表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/55

21.目にものみせてやる!

ヴァイオレットは真剣な眼差しでクマ獣人を見上げていた。


「お話を聞く限り、あなたたちにできることはもうないわ」


「なっ!」


小さな少女に確信をつかれて、フェリックスは狼狽えていた。


「キャロットさんと猫ちゃん達を守りたいのでしょう。

それなら最善をつくさないと。

意地だけでは、世の中はわたっていけませんよ。

今、あなたにできることは何ですか?」


ヴァイオレットは子供らしくない妖艶な顔で笑った。


「お嬢さん……本当に子供か?

魔法か何かかけられた大人の女性ではないのか?」


内心ちょっぴりギクッとしたことは内緒だ。

鋭いな、中身は34歳です、はい。


ヴァイオレットの大人びた達観した考えに

フェリックスはただただ畏怖を感じていた。


「あなたの強みはその料理の腕です。

それはここじゃないと発揮できないものなのですか?

確かにこの場所が大事だという事は理解できます。

しかしもっと大事なものがあるでしょ?」


そういってヴァイオレットはキャロット達をみた。

ハッとしたようにフェリックスは目を見開いた。


「だから私とともに来ない?

思う存分料理できる環境を用意するわ」


「お嬢様……また勝手に」


リガロは呆れたようにヴァイオレットを見つめていた。


「だって勿体ないじゃない。

こんなところで埋もれていい人材じゃないのよ」


そんな二人のやり取りを聞きながら

フェリックスは息をはいて目を閉じる。


「キャロはどう思う?」


長い沈黙の後、キャロットが口を開いた。


「あいつらにめちゃくちゃにされるくらいなら

お嬢さんの元に行ったほうがいいと思う。

フェリには好きなだけ料理をして輝いてほしい。

僕たちは大丈夫だから、どうか行って」


そう言って泣きそうに顔を歪めた。


「えっ?キャロットさんも猫ちゃん達も一緒だよ。

みんなで行くんだよ」


ヴァイオレットはケロリと言った。


「へっ?

お嬢さん、何を言ってるんだ。

俺だけならまだしも、全員を面倒みつるもりか!?

あいつらに払う金だってやばいのに……。

とんでもない金額になるぞ」


フェリックスは渋い顔をしてヴァイオレットを胡乱げにみた。


「元公爵令嬢をなめんなよ」


そう言って悪い顔全開でお嬢様はニヤリと笑った。


「お嬢様……自ら正体をあかしてどうするんですか!」


リガロはその場に頭を抱えて座り込んだ。


「ブワァハハハハハハ!!

なるほど、公爵令嬢様でしたか。

どうりでぶっ飛んだ嬢ちゃんな訳だ。

面白い、わかった!

俺たちはあんたにかけるぜ」


そういってフェリックスは豪快に笑った。




それからというものヴァイオレットの行動は早かった。

役所にいきあらゆる手続きをすませた。


弁護士を雇い、ちゃんと書類をかわし

金輪際四の五の言わせないように、正式な書類を交わした。


そのおかげで、当初言われていた金額の5分の1を

相手方に払うことで問題は解決した。


フェリックス達は晴れて自由の身になった。

いや……ヴァイオレットの僕になったというべきか……。



そしていま一行は、国境の街に向かうべく進みだした。


ヴァイオレット達は馬車の中で寛いでいた。


「お嬢様は本当に恐ろしいな。

12歳とお聞きした時は、倒れそうになったぜ」


御者席にはリガロとフェリックスが

馬車を操るべく並んで座っていた。


「あの方はある意味規格外だ。

あれが普通の貴族の令嬢と考えるな」


「だな……」


二人は苦笑した。



「クシュン……」


ヴァイオレットは盛大にくしゃみした。


「寒いのか?俺達で温めようか」


シャルたちは獣体になってヴァイオレットの

膝の上に乗ってきた。


「こら、女の子にそんな気安く触れたらだめでしょう。

降りなさい」


キャロットが軽くしかるとヴァイオレットは蕩けた顔で

それを止めた。


「モフモフ最高、肉球もぷにぷにでたまらん。

このままで至福の時を味あわせて」


「えっ?」


「ほら、ヴァイオレット喜んでるじゃん。

俺達最高!好きなだけモフれよ」


「うん……」


蕩け切った顔で無心でシャル達をモフっているヴァイオレット。

まぁ、いいかお嬢様が幸せなら。

キャロットはそんな三人を見ながら幸せそうに微笑んだ。


「あっ、お嬢様……。

因みに僕“男”だからね!」


「えぇぇぇぇぇぇ!!」


馬車の外まで聞こえるヴァイオレットの絶叫が響いた。


「あいつらなにやってんだ?」


その声の大きさにリガロは苦笑した。


「さぁな。

たのしそうだからいいんじゃねぇか」


馬車は国境の街をめざして進む。



あんなに美少女のウサギちゃんが男だとぉぉ。

それじゃ何か、フェリックスさんとはそういう……。


偏見はないよ、両想いならりっぱな恋愛だから、うん。

応援するよ私は、たとえ男同士でも……。


勝手に性別を誤解した上に、更にややこしい

誤解が生じたのであった。


そんなヴァイオレットの心情をよんだのだろう……。


僕……恋愛対象は女性なんだけどな……。

もちろんフェリックスもそうだ。


クス……でも面白いから黙っていよう。


結構いい性格をしているウサギ獣人なのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ