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ヒロインの癒しはもじゃ頭の王子です  作者: 夕山晴


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答えあわせ

 次の日の午前。ロイの指示のもと、広大な会議室に集められた。

 メンバーは六人。ライラとテッド、イケメン四人である。

 長いテーブルの端に集まって座る。


「さて、議題についてだが」


 そう話し始めたのはロイである。

 ロイの視線を受け、ライラはおずおずと口を開く。


「先日、私が使った癒しの力ですが、二度、使ったことは皆さまご存知だということでしょうか」


 テッドだけは、へえ、と仰け反ったものの、他は驚かなかった。


「それがどうしてなのか、教えていただきたいのです。私が癒しの力を使ったのは、立入禁止のガーデンと、訓練場での二回。訓練場は魔術の訓練もできるように強い防護の魔術が施されていると聞いております。外に光は漏れないはず。それなのに、なぜ、ご存じなのでしょう」


 辺りを見渡すことなく伏目がちに、出てきた言葉は淀みなかった。

 少しの間を置いて答えたのはフリッツだ。


「では、私からお答えさせていただきましょうか。聖女様が訓練場にて癒しの力を使うかもしれない、ということを私たちは知っていたのです。なぜならそれを計画したのがロイ王子殿下であり、遂行に移したのも私たちですから」


 予想していた通りの答えに、ライラの目は険しくなる。

 テッドを同席させたのは間違いだったかもしれない。


「テッドを実験台にしましたね?」


 荒ぶる心を押し殺そうとして、失敗する。声が震えた。


「たまたまうまくいって、治ったからよかったものの、彼を危険に晒してしまったことには変わりありません。あえてこのような状況を作り出されたのなら、絶対に許されることではありません」


 隣に座るテッドが気遣うような視線を寄越す。こんな目をさせるために彼を同席させたわけではない。

 彼には領地で何の憂いもなく平和に過ごしていて欲しかった。彼は、巻き込まれただけ。それを黙って見ているわけにはいかないのだ。


 イケメンの顔がなんだ。キラキラがなんだ。

 腕を切られるわけでもなく実験台にされるわけでもなく。それ自体は自分自身に何も害をなさない。


 ライラは長い睫毛を上げた。

 真正面から見たイケメンの顔は、誰一人曇っていなかった。


「確かに、聖女様の仰られるとおり、彼に傷をつけるように命じたことは確かです。ご気分を害されるようなことだったかもしれません。けれど、極力負担にならないよう配慮はしたつもりです。傷をすぐに治せるよう聖女様のすぐ近くで──それが反対によくなかったのかもしれませんが。また、本来であれば必要のない回復薬も準備いたしました」


 少しむっとしたライラに気づいたのか、フリッツは困ったように微笑んだ。


「指の先に少し刃を当てた程度の傷には、本来使用いたしません。こちらで言うのは憚られますが、それなりにお値段のする代物ですから。少し洗って終わり、もしくは止血用の小さいテープを貼るくらいでしょう」


 え?


 ライラは大きく首を傾げた。隣を見れば、テッドも同じように首を倒している。

 ゆっくりと小さく挙手をして言う。


「あの、テッドは、腕をばっさり切られています」


 指の先に少し刃を当てた傷とは言い難い。

 隣でぶんぶんと首を縦に振る音が聞こえる。


「ここから、ここまで。ざっくりだ。痕も残っていないから証明しろと言われると難しいんですけど」


 とんとんと指で位置を指し示す。

 そこで初めてイケメンたちの表情が揺れ、動揺が見えた。


「な……!」

「どういうことだ! 本当なのか」


 その姿にようやく、彼らはテッドが受けた傷を知らないのかもしれないという疑惑を持つ。

 ロイは小さなざわめきを消すように、とんとテーブルを指の先で叩いた。


「君たちが信じてくれるかはわからないけれど、僕たちの計画は彼の指先に少し、紙で切ったような小さな傷をつけるというものだった。魔術で血を使うときにもよく行われるものだ。ただライラ嬢の幼馴染だということもある。不要だとは思ったが万一に備え、回復薬も準備していた。だが、君たちの話を聞くと、ずいぶんと状況が変わってくるね。もちろん君たちの話が本当であれば、だけれど」

「ライラ嬢が嘘を吐くようには見えないけどなあ」


 のんびりとキースが遮れば、テッドはわざとらしく溜息を吐く。

 きっと今周りにいる人間がどれほど重要な人物たちなのかわかっていないに違いない。図々しくも椅子にもたれかかった。


「わざわざ嘘なんて吐きませんよ。ああ、そういえば、もう一人、目撃者がいますけど。ほら、ライラが通い詰めてる立入禁止のガーデンの庭師」


 聞いてみてはどうですか、と言うテッドをしばらく眺め、ロイはもう一度とんとテーブルを鳴らす。


「……あれは嘘を吐かないだろうね」

「ご存じで? やっぱりあんな場所の庭師だなんて変な役職、知らないわけないと思ったんだ」


 王子殿下たちの前だというのに、がりがりと頭を掻きながら「まったくアルビーめ、ただじゃおかないぞ。大した役じゃないだなんて意味のない嘘を吐きやがって」とアルビーへの文句を漏らす。

 ライラはぎょっとした。


 やめて。アルビーは王子なのよ! テッドにも言っておくべきだったかしら。お願いだから変なこと言わないで!


 そんな心配をよそに、ロイは興味を引かれたようにテッドを見る。少し驚いているようだった。


「おや、そこまで親しい間柄に?」

「俺も野菜を育てていて、共通の話題も多いからですかね。話しかければ答えてくれますよ」

「ほう。あれは気難しいところもあるのに。珍しいことだね」


 思うことがあるのか、ロイはほんの少し考えるように顎を引いた。

 しかし、ライラが疑問に思う前に彼はぱっと顔を上げる。ライラがよく見かける眩しい笑顔だ。


「話を戻すが、僕もライラ嬢を疑ってはいない。麗しい君がそんなことをするとは微塵も思っていないよ。……他に、話を聞かなくてはいけない人物がいるね」


 ロイは重心をテーブルに載せる。全員を見渡したのち、内一人に話しかけた。

 そうなることを予想していたのだろう、呼ばれた側も身じろぎすらしない。


「ルーン、魔術師団副団長のゲルトだったな。テッド殿の指先に刃を当てるよう頼んだのは」


 一斉に集まった視線には可愛らしく目を丸くして。


「そうだねえ」


 ルーンは片眉を下げてそう頷いた。

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