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ヒロインの癒しはもじゃ頭の王子です  作者: 夕山晴


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中庭のパーティー1

 

「さすがリンよね」


 通路にあった姿見を目に留め、自分の着飾った姿を作った侍女を褒めた。


「いえ、そこまで化けさせたつもりはございませんよ。時間もあまりありませんでしたので、急造で申し訳ないくらいです」

「……遅くなったの、怒ってる?」

「そう思われます? ……せっかく滅多にない着飾る機会。ここぞとばかりに弄り倒す予定でしたのに」


 残念そうに溜息を吐いたリンに謝りつつ、ライラは充分すぎる格好に満足していた。


 編みこまれた長い金髪の髪は結い上げられ、白いうなじに下がるネックレスには大振りの宝石が一つ。聖女のイメージカラーの白色だ。水色のドレスの裾は前が短く、見える足首にもまた小さな宝石がついた細いチェーンがある。ヒールのある靴は宝石に合わせたのか白色だ。

 いつもよりは念入りに化粧を施した顔は、ドレスにも映える。


 こうして着飾ると、私の外見でも目の保養はできそうな気もしてくるから不思議ね。でも結局、他人の美しさのほうが、勝るんだけど。


 そう思って視線を向けた先には、正装に身を包んだイケメンが勢揃いしていた。

 服装のせいか、普段よりもキラキラ度は増している。


 ぎゃあ! 目が痛い! と叫んで逃げ出せるのならどんなにいいだろう。隠れて見守っていたいのが本音である。

 しかしライラには聞かなければならないことがある。


 拳を握りしめて進み出ると、気づいた彼らが微笑んだり手招きしたりとライラを呼ぶ。


「……ごきげんよう、みなさま」


 貴族令嬢たる挨拶を披露して気づく。

 目を伏せれば、顔を直視しなくてよいということに。

 おしとやかな女性だと思ってもらえれば何の支障もない。ライラは視線を落として、微笑んだ。


「やあ。パーティーの装いもとても良く似合っているね。急に開いたパーティーだったけれど、問題なさそうでよかった」


 ロイが声を掛け終わると、ルーンがライラの腕を取る。


「殿下、何言ってるの。こんなにかわいいライラを前にして。せっかくライラのお祝いだっていうのに、もっと盛大にすればよかったんだ」


 開催されたパーティーは立食形式で、王宮の庭師が腕によりをかけて手入れしている中庭で行われた。

 正式な、とは程遠い。ライラはほっとしていた。


「いいえ、私のためにこのような場を作ってくださり、ありがとうございます。外の空気を感じながら歓談できるのもとても嬉しいですわ」

「気に入ってもらえたようで嬉しいな。本当は、ルーンの言う通りもっと盛大にやることも考えたんだが、ライラ嬢はこちらのほうが喜ぶんじゃないかと思ってね。それにほら、この方が周りを気にせず気軽にライラ嬢と話せるだろう?」


 正式なパーティーであれば、片手に食事の皿を持ちながら、王子と話すことはできなかったに違いない。

 参加者も王宮に関係する者だけだ。王宮内で働く人間とともに、ライラをお祝いする内輪のガーデンパーティー。

 変にマナーを気にしなくてよいぶん、ライラにとっても気楽であった。


「聖女様。遅くなりましたが、歓迎パーティーも兼ねております。どうぞご自由にお過ごしくださいね」


 フリッツの言葉に、少し思い出した。

 前世で読んだ物語では、王城にきてすぐに歓迎パーティーをした話もあったような気がする。ただ、今の状況とは食い違っているようである。


 私がヒロインらしくないから、かしらね。


 ライラは素知らぬ顔で首を傾げた。


「……歓迎パーティー、ですか?」

「ええ、本当に遅くなってしまい申し訳ございません。本当であれば聖女様がいらしてすぐに行いたかったのですが……ご友人が怪我をされて気落ちされているようでしたので」


 王城に来てからのライラは、イケメンから逃げるあまり隠れてばかりだった。今は立入禁止のガーデンに引き籠っている。

 どうやら落ち込んでいると捉えられていたらしい。


 そして聖女の力が再現した今、ようやく”聖女”として歓迎されているわけだ。

 記憶にある物語上のライラもまた、歓迎パーティーの時点では聖女の力を思い通りに使えていた。


「そうでしたの。ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ございません。彼の元気な姿も見られましたので、もう大丈夫ですわ」


 ここぞとばかりに”彼”を主張して、にこりと笑えば、キースが視界の隅で肩を揺らして笑っているのが見えた。


「彼……テッドと言うのですけれど、王宮内に留まっているようなのです。ロイ王子殿下、ご存知ありませんでしょうか?」


 ロイは小さく瞠った。長い睫毛が数回上下する。


「──ふう。最後まで隠そうとは思っていなかったけれど、こうも真正面から言われるとは思ってなかった。驚いたよ。……キース、君かい?」


 とうとう音を立てて笑い始めたキースをロイが窘めた。


「なんだかライラ嬢がいつもより元気がないような気がしていたんだ。まさか知っていたなんて」

「では、」

「──ああ。彼は私が呼んだんだよ」


 ロイは本当に隠す気がなかったようで、すぐに頷いた。

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