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箱の中にあるもの
そっと目を閉じて意識を空っぽにしていく。
暗闇の中に一つの箱が現れる。
箱の中からは、人の声?
沢山の声のようなものが聞こえるが、なにを言っているのかはわからない。
それは、どこかで聞いたような声でもあるし、聞いた事のない声にも思える。
箱の中にあるものは分かっている。
いや、正確には覚えていないと言った方が正しいかもしれない。
でも、箱の中を確かめるために来たんだ。
箱の中の月を見たくなったのだ。
意を決して箱の中へ入るしかない。
深呼吸をする。
そして、ゆっくり箱の中に意識を集中する。
ゆっくり入ったはずが、かなり高速に移動しているのがわかる。
モノクロームの景色が高速で流れていく。
みんな見覚えのある景色だ。
たくさんの声も高速で流れていく。
もっと奥だ。
ずっとずっと奥まで進んでいかなければ。
どんどんどんどん沈んでいく。