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13.新しいルートができた模様……

お屋敷の庭の整備を住人総出で行っている。


獣人は見かけによらず力持ちだった。

小さい双子のトラ獣人ちゃん達ですら、ひょいと岩をどかしたり

肥料の大きい袋を平気で担いだ。


私はそんな様子をみながら、今後お屋敷の中で

修理が必要であろう箇所の点検をチェックしていた。


(雨どいがところどころ壊れているところがあるな……)


引っ越してきて2か月ほど経つが、穏やかな日々を過ごしている。

リガロはセバスチャンに教養や知識などを教えられ……

少しずつだが洗練されてきている。


顔は笑っているが、教えは容赦ないらしい。

伝説の執事は伊達じゃないってことね!


その傍ら、ジャンには剣術と魔術を習っているみたいだった。

ジャンはお兄様の護衛なので、常にこちらにいる訳ではない。


だからジャンが来る日は朝からソワソワしているリガロ。

獣耳がピクピクしているのが可愛い。


私にはつれないくせに、ジャンは大好きかよ!!

まぁせいぜい色々吸収して強くなっておくれ。


そんな私に対しても多少慇懃無礼だが……

数日前から本格的に従者として傍に仕えるようになった。



今のところは悪い方に傾いてはいない気がする。

第一に、王子様と婚約を結んでいない。

婚約破棄からの断罪ENDはこれでなくなったと思われる。


その話が来た時にはどきどきしたが、あっさりと父様が断った。


「うちの娘にはもったいないお話でございます」


と言っていたらしいが、嫁にやるわけねぇだろ……ああん?

という尋常じゃない圧を感じたらしい。(近衛騎士団長 談)


王家に対してそんな強気で言える父様って一体。

自分の父親ながらうっすら寒くなったわ。


個人的な大切なものは、もうほとんどこちらの屋敷に運んだし

無駄に持っていたドレスや宝石などはお金に換えた。


そして架空名義で預金ギルドに預けた。

これで何かあった時も素性がばれないでお金を下せるだろう。



「お嬢様、そろそろランチの準備をはじめたいのですが

大丈夫でしょうか?」


エプロン姿が眩しいトラ獣人のダリアさんが微笑んでいた。


「いいにおいがするなって思っていたの。

今日のランチは何かな~」


「お嬢様の好きなラザニアですよ。

付合わせにはミモザのサラダ、それからデザートはレアチーズケーキです」


不思議な事に食べ物については、ほとんど変わりがなかった。

日本の会社が制作した乙女ゲームだからだろうか……。


お陰様で食料事情に悩む必要はなさそうだった。


「楽しみだわ。

ダリアが作る料理は、何を食べても美味しいから。

皆も呼んでくるわね」


そういってヴァイオレットは庭へと向かった。

そんな様子をみながらダリアは嬉しそうに尻尾を振った。




父様とお兄様も時間ができるとお屋敷を訪ねてくれた。


それに義母からもお見舞いの品が届いた。


一瞬……罠かと思った。

が、王都の有名ショコラティエのお菓子詰め合わせと

とても高級な寝具一式だった。


どうやら今まで仕事一筋で一切帰ってこなかった父様が

私のおかげで家に帰るようになり、その延長で義母との時間も

作るようになったことのお礼らしい。


以外だが父様に惚れていたのね、義母は……。

夜会遊びは、構ってくれない憂さ晴らしの為だったのか。

案外可愛らしい人なんだな。


お礼に今、開発中のアロエの化粧水を一式送ってみた。

そうしたらまた信じられないくらいの品物が届いた。


相当お気に召したらしい。

お茶会で自慢するらしい……。


義母ともうまくやれそうな気がした。




そんなある日お兄様が、ジャンと共にやってきた。


「お兄様、お会いできて嬉しいです。

今日はお約束していたかしら」


貴賓室にお兄様を通して、ソファーに座るように促した。


「いや、急にすまない。実は大事な話があって」


そう言ってお兄様はすこし言葉を濁しながら目を泳がせた。


「…………?」


ヴァイオレットはロベールの次の言葉を待った。

しかし一向に口を開こうとしない。


紅茶をじぃーと見つめて、ため息をついている。


「お……兄様……?」


「実は……隣国に留学する事になった」


そう寂しそうにポツリと言った。


「えっ?」


(隣国ってどこかしら……。

すみれは記憶をフル回転させた……隣国……。

あっ!確かメインキャラに隣国の第三王子がいたな。

確か人と獣人のハーフというキャラだった気が……)


「第一王子に付き添って行くメンバーに選ばれた。

本当は行きたくないんだ」


そう言ってお兄様は握りこぶしをふりあげながら力説し始めた。


「お前を置いていく事なんてできない。

まだここも安全とは言えないだろ。

ジャンを置いていきたいが、ジャンも俺の付き添いで行くんだ。

心配で夜も眠れないよ。

王子一人で行けばいい。なんで俺なんだ」


お兄様は頭を掻きむしりながら吼えた。


(お兄様ってこんなキャラだったかしら。

すっかりシスコン属性に仕上がってしまった……)


確かお兄様はもうすぐ16歳だ……。


普通貴族の令息、令嬢は16歳に貴族学院に入学する。


虹の彼方で抱きしめてのゲームも入学式から

物語がスタートする。


おかしい……。

お兄様は三年間生徒会長を務め、更に首席で卒業する。


卒業後、そのまま王子の側近として勤め……

近衛隊長まで上り詰めるはずなのに。


隣国に留学だ?

()()()()()()()()()()()()()()よ。


「どのくらいの期間いかれるのでしょうか?」


ふぅ……と大きなため息をつきながらお兄様は言った。


「1年は帰ってこられないと思う。

下手したら延長とかもあるかもな……」


そういって、ソファーに凭れながら天井を見上げていた。


(すっかりヤサグレモードだわ……)




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