表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

騎士団長、苦難の令嬢生活③

侍女の話を聞いていると、アリアは、相当なわがまま娘だったようだ。

俺も呆れてしまうほどの。


自分が気に入らないことがあれば、癇癪を起こすのは日常茶飯事。その癇癪も幼い子がするような泣く、喚くだったらまだ可愛い方で、ものをなげつけたり、暴力を振るったりなんてこともよくあったらしい。

また、ドレスや宝石が大好きで、気に入った物は全て手に入れないと気が済まなかったという。



あ、そいうえばとサラが思い出したように言う。



「以前、紅茶をこぼしてしまった侍女がいまして─」




─ナナリーは、最近、この屋敷に配属された侍女である。家は、貧しく、仕送りをするため毎日忙しなく働いている。

今は、アリアに午後のお茶を持っていくところだ。


ゆっくり深呼吸をして、慎重にノックする。



「アリアお嬢様、失礼致します。」



そこには窓の外を眺めるアリアがいた。


アリアお嬢様は、本当に美しい。私も初めて会った時には、息を呑んだ。

でも、その美しさがたまに怖い時がある。


慣れない手つきでカチャカチャとお茶の用意をする。


今のところ失敗はしてない。

けど、この間もアリアお嬢様の逆鱗に触れて辞めざるおえなくなった侍女がいるって聞いたし…。

私も気をつけないと…。


考えれば考えるほど手が震える。


だめよ、落ち着いて…落ち着いて。



「どっどうぞ、お嬢様。あっ!」



手の震えにより紅茶が波打ち、アリアの手に紅茶を1滴こぼしてしまった。


あ…あ……。どうしよう、どうしよう、どうしよう。


呼吸が乱れ、血の気が引いていく。パニックで頭が真っ白になる。


あ…謝らなきゃ、とにかく拭くものも…。



「申し訳ございません!申し訳ございません!アリアお嬢様!」



頭を地面に擦り付ける。



「すぐに拭くものと冷やすものを─」

「はぁー。」



その声で背筋が凍った。

すごく冷たい、冷酷なため息…。

侍女は恐る恐る顔を上げて絶望した。

アリアが侍女を見る目は、まるで虫けらを見るようなそんな呆れた目をしていた。



「あ…あ…本当にすみませ─」

「手を出しなさい。」

「え…?」

「出せって言ってるのよ、聞こえない?」



怒鳴る声がピリピリと頬をなぞる。


怖い…何をされるのか分からない。

けど、従わないと、もっと大変なことになる。


侍女は、目を瞑りながらゆっくりと両手を差し出す。


アリアは、熱湯の入ったポットをつかみ、それを侍女の手に躊躇なくかけた。



「あ゛あぁぁ!」



痛い!痛い!

熱さと痛さに悶える。



「うるさいわよ。」



侍女が悶え苦しむ姿を満足そうに見る。



「あなたは、クビよ。あなたは、私にそのくらいのことをしでかしたんだから。」



あ…あ…謝らなければ…謝らなければ…

…逃げたい…逃げたい、逃げたい、逃げたい。



「すみません、すみません、すみません……」─




「─なんてことがあったらしいですよ?覚えておられませんか?」



そんな恐ろしい女なのかアリア…。

そりゃ侍女たちも怖がるだろうな。

そんなことがあったのにサラは、普通に話しかけてくる。俺を…アリアを怖くはないのか?



「サラは、私が怖くないのか?いくら記憶が曖昧だからって、今までもそんなことがあったんだ…でしょ?」



サラは、「んー」と少し悩んで、



「確かに、全く気にならないわけではありませんが、なんだか今のお嬢様は、違う気がします。」

「違う…?」

「私に『ありがとう』と言ったり、今みたいに私のことを気遣ってくださったり…なんだか、別人みたいに…。」



ボソッつぶやく。


中身が違うことがバレてしまったか!?と少し焦っていると



「…って失礼ですね!申し訳ございません!そんなことあるはずないのに!」

「あはは、そっそう、よ!」



相変わらず下手な笑いだ。言葉遣いもちょこちょこ男が出てしまう。


…しかし、この侍女は、主人のことをよく見ているんだな。そんなにひどい主人なら見放しても良いと思うが…。従順な侍女なんだろう。


考え込んでいると、唐突に「あっ!」とサラが大きな声を上げる。



「そうだ!私ったらすっかり忘れてました!お嬢様の目が覚めたら、直ちに旦那様に報告するようにと言いつけられていたのに!」



侍女は、慌ててカップを片付ける。



「きっと旦那様もお嬢様とお話したいと思います!…あ!でも、お嬢様は、あまり動かれるのは良くないですよね。ここに呼んでまいります!」



父親か…どういう人なのか確かめておきたい。

父親もアリアに似てわがままなのだろうか?いや、アリアには、ほしいものをなんでも与えていたようだし、逆に気の弱い人とか?

なんにせよ、直接会ってみるしかないな。


そんなことを思っているとサラがドアノブに手をかけるところだった。

そこで、アランは、ハッと気がついた。


いや、待てこれは…



「まって!」



俺の声に驚いて、サラは何故か腕を顔の横まであげてしまっている。



「どうされました?」



これはチャンスだ。部屋の外に出れる。

寝込んでいたようだし、なかなか外に出してくれなさそうだが、俺はすぐにでも動いてレオたちの情報を集めたい。

サラの心配は、ありがたいが、少しでも早く会うためにも色々と見ておこう。

サラ以外にも話を聞いてみたいしな。



「お…じゃなくて、私がお父様の部屋に行く、わ。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ