第五話 コネルさん最強伝説の始まり(笑)
扉の前に立つと外に廊下が続いていた。廊下の両脇には白い薔薇らしき花が咲き乱れている。そしてその廊下の先には城がそびえ立っている。その色は美しく透き通るような白・・・というより銀色?光を受けて輝く様は、まるでドラゴンいや、竜、といった方がしっくりくる。つまり竜が国を見守るという感じだろうか。勝手な妄想だけど。
メイドさんの後について素知らぬ顔で兵士の横を通り過ぎようとする。内心バクバクである。扉の外に一歩踏み出そうと、足を上げた、そのとき、
「・・・待て、そこのメイド。」
・・・はい。テンプレです。そんなことだろうと思いました。私はゆっくり顔を兵士に向ける。
「何でしょうか。」
「お前、新入りか?見ない顔だな。」
そう言って爪先から頭のてっぺんまでジロジロと見られる。こんなにジロジロ観察されたのは初めてだ。あまり居心地はよくない。
「はい、その通りです。」
「だが、お前の様なメイドは今日ここを通っていないと思うが?」
ヤバいどうしよう。言い訳が思いつかないっ。冷たい汗が出てくるのが分かる。私は割と口下手なのだ。と焦っていると、
「まさか今日ずっとここに立っていたわけではありませんよね?他の兵士が扉番をしているときに通っただけです。」
コネルさんが相変わらず見事な迫力で兵士に言った。
「う、うむ。だが・・・」
「兵士様、私が誰だかお分かりで?」
兵士が何か言おうとしたのを遮って、コネルさんが兵士を見据えて強めの口調で言い放った。
「はっ。姫様付メイドでありながら、王国軍の少佐でもあり、王妃様とも知古の仲であるらしいと聞き及んでおります。が、しかし・・・」
「なら分かりますよね。私がこの者を通すといっています。これ以上関わるのなら、明日首が飛んでいても文句は言わないですよね?」
ひぃぃぃ首が飛ぶ!?それは仕事上ですか、まさか物理ですか。
「も、申し訳ありませんっ、どうぞお通り下さいっ。」
兵士は顔を真っ青にし、慌てて私を通してくれた。なんかすみません・・・。
「ああ、それとここであった事を誰かに漏らすようなことがあれば、分かっていますね?」
「ひっ了解しました、私は何も知りませんっ」
ゆるりとコネルさんが振り返る様は、まるでドレスを翻す淑女で、美しく洗練された動きで、私は思わず見とれてしまった。ただ、その笑顔と発した言葉は殺人鬼の持つ凶器であったが。兵士は今度こそ真っ青を通り越して顔を紙のように真っ白にし、敬礼のまま動かなくなった。
「行きますよ、キノ様。」
「は、はいぃぃ。」
私は慌ててコネルさんの元へ小走りに駆け寄る。声が裏返ったのは言うまでもない。コネルさんは絶対に怒らせないようにしよう、そう決意しコネルさんの顔色を窺う私であった。