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7.可愛い悪魔……

先日からお嬢様がおかしい……。

メイドのモネは物思いに耽っていた。


公爵令嬢のヴァイオレット=エムロード様。

我儘で人を人と思わない傲慢な美少女。


それが自分の仕える主人だった。


初めてお顔を拝見した時もそうだった。


「この子が私の専属侍女なの?

田舎臭い子ね……。他にいなかったの」


そう言って顔を顰めたのを覚えている。


お嬢様の我儘がすぎて、すぐにメイドがやめてしまうのだ。


酷いときには解雇という名の死がまっていると

まことしやかに囁かれていたほどだ。


だから私のような下端の下の田舎娘まで

お嬢様の専属侍女のお鉢がまわってきたのだ。


それなのに最近のお嬢様は別人のようだ。


今まさに美味しそうにサンドイッチを頬張りながら

何か難しい本を読んでいらっしゃる。


「モネ、紅茶のお替り頂戴」


「はい、ただいま」


こんな優しい穏やかなお嬢様を見たのは初めてかもしれない。


チマチマとハムサンドを食べるお嬢様は愛らしい

小動物のように可愛らしい……。


いつもなら、こんなもの食べられない、野菜は嫌いなど

困らせるようなことばかり仰られていたと言うのに。


そんな事を思いながらついお嬢様をじっくりと見つめて

いたのだろう、ばっちりと目があってしまった。


(いけない、叩かれる)


そう思ってビクッとしながら目を瞑った。

しかし何も衝撃がこない。


恐る恐る目を開けると、そこには悲しそうな顔をした

お嬢様が自分を見つめていた。



一方すみれは心を痛めていた。


一体どんな事をしたらここまでお屋敷中の人が自分に

怯える環境ができるのだろう……。


このヴァイオレットという少女は、見た目の愛らしい

悪魔であったようだ。


特に身の回りを世話するメイドの怯え方は異常だ。


(これは信頼回復への道のりは遠いな……)



「モネ、サンドイッチ美味しかったわ。

ところでお兄様は家にいらっしゃるのかしら?」


お礼など言われたのは初めてなのだろう

モネは固まっていた。


「は、はい。

ロベール様でしたら、恐らくお部屋でジャン様

相手に領地経営のお勉強のお時間かと存じます」


「見学する事は可能かしら」


「えっ?」


まさかの提案にモネは目を剥いた。


「か……確認してまいりましゅ」


余りの衝撃だったのだろう、モネは返事をかんだ。

そしてそのまま急いで部屋を出て行った。




数分後……。

息を切らせながらモネが戻ってきた。


「どうだった?」


モネは困ったように眉尻を下げて言いにくそうに答えた。


「ジャン様より伝言を託っております」


(ジャン?

あぁ、お兄様の護衛兼家庭教師の男ね、きっと)


「どういう風の吹き回しだ。

ロベール様のお心を乱すような事はやめてもらいたい。

邪魔ですとの事です」


それはもう可愛そうなくらいモネは真っ青になっていた。


(あぁ?

あんた何様よ、幼女と言えども私の方が身分は上でしょうが)


今の返しでわかったわ。

お兄様とはあまりいい関係ではないみたいね……。


「お兄様はなんと言っていたの?」


「ロベール様は特に何もおっしゃられてはいませんでした」


「そう、なら()()()()()()()わね。

見学に行きましょう」


神妙な顔つきのモネとは正反対にヴァイオレットは

ニヤリと笑った。




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