お約束なのである。ラスト。
変態男がいた。上手いこと誑かして手に入れた妻を寝取られ、逃げる彼女とまともな間男を追いかけていると……、トラックにはねられ死んだのは。
お約束なのである。
ピロケースに意識が宿っている、変態ヒューマンシーツ掛け布団カバー男。次こそは長生きをするのだと気合いを入れた。夜の運動が疲れるのか、昼間はおとなしく、ホットドッグの具になったようにスヤピーと寝ている刺客。
ピロケースならば大丈夫。美女の柔らかな頬が密着♡いやいやその谷間にギュウギュウ♡く、唇が!走り出すと止まらぬ想いの、
変態ヒューマンシーツ布団カバーピロケース男。
お約束なのである。
ああ、疲れちゃった。カバーリング変えようと穴の空いたシーツと、掛け布団カバーを取り替える美女。クルクルと丸めてゴミ袋にインしたのに思わず震えそうになった、
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男。
さぁ、寝ようかな、美女はうさ耳カチューシャをつけ、ピンクのフリースもふもふうさ尻尾付き短パンパジャマに着替えてベッドに入る美女。もちろんブラックタンのロングコートチワワも一緒である。
お約束なのである。
しかし今日は安全安全、美女の頬の感覚を甘く感じつつ、楽しむ、
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男。
今度こそはと気合を入れた。
「ううーん」
おお!何という幸せ。変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男を、ギュゥゥゥと胸に抱きしめる美女。そして……
「ふうん」
コロンと寝返り打つ。その時手から、変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男を、ペイ!と床に落としてしまう。ああ……残念無念。とポスンとスカした音出す、
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男。
しかし今日は安全安全、奴はここには来ない。ブラックタンのロングコートチワワはベッドに上がり降りは美女の手によって成されているからだ。明日には拾い上げ定位置に戻るだろう、そう考えている、
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男。
と……、刺客がベッドから飛び降りた。
お約束なのである。
ぬぁんとぉぉぉ!驚く
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男。
したしたと近づき、なぜか、伏せの体勢で尻を上げ尻尾をフリフリフリフリ……!
「う……うおん♫」
ピョーン!華麗なる咆哮の後の大ジャンプ!それはまさに獲物を捉える猟犬!咥えられた!
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男!
お約束なのである。
ブンブンブンブンブン、先ずは振り回し!
ポーン!シュルルル!、フローリングを滑る
ダッ!ボスン!上から飛びかかり噛み付く!
この繰り返しが続く深夜の部屋!
ヒー!や!やめろやめろ!破れたら破れたら!
お約束なのである。
ビッ!カリカリカリ、コリコリコリコリ
ブラックタンのロングコートチワワは見つけてしまった!ジッパーのツマミ部分を!チワワはコレを噛み噛みするのに命をかけている。
思いっきり激安店お買い得三点セットは、そもそもぺらぺらな生地なのである。
お約束なのである。
しかも見切り品ワゴンなので、劣化しているのは。
お約束なのである。
ビビビ!ビビビ!ビリリリリ!
盛大な音が立った。
カリカリカリカリ、コリコリコリコリ……
壊れて開いたジッパーを噛み噛み噛み噛み……。
お約束なのである。
こうして朝が来た。
「もう!セドリック!ダメダメでしょ!」
床に転がる中身が半分出ているそれを見ながら、美女は仕方ない、また買ってくるわね。とブラックタンのロングコートチワワに、メッと言った。
お約束なのである。
こうして……
変態ヒューマンシーツ掛け布団カバーピロケース男は生涯を終えた。勿論、先に逝ったシーツと掛け布団カバーの元にピロケースも向かった、そしてソレを……。
触覚をヒュンヒュンしながら、背中を照り照りさせつつ、ジーと隙間から眺めていたのは……
お約束なのである。
終わり。