第二日目ー2
2
~夏世 場面~
ある城の下、ある3人の影が降り立った。夏世、大野先生、カメラマンである。
「お、おまえ!!何をした!!」
「ちょっとした瞬間移動よ。ここに古川がいる信号が出たのに、いないじゃない。そもそももっとあんたたちの仲間がいると思って覚悟してたのに。」
「お前、何者なんだ!!なぜそんな魔法のようなことができるんだ!」
「いやあんたたちに教える義理もないし、魔法でもない。科学的に説明だってできる。」
「なぜ俺たちの計画に邪魔をした!」
「いやでも、本当に国のやり方にはあきれたわよ。まさかここまで最低だったなんて。あなたたちにこのままやらせとくのも、嫌だけどそれが私の使命なの。計画ならここまま続けなさい。私は別に古川を助けに来た訳じゃないから。もしかしたら古川も…と思ってね。」
「今回の計画を邪魔したのはお前じゃないか!だいたいこのまま計画を続けさせてもらうとすればお前もここで殺す!」
「勘違いしないで。あなたたちの期待高校の修学旅行へのテロ攻撃はそのまま続けて。だけどあの男、曾右 夢莊だけは殺させないし、私も死なない。」
「それは俺たちの計画に背くということになるんだが?」
「どうも話し合うことができないみたいね。なら私とやりあってもいいけど。あなたたち、生をもう乞うことはないの?」
男は二人顔を見合わせて
「「ハハハハハハハハハ!言ってくれるじゃねえか。女!!」」
夏世は睨み付けた。
「…」
「女、蜜蜂って知ってるか?」
「…」
「蜜蜂は確かに一匹では弱い。だが蜜蜂と蜂の最強である熊蜂が闘ったらどうなるか知ってるか?犠牲は多くあっても、勝つのは蜜蜂だ。」
眉間にしわをよせ、気味悪くにやついて、カメラマンは続ける。
「それはなぜか。蜜蜂の集団行動の規模が他の蜂には比にならないくらい大きく、強いからだ。俺たちはその蜜蜂と一緒だ。国という大きな集団のな。」
カメラマンはポケットに手を入れた。そしてあるものを取りだし
「これが仲間を呼ぶ合図、笛だ。これを鳴らした瞬間、お前は鳥籠の中の鳥の四面楚歌状態に至る。どうだ。」
バリン
「「………あぁ。」」
目の前の出来事に大野先生、カメラマンは立ち尽くした。
「壊しちゃった~。ごめんなさいね。」
ムカつかせるがごとく、夏世は超能力的な能力で笛を粉々にした。
それから世界は瞬間的だった。
大野先生は咄嗟に銃を向ける。それを容赦なく粉々に破壊する。その隙を見て撃つカメラマン、夏世の前に謎の盾ができたかのように当たらず弾かれる。
「遅い」
とだけいって夏世は回り込んで見えない刃でカメラマンを切る。血が飛び散る。
「ぐあー!!!!!」
倒れこむカメラマンの持っていた銃を取り上げ、カメラマンに打ち付けていく。血が吹き荒れる。
「うあー!!!!!!!!」
そしてカメラマンは
「こ、この人殺し…………」
「死ね」
パン
13発目で完全に息が途絶えた。
銃を失った大野先生は立ち尽くしていた。そして夏世はその大野先生に銃を向けた。そのとたんに大野先生は夏世に向かってがむしゃらに走り込んできた。意外な行動に戸惑い、夏世は撃つのも後れて外した。大野先生は飛び込んできたが瞬間移動で何とか回避する。
「ふぅ、やるじゃない。でも何度あがいでも無駄よ。この時代の人間じゃ私は殺せない。」
「お、おまえ、まさか!その能力もすべて………。そうだったのか。ならばお前のしていることも俺たちのしていることと同じじゃないのか!そんなにも曾右を守ることになんの意義がある!」
「ふう。あなた、禁忌に大分触れてるようだからもう生きては返さないけど、死ぬ前としてなら聞かせてあげるよ?」
「…」
「私たちは好きでこんなスパイみたいなことしてるわけじゃないの。あちらの世界ではこの時代のこのテロによって時代が動いてしまうようなやむを得ない状態なの。そしてその鍵を握るのが曾右 夢莊よ。」
「あいつが天才の名門高校である期待高校でトップ層であることは認める。しかしあいつが一番であるわけでもなければ、あいつにそれ以外の特技があるとも思えない。」
「あなたにそんなこと教える義理もないけど、一つだけ言っておいてあげる。曾右 夢莊の本名は…」
パン
その瞬間、その声をかきけすがごとく夏世は大野先生に撃ちつけた。3発4発と撃っていく。夏世は悪の笑みのようににやりとし
「私たちのことを知っちゃったもんね。あなたの人生もここまでよ。終止符」
パンパン
血の水溜まりが広がる。それでもこれだけ撃たれても大野先生は立ち上がった。
「お、お前はこの時代をなめきっている。この時代にも裏の国の組織では開発があった。軍事的なものもな。それでお前は曾右を守りきれるはずが…ぐはっ」
パン
「しゃべるな。癪にさわる。」
「おへっっ。そしてそんな開発が今回もある。お前、蜜蜂の仲間を呼ぶ本当の合図が何かなんて想像もつかないだろ。」
大野先生はにやりとし、続ける。
「それはな、"犠牲"だ。蜜蜂は蜜蜂が死んだときに出す液体の臭いにより合図を受け取る。そして俺たち国の場合。血液にその合図が無理矢理組み込まれている。」
「血液投入型感知機能、略してBESだと!この時代にあったのか!」
「ふははははっ、げほっげほっ。だから言っただろう。さあ、ついに始まるぞ。"蜂舞曲"」
そして、大野先生はついに完全に息を途絶えさせた。それからだった。上空から何か聞こえてきた。ヘリだ。城から外に出るといたのは100ものヘリだった。テロリストの人数に換算するとだいたい300人だ。
「くそ!いったいどこから!」
「俺に任せろ。」
城の裏から出てきたのは長身でまだ10代であるであろう男だった。
「あ、あなたは!」
「そう、ただいま失踪中の古川だ。残念ながら俺はお前の敵に当たる。しかしここは交渉を願いたい。」
「こ、交渉!?」
天気は雨上がりという所だろうか。