【第16片】縦の構成/横の構成
「縦」と「横」。
ふたつの構成。
詩を読んでいくとき。
横描きなら上の行から下の行、縦描きなら右の行から左の行へと。順番に読んでいきます。
とすると。
当然のことながら、詩も、はじめからおわりへと、読む順を念頭に構成すべきでしょう。
もちろん、倒置や転換、あるいは分岐など、一本線でない描きかたもします。
それでも、読む順。詩のはじめからおわりまでの、おおきな筋を描くように構成していくもののはずですね。
起承転結でいえば。
・結 起 承 転:結論をさきに、あとから解説
・起 承 結1 転 結2:順接と逆接の2パターンに分岐
・承 転 結 起:論じるのをさきにやっといて、発端となる例示をあとから提出
など、いろいろなパターンが考えられますが。
起/承/転/結の順番は、組み換えたとしても。
読む順番は変わらず、詩のはじめからおわりまでだから。その順で「縦」に構成せねばなりません。
そして、この「縦」の一本の筋だけが、詩の「構成」ではないときがあります。
1番/2番のある歌詞だと、それぞれ対応する描きかたをしていれば、それは顕著になりますが。
自由詩でも、その数行がほかの数行と対応するような部分が存在するとき。このばあいも、もうひとつの「構成」が重要になるのです。
「太陽とリンゴ」
リンゴと間違えて太陽をかじったら
やけどするから気をつけたほうがいい
まるかじりはやめて皮を剥こうって
太陽の皮を剥いたら
いったいどんな実が顔を出すのかなんて
知りたい気もするが
怖くて知りたくない気もする【起】
でっかい太陽は 重力に逆らって
東の海からのぼってくるけど
やがて力尽きて
西の海へと沈んでく【承1】
ヘイ! 太陽さんよ
そいつはちょっとばかり だらしないぜ
あいつのことを ちょっと見ておくれよ【転】
ちっぽけなリンゴは 重力に逆らって
木の枝からぶらさがってるけど
やがてもぎとられて
大地のうえをころがってく【承2】
どうだい 太陽さん?
あんたがとっとと力尽きて
沈んでっちまうもんだから リンゴのやつも
ちっぽけな自分への無力感から
重力に逆らいきれず 屈しちまう
だからよ 太陽さん!
でっかいあんたが
ちっぽけなリンゴに勇気をやってくれ
重力に屈することなく
南の空で おれたちを照らしつづけてくれ
そしたらリンゴのやつも もぎとられることなく
あんたの光をうけて さらに赤々と色づいて
高い枝に ぶらさがりつづけることだろうさ
だから どうだい 太陽さん?
だから 頼んだぜ 太陽さん!【結】
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自由詩です。
「縦」は、起 承1 転 承2 結くらい?
さっき言った「自由詩でも対応する部分」ってのが
【承1】
でっかい太陽は 重力に逆らって
東の海からのぼってくるけど
やがて力尽きて
西の海へと沈んでく
【承2】
ちっぽけなリンゴは 重力に逆らって
木の枝からぶらさがってるけど
やがてもぎとられて
大地のうえをころがってく
のところだって、わかりますね?
今回は形式だけでなく、フレーズも対応しています。
一行めの「でっかい」/「ちっぽけな」の対義語にはじまって。同じ単語を使ったりしながら、「沈んでく」/「ころがってく」の類義的な動詞におわる。
「縦」の、構成的に、対応する部分を。フレーズや、論法単位でも対応させて描く。
これにより、縦にとおった一本の筋とはべつに、離れたふたつの【承1】と【承2】のあいだに、関係がうまれます。
これが「横」の構成です。
「縦」と「横」。
ふたつの構成を織り込んで詩を描けば、のっぺりとした一本道にならずに、格子状の構成を詩のなかに組み込めることと思います。
歌詞で1番/2番を対応させて描くの好き。




