プロローグ―アインス―
前回の続きです…今回は礼儀正しかった《兎》の話です。
楽しんでいってくださいね。
月の光に照らされた深く濃い霧の中…。
数十人…いや、数百人か…。
こっちの情報が漏れてたか?ならば、早めに《毒蛇》に知らせなければ。
さて、仲間を連れて《毒蛇》の元まで戻るか、このまま牽き返し《毒蛇》に情報を伝えるか…どちらを選択しようか。
前線の仲間か未来の仲間か…ボスとしては厳しい判断だな。
今の組織を守るか未来の組織を守るか…。
どちらも捨てがたいがどちらしか選べない…苦渋の選択だな。
《毒蛇》ならどう答える…?いや、今はあいつなんてどうでもいいか。
今は俺の…ボスとしての判断か…。
『《魅蝶》…お前ならどうした?やっぱり、今を守るよな…。』
《魅蝶》と呼び一言呟き私は一歩…二歩と前へ歩き進んだ。
前線の激しい血の匂い…ここでは何人殺られたんだろう…。
《番人》…私たちと敵対する用心棒。
私たちに匹敵する力を持ち金さえあれば働く用心棒。
『うわぁぁ…!!や、やめてくれぇぇぇ!!』
《番人》に捕縛され殺害されていく仲間たち…。
『た、たすけ……まだ…しに…ない……。』
命乞いをし…誰にも届かず闇に消える…。
命乞い、悲鳴…それぞれが恐怖と重なり自信を殺していく。
助けれなかった…と悔やむことはない。
ここで死んだのであれば運命なのだから。
なら、なぜ私は助けに来てるのだろうか…矛盾しているな。
黒の性格と白の性格…二つが混ざり合い溶けていく…私はこのまま帰れるのだろうか…家族の元へ…素のままで何も隠さない偽りのない自分のままで。
『ボス!何故ここに…!?我々は優勢です…怪我のしないうちに…う、うわぁぁぁ!!』
部下が一人《兎》に情報を伝え息を引き取った…。
また、一人消えてった…自らの判断ミスで…だが、私は悪くない…。私は正しいのだ。正しいのだ…。
『《棺》解放…自らを崩し何事も縛られるな…《黒兎の過去時計》』
《兎》の周りが少しづつ遅くなりやがて時を止める…。
自らを壊し《時》を操る力。代償は自分…。
心を黒に染めた私は止められない…殺人衝動が…また……。
『あははは…この匂い…最高だ。さあ、《血祭り(パーティー)》の始まりだ…』
赤黒く染まった眼。口を大きく開け大きく笑う。月は嘲笑うかのように見下し…また、今日も葬るのをじっと見ている。
さあ、最高のパーティーの始まりだ…狂い狂ってすべてを殺せ…家族も友も愛人もすべて。
それが宿命であり運命なのだから…。そして、お前は血の海の中一人で泣いて後悔し崩れてろ…。
心の中で…いや、頭の中で黒い兎が嘲笑いながら私を狂わせる。
ここは、パーティー楽しい宴だ正気を失い狂いながら暴れろって私に問いかける…。
『今日は特別だ…黒になってあげるよ…。すべてを捨ててね…。』
《兎》は時計の形をした《棺》を手にし血に染まった赤い朱月の下最狂の鬼となった……。
どうでしたか?《兎》があんなになるなんて思いませんでしたよね?次回も楽しみに待っていてくださいね。