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30/55

30.可愛いVSカッコいい

あれからアマーリアはフェリックスの傍から離れなかった……。


「そうじゃないかと思っていたけど……

フェリックスはやっぱり傭兵をやっていたのね」


「食うために仕方なくだ。

本来あまり荒事は得意ではない……」


そう言って強面クマ獣人は照れ臭そうに頭をかいた。


(その見た目と体格で荒事が苦手だと!!

宝の持ち腐れとはこの事か……)


その横でいかにフェリックスが勇敢で素敵だったのかを

恥ずかしげもなくアマーリアは力説していた。


「やめてくれ……そんな大げさな事じゃない」


フェリックスは首まで真っ赤になりながら狼狽えていた。


そこにキャロットがたまたま通りかかった。


「あれ……フェリ……お客さん?」


いきなりウサギ獣人の美少女が登場した。


フェリックスと腕を絡ませて寄り添っている

大柄のかっこ綺麗なお姉さんを黙って見つめていた。


(こ……これは大丈夫か?

いきなり修羅場とかやめて……)


二人の仲を激しく誤解をしているヴァイオレットは焦った。


「フェリックス……こちらの方は?」


アマーリアも緊張した面持ちでキャロットを見ていた。


「キャロだ……」


二人の呼び方からして親しい間柄と悟ったのだろう。


「こんにちは、キャロットです」


蕩けるような笑顔で挨拶をした。


(うっ……女の私からみてもめちゃくちゃ可愛い……

これはある意味凶器……)


「…………」


アマーリアも同様の事を思ったのだろう

悔しさ半分可愛さ半分の気持ちがせめぎ合っているようだった。


そんな中ワザと甘い声でキャロットは上目遣いで

フェリックスにこう告げた。


「フェリ……相談したいことがあるから

いつものように夜になったら部屋にきて」


そう言って可愛らしくぺこりとお辞儀をすると

その場から離れていった。


ミシッ……

どこからかよろしくない音が聞こえてきた。


アマーリアがつい力を込めてしまったのだろう

椅子の手すり部分にひびが入っていた。


(ひえぇぇぇ……静かに怒ってるよあれ……)


「お……おう」


一人だけこの状況をわかっていないフェリックスだけが

不思議そうに首をかしげて返事をしていた。


「か……可愛らしい人だな……。

フェリの大事な人なのか」


目を伏せながらアマーリアは聞いた。


「そうだな……大切だ(義兄弟だからな)」


義兄弟という所は勿論、フェリックスの心の副音声なので

アマーリアには聞こえていない。


アマーリアはショックを受けたような顔をした。


「…………」


いきなりそのまますくっと立ち上がって言った。


「それでも私は諦めないから!!

また来る!!

お嬢様もリガロもまたな」


そう言って挙動不審のままアマーリアは帰っていった。


「なんだったんだ今の……」


唖然としながらその後姿を見送るフェリックスであった。


(この鈍感男!!)


ヴァイオレットはため息をつきながら肩をすくめていた。


一人すべてをわかっているリガロは……

キャロットのまさかの行動に驚きを隠せなかった。


(顔に似合わず結構いい性格しているんだな、あいつ。

お嬢様も何か誤解しているようだし……。

説明するべきだろうか……)


思い悩む唯一の常識人リガロであった。



「あら……これ忘れ物かしら……」


ソファーの間に何か落ちていた。

どうやらブレスレットのようだ。


子供が腕にはめるような木の実やビーズでできた

可愛らしいものだった。


アマーリアの物だろうか……。

ヴァイオレットがそれを手に取りもちあげると

フェリックスがそれをみて目を見開いていた。


「どうしたの?」


「それは昔俺がアマーリアに買ってあげたものだ。

魔獣に襲われた恐怖でな、なかなか泣き止まないものだから

俺がその場に出ていた出店で買ったものだ……。

あいつまだこんなものを大事にもっていたのか」


(アマーリアさんの初恋だったのね)


「きっと大事なものだと思うから届けましょう」



二人はリガロからアマーリアの家の場所を聞いて

下町の通りを歩いていた。


ヴァイオレットはフェリックスの横顔を見つめていた。

確かに強面だけど内面はとても優しいのよね。

女性はギャップに弱いから……。


フェリックスは厨房に専念してほしいから

きっと両立させるのは酷なのよね。


でも表にでる執事のメンバーにもちょっと強面や

不良っぽい子が欲しい……。


リガロは正統派イケメンでしょう。

ちょっと冷たい感じがまたキュンポイントだし。


シャル達はやんちゃな弟キャラでしょう。

可愛いからお姉さまたちのハートを鷲掴みしそう。


キャロットは男の子が苦手な内気な子達に

人気がでそうなのよね。

男を感じさせないのがいいと思う。


どこかに落ちてないかしら強面のいいこが……。


そんな事を密かに思いながら歩いていると

アマーリアの家についていた。


呼び鈴を押すと中かから可愛い声がした。


「はーい」


扉を開けて出てきたのは、可愛らしい犬獣人の少女だった。


「ど……どちらさまですか?」


獣耳を震わせながら、おずおずと訪ねてきた。


扉をあけたら強面マッチョなクマ獣人が立っていたら

そりゃ怖いだろう……。


その強面クマの後ろから美少女がぴょこっとでてきた。


「こちらは、アマーリアさんのお宅で間違いありませんか?」


ヴァイオレットの顔をみて安心したのだろう……

ピコっと獣耳も戻り笑顔で対応してくれた。


「はい、アマーリアさんの家です。

今はちょっと留守にしていますが……

すぐに戻ってくると思います」


「では、玄関先で待たせてもらってもいいですか」


「はい、どうぞ。

すみません、中にお通しできなくて」


犬獣人の少女は申し訳なさそうに眉尻をさげた。


「かまいませんよ」


(しっかりとした子だな……。 

見た目も可愛いし……垂れた耳が可愛い……。

なんの犬種だろう?キャバリアかな?)


そして5分もしないうちにアマーリアが戻ってきた。


「な……なんでここに?」


二人の姿をみて驚いていたが、家の中へと案内してくれた。


「お茶をどうぞ……」


犬の形をしたクッキーと共に紅茶が出てきた。


「可愛らしいな……」


「そうだろう……この子が作ったんだ。

掃除洗濯も完璧だし、なにしろ飯が旨いんだ」


そう言って自分の事のように自慢をした。


「そんな……大したことじゃ」


犬獣人の少女は真っ赤になって否定していた。


「雇っているのか?」


家の家事などを手伝う仕事もある。

でもそれは主に貴族の家に仕える事が多いために……

獣人がつける職業ではない……。


「3日間だけな……。

普段は酒場で働いている……」


アマーリアは渋い顔をした。


「あまりよろしくない環境でな……

できればこのままずっとそばに置いてやりたいんだが

そういう訳にもいかない」


犬獣人の少女もしょんぼりしていた。


「アマーリアとの契約がきれたら……

帰るあてはあるの?」


ヴァイオレットがそう聞くとぎこちなく頷いた。


「普段は兄と二人で住んでいます」


(お兄さんがいるのか……)


「確か港で下請けの仕事をしていると言っていたな」


「はい、元々は傭兵だったのですが……

足に大けがをして……。

生活するのには支障がないのですが傭兵にはもう」


そう言って悲しそうに目をふせた。


「ねぇ、お兄さんってガタイがよかったりする?」


いきなりのヴァイオレットの質問に全員が首を傾げた。


「あ……はい、かなり大きい方だと思います。

目つきも鋭いので……

どちらかというと迫力のあるタイプですね」


そう言って犬獣人の少女は苦笑した。


「お兄さんに彼女はいる?」


「えっ?いないと思います。

先程も言った通りかなり強面なのでモテないかと……」


「よし!ぜひ会わせてくれない」


ヴァイオレットは犬獣人の少女の手を握った。


「お嬢?」


「なんだい、お嬢様はそういう男が好みなのかい」


揶揄う様にアマーリアはニヤリとした。


(強面の不良キャラゲットできるかも!!)


ヴァイオレットは喜びに震えていた。


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