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42.意外な特技

その日のうちに父様達と街のお屋敷に帰ることになった。


義母が長期の潜伏生活にかなり精神的にも体力的にも

まいっていたからだ。


洋館に帰ってきても、潜伏生活には変わりはないのだが

こちらで過ごす方が幾分緊張も和らぐに違いない。



闇夜に紛れてこっそりと勝手口からお屋敷の中に入った。

そこにはセバスをはじめ全員で出迎えてくれた。


「おお……レナルド様……。

ユリア様もご無事でないよりでございます……」


セバスは涙を浮かべながら二人を迎えた。


「セバス……今まで娘を守ってくれて礼を言う。

他の皆も本当にありがとう」


そう言って父様は深々と頭を下げた。


「もったいないお言葉でございます。

さぁ……どうぞこちらへ」


リガロ達も同意するように黙って頭をさげた。


夜も遅い事もあり、この日はひとまずそのまま

休むことになった。




次の日の朝食の時に改めて全員の自己紹介とお互いの現状

そして今後について話し合いが行われた。



「そうか……そんな事になっているのか」


レナルドの表情は曇っていた。


「父様……クロウ様とは一体どなたですか?」


ヴァイオレットは一番の疑問をぶつけてみた。


「恐らくだが……従弟にあたる男だと思う。

つまり私の父の兄の子供だな」


「従弟ですか……」


(もしそれが本当ならクロウという男は

血縁であることは間違いないのか……)


「私の父は双子だ……。

その兄はとんでもなく女癖が悪い男だったそうだ。

若い頃からたくさんの女性と浮名を流していた。

父とは顔立ちも背格好もそっくりだったらしく

身に覚えのない事でかなり巻き込まれて迷惑だったと

苦々しそうに父が語っていたことを思い出した」


そういって父様は苦笑していた。


(双子あるあるなのかしら……。

性格が正反対になるのって……)


「しかしその方は、若くして病でこの世を去っている」


(あー典型的な話だわ……

きっと母1人子1人で苦労して育ったんだろうな

エムロード家を憎む素地は出来上がってるよねぇ……)


「亡くなった時は大変だったという。

かなりたくさんの女性が父の元に押しかけて

兄の子供だから認知してくれと来たときいている。

だからもしかしたらその中の1人かもしれん……」


そんな折ふと思い出したかのようにセバスが話し出した。


「そう言えばそんな事がありましたな……。

しかし魔法鑑定の結果……

大半の方にはお引き取り願いました。

が、確か1人だけ本当にお子様だった方がいたような」


ヴァイオレットはその発言を聞きながら怪訝な顔をした。


「その方がなぜ今になってこのような乗っ取りを

するような真似をしでかしたのでしょうか?

仮に血縁だったとしても……

限りなく勝算はないと思うのですが」


「わからないが……

おそらく背後には唆した者がいるはずだ

それもかなり力をもった何者かがいる……」


レナルドはそんなことを呟きながら、考えを巡らせていた。


「……やはり王族に近しい方でしょうか」


「かもしれないな。

私はここで2~3日休んだら、またアードラ達の村に戻り

引き続き秘密裏にその辺りを探ろうと思う」


「あなた……」


義母は寂しそうに父の手を握った。


「大丈夫だ、ブレンもいる。

それにディアーク殿も協力してくれるらしい」


義母はそれでも縋るように父様をみていた。


「お前はここでヴァイオレットの力になってやってくれ。

なにやら面白い事を始めるようだから。

きっとお前の力が役にたつはずだ」


そういって父様は楽しそうに目を細めた。




義母はさすが高位貴族だった。

お茶会に関しては、あらゆる知識を持っていた。


表にはでないが、特別顧問として義母には

執事喫茶のご意見番として活躍してもらう事になった。


以外にもかなり乗り気の様子を見せてくれた。


そこで早速リガロを相手に……

執事喫茶の流れを一通り義母に体験してもらうことにした。


かなり高評価を得たのだが、細かい所の修正や課題をいくつかあげてきた。


それでも母は嬉しそうに目を細めて言った。


「よくここまでがんばりましたね」


「母様にそう言って頂けると心強いです」


ヴァイオレットは指摘されたことをメモにとりながら

ますます意欲を燃やした。


「ほぁぁ……お嬢様の母ちゃんは綺麗な人だな」


シャルは頬を染めながら見とれていた。


ダリアもヴァイオレットもかなり美人なので

大半の者が美人耐性は高いはずなのだが、義母は別格だった。


ユリアは生まれながらの貴族で超お嬢様だ…。

佇まいといい、貴族オーラーが半端ないからだろう。


(昔よりも雰囲気がやわらかくなったな。

やはりかなり今回の事で価値観が変わったのかな)


今までだったら獣人を優しく愛でるなんて……

ありえなかっただろう。


獣体になったシャルとジェイを膝に乗せながら

カワウソちゃん達の蝶ネクタイを縫っている義母をみながら

ヴァイオレットは密かに微笑んでいた。


カワウソちゃん達は、庭の警備や案内などの役目を

担ってくれることになった。


洋館の一部以外は、プライベートエリアなので

お客様が誤って入ってしまわないように取り締まる為だ。


見た目も可愛らしいし……

きっと女性たちは虜になるにちがいない!


が、その反面カワウソは狂暴な一面も持っていた。

おそらく敵を見つけたら容赦しないだろう。


唯一のカワウソ獣人の少年は、手先が器用だったので

フェリックスの助手として厨房で活躍している。


今はまだ構想の段階だが、執事喫茶が軌道に乗ったら

スペースを広げて、横にパティスリーも開く予定だ。


まずは知名度をあげて、たくさんの情報が入ってくるように

頑張らなければならない。


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