追憶
地下鉄の駅に電車が滑り込み乗客がドッと吐き出される。
吐き出された乗客と同じくらいの人たちが電車に乗り込むと、ベルの音が鳴り響き扉が閉められ次の駅を目指して走り出す。
次の停車駅名が流れスピードを上げる。
トンネルの出入り口から吹き込んだ風が車両をガタガタと揺らした。
え? ああ…………夢かぁ…………。
地下鉄の線路上に放置され塗装が剥がれ錆びが浮いた車両は思い出す。
日の光が届かない筈のトンネルの奥に、出入り口から眩しい光が差し込んだあの日から此処で止まったままである事を。
眩しい光が差し込んだあと凄まじい熱風が押し寄せ満員の乗客を物言わぬ死体にする。
車両の中に折り重なり散らばる白骨を眺め、忙しかったが充実していたあの日々を思いだし車両はまた眠りについた。