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31.スカウトしたい

犬獣人の少女と共に港に来ていた。


その後ろから保護者のように、アマーリアとフェリックスが続く。



港に船が着くたびに荷物が下ろされたり、新たに積みこまれていたりしていた。

屈強な男たちがそこかしこで働いているのが見える。


人に交じって獣人の姿もチラホラみうけられる。


港の仕事は危険を伴いきつい仕事なのであまり人気のない職業だった。


しかしそのぶん給料は高い。

とは言っても……獣人はそれでも安くこき使われているようだった。


見ていると、ちょうど一仕事終わって休憩時間のようだった。


「兄さん~」


犬獣人の少女が汗をぬぐっている男の方へ手を振りながら駆け寄った。


「おわぁ……イルマ!!

ここには危ないから来るなといったろ」


そう言いながらも優しく抱きとめていた。


(ふわぁ……本当に大きいな……)


噂通りかなり大きな男だった。

肉体労働をしているからだろうか、腕や肩の筋肉が盛り上がっていた。


銀糸の髪にそれと同じ色の大きな獣耳がついていた。

鋭く細い瞳の色は青かった。


確かに強面だが……全体的にシュッとした細マッチョの

イケメン獣人だった。


(何かに似ていると思ったら……ハスキー犬だぁ!

このお兄さんハスキー犬だよ!)


ヴァイオレットがまじまじと見つめていると

その視線に気がついたのだろう。


鋭い視線を投げかけてきた。


(うっ……確かになかなか迫力があるな。

眼力が半端ない……)


「兄さんあのね……」


イルマこと犬獣人の少女がヴァイオレット達の事を

説明しようとしていた時に思わぬ邪魔が入った。


「おいおい、犬っころ……。

女となんかイチャついてんじゃねぇよ……」


柄の悪い三人組が横から登場してきた。


「へぇ……なかなか可愛いじゃねぇか」


一人の男がイルマを上から下までみた。


「…………」


そのよろしくない視線に……

イルマを庇う様に前に立ちはだかった。


「こっちのお嬢ちゃんもお前のツレか?」


ヴァイオレットまで巻き込まれた。


「お前、まだあそこの積み荷の仕事終わってねぇじゃねえか。

このお嬢ちゃん達は俺たちがあいてしておくから

お前やって来いよ」


そう言って、奥の積み荷を顎で指示した。


「あれは俺の担当ではありません」


男はきっぱりと断った。


「あぁ?生意気言ってんじゃねえよ。

俺らがやれっていったら、一番下っ端のお前がやるんだよ」


(はい、出たー。典型的な職場パワハラ!!

こういう課長がいたなぁ……)


すみれは遠い目になった。


「断る」


「あぁ?女の前だからってかっこつけんなよ」


三人が取り囲もうとしたとき……

フェリックスとアマーリアがその男たちの肩を叩いた。


「あ?うっせーな、なんだよ」


それでも男たちは振り返らなかった。

だからもう一度更に強く肩を叩いた。


「いいかげんにしろ……よ……」


三人は怒り狂った形相で振り返ったが……

二人の姿をみて一瞬にして真っ青になった。


「血染めのアマーリア……」


「殺人クマ!?」


信じられないくらい怖い表情の二人が仁王立ちしていた。


「うちらのツレになんかようか?」


両手をバキバキ鳴らしながら二人は凶悪な笑顔を浮かべていた。


「いえ……ただの通りすがりです」


そう言って三人は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。



「…………」


目まぐるしい展開に一人ついていけない男が固まっていた。


「あんたかい、イルマの兄貴は」


「はい……エリアスといいます。

先日は妹を助けて頂きありがとうございました。

話は聞いております」


そう言って大男はアマーリアに深々と頭をさげた。


「いや……私はたまたまその場にいただけだ。

最初にあんたの妹を助けようと動いたのは……

このお嬢様の護衛だ」


そう言ってヴァイオレットを見た。


「ヴァイオレットと申します。

あなたにお話があって来ました」



ヴァイオレットは大まかに説明をして、自分の家で働いて

欲しい事を力説してプレゼンした。


最後まで黙って聞いてくれてはいたが……

あまり乗り気ではない事が伺えた。


「…………。

お嬢様の言いたいことはわかった。

しかし直ぐには答えられません」


「わかっています。

三日後にお返事をきかせて頂いてもいいですか?」


「…………わかりました」


ヴァイオレット達はひとまず港を後にした。




「いきなりすぎたかしら。

確かに怪しい話よね……」


ヴァイオレットはため息をついた。


「そうだな……」


そう言ってフェリックスも苦笑した。


「そこは“お嬢!そんなことはありません”って

いうところじゃないの!?」


ヴァイオレットは頬をふくらませて拗ねた。


「悪いお嬢……」


困ったようにフェリックスは頭をかいた。


「しらない、もう……」


「お嬢……」


必死にヴァイオレットの機嫌を取ろうとするフェリックス。

それを楽しそうにみているアマーリア達。


そんな二人の様子をいつまでもエリアスは遠くから見ていた。





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