくなったよ

 ありがとう


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 感情が生まれた原因をではなく、むしろ感情を原因として、どんな展開からどんな結果がうまれたかを描きます。

 時系列でいえば、③と逆の部分を描くわけです。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 さて、こんなふうに。

 ある感情についてとりあえず、描いてみました。

 どうでしょう。

 描きたいものとは、まだかけ離れているかもしれませんが。

 それとなく、詩っぽいものは、描けそうな気がしませんか?


 少なくとも。詩に描きたいと思える感情を、とりあえず描いてみることくらいは、できるんじゃないかと思います。


 なら、まずはそこから。


 詩に描きたいと思える感情を、とりあえず描く。


 それを「詩を描く」ことの第一歩にしてみませんか?


 単純で技巧的でない反面、シンプルでわかりやすく。

 読むひとに、伝わりやすいことと思います(ここに、テキトーに描かれた詩もどきが、そう評価できるかはさておき)。


 あなたの胸のなかにも、なんらかの感情、もてあましているのかもしれません。


 ならば、ぜひ描いて、私たちにも読ませてください。


 それはつまり、だれかがあなたの感情に触れるということ。


 このことが叶っただけでも、詩を描いてみてよかったと思えるひとは少なからずいるはずですから。

 私、こんな詩を「作品」としては描きませんけど(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごい。書き方の本はたくさんありますが、わかりやすい、と思いました。テンポよく、しっかりとした文に感じます。 [気になる点] 最後の一行が気になりました。作品は、そうではないということで…
[一言]  ものすごくがんばれば『切符を買って満員電車に乗りたいくらい寂しい』は出てくるかもしれない。  でもどうがんばっても『なかみのない枕カバーになりそうなくらい寂しい』は出てこない。  これ…
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