お約束なのである、その1
3話で完結してます
変態男がいた。上手いこと誑かして手に入れた妻を寝取られ、逃げる彼女とまともな間男を追いかけていると……、トラックにはねられ死んだのは。
お約束なのである。
目が覚めると転生なる間にポツネンと立っていた。
お約束なのである。
真っ白な光の部屋という場。
お約束なのである。
スリーサイズが、ぼっ♡キュン♡ボボン♡の、プラチナブロンドの美女神が出てきたのも、
お約束なのである。
男は産まれ変わったら、美女の家の品物の形にしてあげまーすと言われたのは……、
ちょっと違うのである。
形?そこは無敵な勇者のヒューヒュー!ではないのか!と聞いたのだが、そんなのは、あちらこちらに満載されてて、空きがありませーん!と言われたのは、
ちょっと違うのである。
品物なので、生物ではありませーん。だけど美女に密着!出来る形。そして3回、生まれ変わる事ができまーす。
この話を受けなければ、美女の家のゴキの身に堕ちるがいいと脅されたのは、
生前の行いが悪かったからである。
ゴキになりカサカサ逃げ回った挙げ句、スリッパで殴打される事を、避けたかった変態男の道は決定していた。
目が覚めると、四角いピシッとした感覚。ダンボールにクルクル巻かれて少しばかりベリバリになった、ビニール袋の中にいた。
『シーツ、カバー、ピロケースお得な三点セット』と丸いシールが貼ってあり、多くの仲間と思いっきり激安な店の、しかも見切り品ワゴンの中で、規則正しく立っていた。
変態ヒューマン男は激安三点セットに生まれ変わっていた。性根が変態だったので美女に買われて、それだけで妄想マックス、幸せを感じている。ここで美女が買うのは、
お約束なのである。
エコバッグの中にワンコカリカリの袋とギュウギュウに詰め込まれ、マンションの一室にたどり着いた、生前変態男。
ワンワン!ただいま、セドリック。かわいいモフモフのブラックタンのロングコートチワワが、ハッハッハとしながら、美女を迎える。
お約束なのである。
さっ、交換交換とアチコチ穴が空いたカバーリングを取り替えたのは、
お約束なのである。
シーツに意識体が宿っていた変態ヒューマン男は、ウキウキルンルンでその時を待っていたのである。そして寝る時間となり、モフモフフリース猫耳パーカー、ホットパンツにはお尻尾付きのパジャマに着替えた美女が、彼に身を任せたのは。
お約束なのである。
セドリック、もうホリホリホリしちゃだめよと、抱きしめていたブラックタンのロングコートチワワを、一緒に寝るために、傍らに置いたのは、
お約束なのである。
ええ!犬ー!シッシッ!と追い払いたい、変態ヒューマンシーツ男。柔らかな感覚を楽しもうとしているのに、とんだ邪魔者である。しかも!美女がスヤスヤ寝息を立てた頃……。
お約束なのである。
ホリホリホリ!シャッシャッシャッシャッシャッシャッー!
ブラックタンのロングコートチワワ、セドリックがなんと穴掘りを始めたのである!
お約束なのである。
ブラジルに行くんだ!的なノリで!
ホリホリホリ!シャッシャッシャッシャッシャッシャッー!
お約束なのである。
なので美女は思いっきり激安店で、お買い得三点セット、しかも見切り品を買っているのは、
お約束なのである。
ひー!やめてくれ!や、破れたら破れたら……、変態ヒューマンシーツ男は発声は出来ない!しかし!
ビ、ビリリリリー!
お約束なのである。
思いっきり激安店お買い得三点セットは、そもそもぺらぺらな生地なのである。
お約束なのである。
しかも見切り品ワゴンなので、劣化しているのは。
お約束なのである。
翌朝……、
「あーあ、穴空けちゃってぇ、使えないよセドリック」
お約束なのである。
変態ヒューマンシーツ男はこれにて終わる……。
2回目に続く。
2.九時
ラスト・10時
で終わりなのである