冒険の始まり
『私は旅に出た。
大きな鞄に、大きなリュック、持てるだけ
精一杯の荷物を持って
大いなる冒険へ乗り出した
冒険は孤独だ、怪我をしても助けてくれる仲間もなくただ耐えるしかない。
それでも私には闇の中一筋の光が射している
この孤独乗り越えて
故郷の仲間の記憶に永遠に残る旅としよう』
ガッタン
ゴツ
「イッタ! ツ 〜〜、ちょっとおじさん
もうちょっと優しく走らせられないの?」
「阿呆!
これ以上ゆっくり走ったら止まるワイ」
「むむ、〜」
仕方ない、私はおじさんから貰った紙とペンで書いていた自伝書を閉じる
馬車の荷台は相変わらず薄暗く
ボロ布が破れた箇所から光の線が伸びて所々を照らしていた
荷物はコの字型に置いてロープで固定してあるものの先ほどのように稀に落ちてくるから
安全とは言い切れない
やはり故郷の外は危機に満ちている
ボロ馬車から外を見るが故郷の風景とは違う森が広がっている
とてもおかしな感じだ昼前に村をでてまだ夕方にもなっていないのに
私の慣れ親しんだ土地の面影は少しも感じられない
私の私たちの種族は他種族との交流をほとんど持たないし土地から出る事もない。
何故かといえば、必要がないからだ
食事は森に住む者達から貰い
寝床も森の植物の中で
パートナーは生まれた時には決まってる
村の中に全てあるので外に出る理由がない
と言うか、外に出るなんてみんな考えた事もない
で、そんな引き篭もり種族の私が何故おじさんの馬車に乗って故郷をでたのか、
それにはもちろん深い深い深刻な理由があるのだ
私たちは生まれた時にはパートナーが決まっていると先ほども言ったが
詳しく言えば、生まれた瞬間にパートナーが分かるのだ。
先にパートナーが生まれていれば
先に育ったパートナーが
『今生まれた子が私の番』と認識するし、
生まれた子も物心つく前に番だと認識するのか相手に特別懐く
ほとんど一緒の時期に生まれる番いもいるが
多少誤差がある場合もある
しかし、大体7〜8年以上離れる事はない
で、私はいま16歳なのだが………
番いがいない。
7〜8年の倍の年齢なのだが番いが生まれない………