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48/55

48.要素がたりないのよ!

隣国からきた商人が開いた新しい香辛料のお店。


一見普通のお店に見えたが……

隣国の人達と思われる奴隷と思わしき人達が裏で働いていた。


ヴァイオレットは紅茶を飲みながら……

来月に控えた隣国への潜入についてあれこれ考えを巡らせていた。


「ねぇ……キャロット。

あの店主からは何か掴めた?」


キャロットは満面の笑みを浮かべながら獣耳を揺らした。


「はい、お嬢様。

どうやら毎週新しい商品が隣国から必ず持ち込まれるようです。

そしてこちらからも必ず商品を送るそうです」


「怪しいわね。

毎週必ずってところが引っかかるわね。

何か荷物に紛らせて情報のやり取りでもしているのかしら」


人ならば関所を通らなくてはいけないので

ヘタをすると全身くまなくチェックされ、荷物も調べられるだろう。


しかし食品ならば、例え開けられて一つか二つ調べられても

逃れることが格段と容易い。


「もしかしたら武器でも密輸しているのでしょうか」


リガロは表情を曇らせた。


「わからないわね……。

しかし何か怪しい感じがするのよね、あの店主」


ヴァイオレットは自分の心のざわめきを無視する事ができなかった。


「近いうちにまた様子を見るためにあの店に買い物に行くわ」


「親父にもさりげなく探りを入れるように進言しておきます」


そう言ってリガロは紅茶を優雅に注いだ。



今日も今日とて執事喫茶は盛況だった。


リガロは相変わらず謎のご婦人をエスコート中だ。


すっかりリガロの虜になったご婦人は

毎週のようにリガロに会いに来る。


「あなたは本当に美しいトラさんね。

外見だけではなく心も綺麗なのね」


毎回そう言ってリガロを赤面させて困らしているらしい。


セバスに聞いたところによると……

こっそりリガロに貴重な本をプレゼントしているらしい。


本当は駄目な行為なのだが、貴重な本である上に

今後必ず執事として役に立つものだという事で

ありがたく頂いているとの事だった。


お礼に何か差し上げたいと考えていたら

なんと“マカロン”の虜でもあったのだ。


なので毎回たくさんのマカロンをお土産に

お渡しする事にした。


今ではダリアとモネがマカロン作りを習得したので

フェリックスの手を離れ、二人が主に作っている。


来月にはまた新しい味をお目見えする予定だ。


それから、お付きの上品な妙齢のご婦人は

なんと()()()()()()()()だった!!


あの強面のクマさんが、あのような繊細なお菓子を作ることに

感銘を受けたらしい。


それ以上に、あの男らしい感じがドストライクだったのだ。


お休みの日なのだろうか……

フェリックスが表に立つ日は、一人でいらっしゃって

楽しそうにお話をしてから、必ず次の予約を入れていく。


フェリックスがやんわりと聞き出したところ

もうずいぶん昔からご婦人に仕えている方らしい。


元々は王都に住んでいたとの事だった。


そしてやはり謎のご婦人はかなり高貴な方だという事もわかった。


(やだな……王族関係者だったらどうしよう。

セバス……一体何処のどなたなのよぉぉぉ)


ヴァイオレットは密かに慄いていた。



そこで一つ困ったことが起きた。

以外にもフェリックスが大人気だという事。


何が言いたいかというと……

兄貴枠というのか……

もしくはイケオジ枠?


大人の男枠が不足しているという事にきがついたのよ!


フェリックスはそこまで歳ではないけど……

このメンバーの中では最年長だ。


歳を聞いた事はないけれど、恐らく30歳前後だろう。


そこを求めてくるお嬢様が以外にも一定枠いらして

フェリックスの予約枠を争う事態になりそうなのだ。


エリアスも強面の兄貴枠と言えばそうなのだが

お嬢様達曰く……まだまだ青いらしい……。


10年後が楽しみな逸材だとお言葉を頂きました。


う……うん……

そう言われたら何とも言えないわ。



そもそもフェリックスは料理人だ。

だから月に2回しか今のところ表に出ていない。


そうしないと厨房が回らないのだ。


助手のカワウソ獣人のスコットがいるとはいえ

仕入れからメニュー開発まで……


すべてフェリックスを中心にまわっている

と言っても過言ではない。


ダリアとモネも手伝ってはくれているが

彼女たちは彼女たちの仕事がある。


実質的に表の執事として活躍するのは……

フェリックスにとってはかなり負担の事なハズだ。


(あーどうしよう。

イケオジ枠の人材が欲しいわ……)


若干フェリックスがお疲れモードで生クリームを

泡立てている姿をみながら……

ヴァイオレットは申し訳ない気分に陥っていた。


どこかにイケオジ落ちてないのぉぉぉ!?



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