6.人生設計をたてたいと思います
そして現状に至る……。
クラクラする体に鞭をうって上半身を起こした。
豪華な天蓋ベッドの上だった。
やはりもうもはやここは、私がいた世界ではないのね。
その時急にズキンと頭が割れるように痛くなった。
「うっ……」
こめかみの辺りを手で押さえて目を瞑る。
目の前が眩しい光に覆われた。
そして何度もフラッシュをたかれるかの様に
光が切り替わるごとに場面が浮かんだ。
専務をタクシーにのせて見送る自分と青山がいる。
パシャ!!
青山と一緒に駅まで帰る途中に店から電話が入る。
専務が携帯を忘れたらしい。
自分が行くといって青山が店に取りに戻る。
パシャ!!
それを見送って駅前の交差点で信号待ちをしている時に
スマホのお知らせ音がなる。
パシャ!
目を輝かせて画面をみている自分にいきなり
何か大きい物がぶつかってくるのがみえる。
パシャ!!
道路に血まみれになったモフモフ柴犬のチャームが……
そこで光はスッと消えた。
「あー、やっぱりそうだったか」
すみれことヴァイオレットは大きなため息と共に項垂れた。
命を落としていましたか……。
しかしなぜ異世界転生したのだろう。
今のところ、この状況を説明してくれる神様もいない。
それどころかナビゲートのカワウソちゃんも出てこない。
カワウソちゃんでもいてくれたら
少しは心が安らぐのになぁ……。
幼少期だからなの?
ここに転生するのには何か意味があるのよね、きっと。
でもこのままいけば確実に断罪エンドだ。
ないない、ありえないそんな人生。
よし、それを回避するために人生設計をたてないと。
全ての断罪エンドを見たわけではないけれど
思い出せるものだけでも思い出して……
それを確実に潰せるようにいまから根回しをしておかないと。
確か最初にみた断罪エンドは……
婚約破棄からの国外追放……その途中で暗殺だったかな。
その時は、義兄である近衛隊長にも見限られるのよね。
“お前など妹ではない、わが家の名前を語るな”
と言ってガッツリ主人公を守る様に肩を抱いていたな。
ヴァイオレットは遠い目になった。
そういえばそもそも家族環境もあまりよくなかったわね。
母親は義母だし……。
父は野心と金にしか興味のない宰相。
そもそも私は父が本当に結婚したかった
伯爵令嬢との間にできた子供だ。
そういうと綺麗ごとにきこえるが愛人の子だ。
その方は既に亡くなっているらしい……。
義母が正妻で、義兄が正当な跡継ぎだ。
だから半分しか公爵家の血は流れていない。
そんな父でさえ私には愛情が薄いように思える。
将来政治の道具に役に立つと思い引き取ったに過ぎない。
そう考えるとヴァイオレットはなかなか厳しい
生い立ちを背負っているな。
よし、まずは家庭環境からの改善かな……。
味方が多い方がいいにきまっている。
外見は8歳児、しかし中身は34歳。
今まで培った人生経験すべて使って生き延びてみせるわ。
鼻息荒くベッドの上で仁王立ちする幼女がそこにいた。




