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27.そうだ、そうしよう!

感動の再会もつかの間……

これからの事を考えなくてはならない。


ヴァイオレットはお茶を飲みながら色々な考えを

頭の中で張り巡らせていた。


「お茶のおかわりは如何ですか」


そう言ってセバスチャンがティーポットを持って立っていた。


「フフフ……執事らしい事も出来るのね」


「心外ですな、これでも誰よりも長くこの職についております」


そういって茶目っ気たっぷりにウィンクをしながら

流れるような優雅な手つきでお茶をいれた。


「ところでこのお屋敷はどなたの物なの?

ここにいて不法侵入にならないのかしら」


「おや、お話しておりませんでしたか?」


セバスチャンは不思議そうな顔をした。


「ん?」


「私の生家でございます。

よって私の持ち物です」


さらっと老執事はとんでもない事を言った。


「えっぇぇぇぇ!そうなの?

セバスは貴族だったの?」


「ホホホホッ……恥ずかしながら伯爵など頂いております」


そうだったのか、只者ではないとは思っていたけど

貴族なのか……。


だから礼儀作法は勿論、色々な方面で顔も聞くし

貴族の内情がわかっていたのか。


基礎がそもそもあったのね。


「でもそんな身分なら、なぜ執事に?」


「いわゆるよくある話です……。

両親が事業に失敗いたしまして家が没落いたしました。

その時に救いの手を差し伸べてくださったのが……

先々代でした、それからはずっとエムロード家に仕えております」


「そうだったの」


「なので、これからはここを拠点にしましょう」


そう言って柔らかく笑った。


「ありがとう。助かるわ」


そこにリガロが新聞を持ってやってきた。


「お嬢さま、これを見てください」


新聞を受け取ってみると衝撃的な記事が掲載されていた。


「ふぅ……どうやら私は亡くなった事になっているようね」


そこには屋敷の火災により……

公爵令嬢のヴァイオレット=エムロードが亡くなった事が

一面に掲載されていた。


どうやら使用人の不注意で火災になり屋敷が全焼した事になっていた。


「やってくれるわね……あいつ」


ヴァイオレットは怒りに震えていた。


しかし遺体が見つからない事や不審な点があるので

調査中であることや両親が隣国へ赴いておりコメントがとれない事。


更にロベールがまだ留学先から帰ってこない事にもふれ

何も内情はわからないと締めくくられていた。


ちゃんと国の調査機関が動いていることにほっとした。

調査はしてくれているようだ。


その一方何故か、両親の事故については何も掲載されてなかった。


意図的に隠されている?

未だに隣国に滞在していることになっているのか……。


ヴァイオレットは新聞を折りたたんでため息をついた。


「この記事を見た時には怒りが湧いたけど……

かえって好都合だわ。

まさかここに公爵令嬢がいるなんて誰もおもわないじゃない。

堂々とこの街で暮らせるわ」


そういって不敵に笑った。


「そうですね。

お嬢様はまだ社交界デビューもしておりませんから

顔をご存じの方は少ないでしょう」


その意見にたいしてリガロも頷いた。


「しかし活動するにも何か隠れ蓑になるものがいりますね」


セバスチャンは顎に手をかけて考え込んだ。


「そうね、ディアーク達の情報網にも限界があるでしょうし

貴族や王族などの上の情報も掴みたい所よね」


なにかいい方法はないかな……。


そんなところにフェリックスがやってきた。


「お嬢、食料が乏しいので買いものに行ってもいいか?」


「あ、そうね。

急に人数も増えたしね……」


そうだ、この街の雰囲気や現状も知りたいから

街へリサーチに行こう。


マーケティングは大事よね。

王都と違って物価や流行も違うハズ!


(お嬢様がまた何か企んでいるな……

面倒な事にならないといいが……)


リガロは内心ため息をついていた。


「フェリックス……私もついて行ってもいい?」


「えっ?」


クマ獣人は困ったようにリガロとセバスチャンに

目で合図を送った。


それに対して二人は無言で首を横に振った。

ヴァイオレットは言い出したらきかないのを知っているからだ。


「わかりました……」




数十分後……。


フェリックスとリガロと共にヴァイオレットは市場にいた。


国境の街なので、二つの国の文化が混ざり合い

王都では見かけない食材や雑貨がたくさん売られていた。


(あっ……苺がある!!)


目を輝かせていたのだろう。

店の人が一粒くれた。


「甘い~美味しい。

フェリックス!これ買おう!

これで可愛いデザートを作って」


そう言うとフェリックスは嬉しそうに目を細めて頷いた。


その後もたくさんの材料を買い込んで荷馬車に乗せていく。


「お嬢、俺は一度食材を屋敷に運んでまた来ます」


「わかった、私はリガロともう少し街の様子をみるね」


そう言ってフェリックスと別れてヴァイオレット達は

再び街の散策に繰り出した。



小腹が空いたのでカフェという程おしゃれではないが

小綺麗なご飯屋に入った。


席に案内され、メニューを開いた。


「お嬢様、何にいたしますか?」


「そうね……ケーキセットにしようかな。

リガロは何にする?」


「俺は果実水にします」


二人は注文の品が来るまで、通りを通る人を眺めていた。


ん?何か視線を感じるんだよな。

気のせいかな……。


リガロも同様の事を考えているらしく落ち着かない。


そう言えば入る時も思ったが、このお店は比較的に

客層が若い女性が多かった。


よく耳を澄ませてみるとこんな会話が聞こえてきた。

向かいの席の若い女性4人組が話しているようだった。


服装からみてこの街の住人のようだ。



「あのトラ獣人さんカッコよくない?」


「やっぱりぃ~私も思った」


「イケメンなのはもちろんの事……

褐色の肌っていうのもポイント高いよね」


「きっとあの美少女の護衛よね」


「いいな~私もあんなイケメンの護衛が欲しい」


「わかる~一度でいいから“お嬢様”とか言われたい」


全員うっとりしながら頷いていた。


「…………!!」


その時すみれはひらめいた!

これだ、これよ。


よくみたら、他の席の女子もチラチラこちらを見ている。


何処の世界でもイケメンは正義なのよ!!


いつも一緒にいるからあまり意識してなかったけど

リガロってかなりカッコいい部類に入るのよね。


隠し攻略キャラになるくらいだし。


リガロは余りにも周りの女子の熱い視線に

居心地が悪そうだった。


そこに新たな者が投入されたので

ますます女子達は色めきだった。


「お嬢、リガロ待たせてすまねぇ」


強面クマ獣人のフェリックスが店の中に入ってきた。


「フェリックスお疲れ様でした。

よくここがわかったわね」


そう言うとフェリックスはニヤリと笑って言った。


「俺たちは匂いに敏感だからな……。

それに道行く女達がお前達に見とれていたからな

この店にいるなって直ぐにわかったぜ」


そう言って揶揄う様に笑った。


すると後ろからキャっと声が上がった。


「私はあのワイルドクマさんの方が好み!!」


「“お嬢”呼びもたまらない」


「叱られたいよね~」


と、なかなか特殊なコメントも飛び交っていた。


この店の女子は完全に二人の虜だった。


(よし、いけるこれはいけるわ!)


すみれは確信した。


一方360度から見られている二人は……

獣耳と尻尾を下げて狼狽えていた。


(お嬢様、早く帰りましょう……

この異様な視線に耐えられません)


(なんだ、この視線は感じたことない圧だ……)



女子のパワーは凄いのです!!


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