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正義の過失(あやまち) ~大血修学旅行編~  作者: 総務省
第1編 大血修学旅行
8/11

第二日目ー3

3

~古川 過去(パスト)場面(ローケル)

首里城の下、目の前で夏世と大野先生・カメラマンの銃撃戦を古川は外の窓から覗いていた。雨が目に入ったり銃に水が浸透してきたりと気になることが度重なったが、古川は城の中に入ろうとは思わなかった。確か自分は国から派遣のテロリストで、あの二人の仲間であることは違いないのではあるが、見たところあの夏世は最強だ。こんなとこで命は落としたくないし、ここで(ビー)舞曲(ワルツ)を発動したところで全軍が破壊されそうな気がする。そもそも俺はいや俺たち学生国派遣組は本当に好きでこんなことやっている訳ではない。もちろん家柄の問題で好きでやってるやつもいる。しかし普通の場合、国に家族を人質にさるのだ。あれは4年前のこと。俺がまだ中1のときだった。

などと考えているうちに、古川は過去に感慨の中に沈んでいった。

2010年4月10日(土)、家は俺だけだった。家は共働きで母親も父親も土曜も出勤で兄貴も高校生で土曜講座とか言っていた気がする。そんな中、その午前中に 黒いスーツの怪しい男たちが入ってきた。そして

「今日から我々""国の使命に基づいてはたらけ。"国"に入るということはエリートだ。親さんにももう言ってある。大賛成のようだったぞ。学校への手続きも私がやる。」

「は?なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだ。エリートだかレシートだか知らんが、俺はそんな面倒なことやりたかないし、普通の青春を味わいてぇ。」

「ほぉ。これでもか…」

男はにやついて銃を突きつけられて続ける。

「何もお前がここで死んでも俺たちに何のメリットもねぇ。いいかこれは交渉だ。お前がもし本当に意地でもやらないというのならば、お前の母親を殺す。」

「っっっ!!」

「ただそれは恐喝にあたってしまう。これをもし交渉的にするのであるならば、もしお前が入ってくれるならある程度の地位を与えることとしよう。これでどうだ?」

「交渉にのれば本当に家族に支障は与えないんだな?」

そしてあの日、俺は条件をのみ国へと派遣された。家族は国からのスカウトと言って、喜んでこの派遣をたたえた。それから俺は国のテロ役人として働くこととなった。殺したくなくても、家族のために殺してきた。俺はこの国のすべての闇を知った。

などと回想している間にカメラマンも大野先生も目の前で撃たれ、蜂舞曲(ビーワルツ)が始まろうとしていた。古川は今はそれを見ていることしかしなかった。

"ここは、交渉(ネゴーシエイション)だ!"


(あずさ) (ナウ)場面(ローケル)

コロン島極楽荘。

「おう、梓!帰ったか。」

「はい!お父様!すぐにお手伝いいたしますね!」

そういうと梓はこっそり気絶した男二人をある部屋に入れ、手錠でしめた。

「またコレクションが増えた。」

悪女がごとく梓は呟いた。

「お、おう、これはこれは6番署長さんじゃねぇか。お嬢ちゃん、今日の収穫はいいぞー」

最初から手錠でつながれていた痩せこけていた男がいった。もう飢え死にしそうであるのににやつき、悪のような笑みをこめて。

「こんな大物をここにおいて、今度はこの島で何をしようとしているの?」

「もうそこに転がってるやつと同じ運命を辿るだろう俺がお嬢ちゃんに教える義理はないんだがなあ。逆に死ぬ前にこの計画を教えてやるのもいいかなとも思ってきたよ。」

にやつきは止まることなくこの男は言った。そんな男の首に梓は剣を突きつけ、

「いいなさい。」

「ひーひっひっ、お嬢ちゃん、相変わらず怖いねぇ。」

「あなたたちに言われたくない。」

「そうかならば教えてやろう。次の計画は第23にあたる、期待高校………」

「あずさー、なにしてるのー?」

「あ、はい。今いきます。お母様。」

「猫かぶりもいいとこだな。あずさちゃん」

「明日、じっくり聞かせてもらうわ。」

梓は剣をしまうと、その部屋を出ていった。

「おい、署長、なにやっとるんや!起きろや!」

「んー、ああ、ってえ!!ここ、どこ!?」

「お前らはあの梓に拉致されたんや。」

「って!なんであんたも捕まってんの!!2番署長だろ!確かあんた!」

「まあな。いいか、お前、脱出策を考えるぞ」

「わ、わかった!」

どちらが正義かわからなくなるような闇の世界が今、ここコロン島で波乱を生もうとしていた。


夏世(かぜ) (ナウ)場面(ローケル)

「こ、こうしょう!?」

まさかスパイテロリストがそんなことを言い出すとは夏世は思っていなかった。確かにかつてイギリスであったテロで交渉によって解決したテロがあったとも聞いたこともあるし、そんなドラマは見たこと無くはなかったので、自然に感じてしまった部分もあったのだろう。夏世の目はその2つの感情の"迷い"とも言えた。

他にもこれが古川だったという理由もあったのだろうか。それともそれは予想済みだったのだろうか。

「交渉にはのるわ。私もこれだけのテロは手に負えないかもしれないし、これだけを殺すわけにもいかない。」

「えーい、やっぱ強気ですねぇ。じゃあただちに交渉をしましょうか。すべてのテロリストを退避させます。だから俺を殺さないでください。」

「ずいぶん下手にでるのね。そんなに命乞いをしたいの。」

「まあね、俺はこんなところでは死んでられないですから。」

「でもなんで私があなたを殺すと思ったの?」

「さっきの話、全部聞いてますから~。」

「へぇ。まあいいけど、夢莊は殺させないから。」

「ご自由に~。」

そして古川は腕に腕時計ようにしてあるマイクに目をやると、

「全軍、退避。」

「「ええ!蜂舞曲(ビーワルツ)ですよ!署長なぜ!」」

「「ここまできて!なんですか!」」

いろんなところからのヤジが飛び交った。

「うるせーー!!!!!!お前ら誰にもの言ってやがる!殺されてえのか!!」

「「「…」」」

古川の雄叫びとともに、すべてのヘリが退避していった。まるで古川を恐怖とともに避けていくがごとく。

「あなた、国でなんなの?」

「ふっ。あんたのことも知っちゃってるから少しは国についても教えてやるよ。国のテロ組織は総長と署長と部員でなっている。俺はその中で7番署長だ!」

「人を殺して、そんなたのしい?」

このとき、夏世の目は冷酷で虚ろなものであった。古川に対してだけでなくこの世界を見下すがごとく。

「お、お前にはわかるかよ。俺のことなんて。」

古川もまた、虚ろだった。

雨の止んだあとということもあったのだろうか。確かに雨が降っていたということもあって河川やの流れるせわしない音、マンホールの荒々しい音、海の荒波、水溜まりの上を容赦なくかけめぐる自動車などがあり、世界がうるさいということもあった。だがしかし夏世と古川が空でのこの出来事に気づいていないのはどうであろうか。空では激しい戦闘が始まろうとしていた。その戦闘場が刻々とこの首里城までも迫ろうとしていた。

そしてついに、ドップラー効果もあり二人の耳に響く。

パンパン

銃声。話し合っていた二人が空を見上げた。

「ちょっと!あれどういうことなの!」

「俺にもわからない!もし俺の命令を聞かないとすれば…まさか!」

ぽわわわーん

謎の音ともに神秘的な青い世界が広がった。夏世の能力なのだろうか。夏世の目も赤くなっている。鋭い何事も見破る目のようであった。

「"見破(ルっキング・ブレイク)"」

一瞬だけ光線が目から発射され、二つのヘリを貫く。

「見えたわ。片方は夢莊が乗っていたわ。」

「なんだって!?どういうことなんだ!あのヘリは俺たち国のものだぞ!」

「夢莊は失踪したあなたを助けるために、宮殿を突破したのよ!!」

「え!?」

ーー夢莊のおせっかいが俺を追ってくるのは予想はしていた。しかしまさかここまでとは。確かに高校入ったときからの仲といえ、いやでも!俺たちは敵なんだ!

などと思っていた古川だが、目からは涙が出ていた。

「む、夢莊、、、」

「あなたとの交渉もここまでかしら。交渉は破棄のようね。殺そうかしら。」

「…」

膝をつけて、泣きじゃくる古川に夏世は容赦なく銃を向けた。そのとき、

「うわー!!!!!」

狂人のようになった古川が夏世に飛び付いてきた。いきなりのことに夏世は回避できず吹き飛ばされ、銃を手放してしまう。角でぶつけてしまい、少しひるでしまってるのもあって動けなかった。

ーー急がないと、夢莊が!!

そんな一心で夏世は銃を拾おうと必死で動こうとした。しかし銃は踏みつけられ、目前に赤目の狂人が立ちはだかった。

「はーはっっ!俺がこれまで何人殺してきたと思ってんだ!夢莊一人に何を思うことがあるんだ!!」

そういって古川が夏世に馬乗りになり、銃を向けてきた。

「夢莊はずっと、あなた一心だった!あなたに、あなたに今闘ってる夢莊の気持ちがわかるの!」

ペチン

かつてないような表情の夏世は感情的に古川の馬乗りにから逃れ、頬を思いっきり叩いた。再び古川の目からは液体が流れていく。

「だから私はあなたを殺せない!夢莊の真剣な目を見てしまったから!!」

「俺は横山をころしている!!!」

その大きな一声とともに世界は静寂に包まれた気がした。夏世も目に涙を浮かべていた気がした。

「俺はこの期に及んで命の差別はできない。」

そういうと古川は銃を自分の頭へと向けた。

バリン

銃は弾けとんだ。

「やめなさい。あなたがどうであれ、夢莊は今、あなたのために闘ってるの。」

「…」

「交渉は続行とするわ。聞くけど、もう一つのヘリは長い金髪の女が乗ってたけどなんであんたの命令に従わないの?」

この一言同時に古川の顔は青ざめた。

「お、俺にはどうしようもできない。そいつは総長の下で代理として働くテロ組織ナンバー2にあたる……」

「な、なんでそんなのが!」

「わ、わからない。その地位を総長代理。コードネームを"最強(ストロンゲスト)"」

雨はまた振り出し、いつからか二人の涙と同化させているような気がした。二人のこのやり取りの中でも空の闘いは起こっていた。

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