第一日目ー5
5
<2014年6月30日 午後11時19分 生き残り数18>
~宮殿3階~
俺は古川を助けたい。そして犯人を捕まえて、この事件にけりをつけたい。それは死んだものに対してもそうである。だが俺にそんな義務はあるのだろうか。いや権利があるだろうか。さっき修学旅行持続を優先し人を一人、見殺しにした俺に。
『なにを迷っておる。急ぐじゃが。じきに夜はあけてまう。』
『はい、スミスさん。俺、いきます!』
『おお、いい決心じゃ。わしも最後の仕事をしようかのう。』
『最後の仕事?』
その瞬間
ぽわわわ~ん
再び謎の空間に包まれた。青い神秘的な空間だ。そしてスミスの姿が薄まり始めていた。
『ど、どうしたんですか??』
『わしは超能力的能力を使うと、体がどんどん削られてしもう。今ではテロから身を隠すために身を削っていたが、もう自分のために使うのはいやじゃ。すべての力を使って、お前さんに力を注ぎ込む。』
『やめてくれ!ここまで来たのは、俺の勝手なんだ。そんなのに巻き込めないし、俺は俺自身の力でいく。』
『あまったれるな!本当に大事な人を失うかもしれんのじゃぞ。』
『俺にとって今思う大事な人はスミスさん、あなただよ。未来から不条理に来させられて、帰りたくはないんですか!』
『たいした青年よ、まったく』
それだけ言って、スミスと俺にすごい光で包まれて、スミスは消えた。
※※※
雨の降りだしそうな入道雲の下、夜の暗さと月の光をも隠す強烈な障害物のそれによって完全に、真っ暗だった。雨の臭い、すなわち潮の臭いが漂う。午後11時20分になろうとしてた沖縄宮殿3階。一人の男が倒れこんでいた。曾右夢莊。ただいまゴルゴ・ローレンツ・バイ・スミスに超能力的能力に掛けられたところだった。掛けられたのは、銃を授けられたこと、その技術も与えられたこと、敵の場所情報、そしてスミスとの世界の話以外の記憶の削除だった。多くのことを掛けられ、まだ眠っている。そして
『んーっ。ああ。あれ、なんで俺、こんなとこで寝てんだ?あ、いっけね。古川を助けにいかねえと。んーと、敵の基地の場所は……首里城か。そしてこの宮殿の最上階に、そこへいくしたっぱテロリストのヘリがあるのか。どう考えてもそこに行くしかねえな。』
そういって、夢莊は銃を確認し、この部屋をあとにした。夢莊が寝ていた目の前にはスミスの姿ががあった。完全なるボロボロ。しかし夢莊がそれに気づくことはなかった。認識できなかったのだ。生死を見分けることすらも………
そして雨は降り始める。
※※※
~宮殿4階~
宮殿4階に上った。4階、そこも宿泊ルームだった。俺は敵も古川も別の場所にいるという記憶を持っていたので、ここは後にし、5階を目指すことにした。だがその時、微かな声が俺の心を引き留めた。
『あーん!あーん!あーん!』
赤ん坊の泣き声だ。
俺は自然と駆け出していた。敵は12時に出発予定という記憶があるタイムリミットも近い。だが俺はその声をほっておくことはできなかった。俺は走った微かな叫びに向かって。ただひたすら。音が近づいてくる。自然と足も早まる。何個か部屋を確認してまわる。そして入った404号室。そこには母親であろう死体の上に赤ん坊が泣いていた。俺は許せなかった。なんでこんなことをするのかと。そして決めた。こいつもつれていく。そして絶対に助けてやる。俺の手で。そして俺はこの部屋を後にしようとしたその瞬間。
『………まって……く…だ……さ…い……』
死体だと思っていた母親がしゃべり始めた。
『………そ………の…こを…よ…ろし………くお…ね……が…い……しま……す』
『あなたは、この子の母親なんですか?』
『………は……い』
『この子を連れてくのはもちろん、決めていたんですが。あなたはいいんですか?』
『……わ…たしを…つ……れて…いっても……じきに……し…ぬみ…で……す。そ…れ……なの……に、いっ……たら、…あしで…まといに……なるだけ……で…しょう……。そ……のか……わ…り、その…こを……よろ…しく………お………………………。』
そしてそこで息は途絶えた。出血量は半端ない中、これだけ話せたこと、これが母親の愛の力というものだろうか。だが愛はそこでは終わらなかった。最後の力の振り絞られた母親の奇跡が1手が動き始めた。指で自分の血をつけ、なにやら書きはじめた。
[菜亜ちゃん、生きて。]
きっと、この子の名前であろう。そして俺はその声なき声に答えた。
『はい、助けます。絶対に!』
それで母親は安心の念からか涙を1滴ながし、完全に息を途絶えさせた。俺は絶対に絶対に敵を許しはしない。こんなことして何になるんだ!そして母親のエルゴベビーの紐を取り、自分につけ、赤ん坊をおんぶさせた。そして部屋を駆け出した。階段へ
~宮殿5階~
『あーんあーんあーん』
『ほーらほーら、よしよしよしよし』
覚悟はしていたものの、これはきつい。この菜亜ちゃんの泣き声は敵に場所を知られてしまうとともに、心身集中できない。5階こそはすぐに上に上ってしまおうと思っていたのに、まさかここに階段が続かないとは驚きだった。しかし記憶上の敵の場所情報によれば、敵のしたっぱは、8階に集中していて10階屋上にヘリが設置してあるとのことだ。どう考えてもここで階段が途切れているのはおかしい。ここは最上階ではないはずなのだ。俺は考えながら必死にこの迷路のような宮殿5階を走り回った。泣き子の世話とともに。
真っ暗だった。ほぼ手探りのように走り回っていて疲れて息をいらしていたその時だった。真っ暗の中、自分にスポットライトが、照らされたがごとくの光が生まれた。
『不法侵入者発見!ただちに捕らえるぞ!』
『ちょっと、待ってくれ!俺は急いでいるんだ!それどころじゃないんだ!』
『うるさい!犯罪者がなにをいう!』
現れたのは警備員だった。俺は3人の警備員に銃を向けつけられ、包囲された。俺には銃と銃の技術があるここで、必要最低限の銃撃戦をして、逃げなくては。とりあえず、俺は手をあげた。その瞬間俺に二人の警察が飛び込む。そして俺は瞬間的に銃を抜き、未だ銃を持っているやつに撃った。銃弾は相手の銃にあたり吹き飛び、そいつは倒れこんだ。だが、走ってきた二人が銃を向きつけ、そのまま撃ってきた。俺はそのまま一か八かでがむしゃらに転がって避け、壁越しに隠れた。そしてすかさず、撃ち。一人の警備員の肩に当て、倒れこませた。残り一人。だがそんな相手をしている暇はない。俺は必死で隠れる場所を探した。少し顔を出して探しているところに銃が撃たれ、俺の頬にかすった。いってー。くそいたいは、銃弾のスレ傷はナイフのより。痛がってる間もなく、他の声が聞こえた。
『フハハハハハハハハっ、なにをもめている』
十分、ハデな銃撃戦、泣く子供。もちろん、上のしたっぱテロリストに気づかれてもおかしくないだろう。降りてきたのはやはりしたっぱテロリストだった。しかもすぐ近くに隠しエレベーターがあったらしく、そこに降りてきたのだった。もう一か八かの賭けだった。俺は正面から突撃した。もちろん後ろから追ってくる警備員も一人いた。俺は挟まれていたが、もう何も考えず、いくしかなかった。そしてエレベーターから出てきた瞬間の男の足に銃を撃つ。
『うおっっ。くそったれ!!!!』
男は倒れこんだ。そして走り込みエレベーターを乗っ取る。それでも追いかけてくる警備員。俺はエレベーターのドア閉めた。駆け込んでくる警備員と閉まる扉。どちらがはやいか!一か八かの賭けだった!
『いーけぇーー!!!!!!』
『あーーーん!!!』
同時に赤ちゃんも掛け声のように泣いた。
~宮殿エレベーター(宮殿5階から??)~
閉まる直前、念のための一弾を撃ち、警備員をひるませ、なんとか、警備員から逃げることができた。そしてエレベーターで一気に屋上まで進むと決めた。しかし!このエレベーター、なぜか2階分しか上がれない。どんだけん迷路になってんだよ。そりゃ、テロリストが襲い、基地化したくなるわ。まあいい、とりあえず7階まで進もうと俺はエレベーターのボタンを押した。ゆっくりと動きだし、エレベーターは7階へと到着する。普通に考えて、あの降りてきた男によって俺の侵入情報は上の者に伝えられている。だとすれば、エレベーターが空いた瞬間、敵がずらりという可能性もある。ならば強行突破しか術はない!!俺は銃を構え、ドアが開くのを待つ。ただひたすら、決戦の時を!
※※※
雨は強くなる雷もなっているここ、沖縄宮殿上空。ただひたすら雨は黒いアスファルトを打ち付けている。水溜まりがただただ広がる。黒い夜の下、黒の中に赤のコントラストを描いて。
宮殿7階、銃をもった男7人が列のように、エレベーター前に待ち構える。風は強くなる。その時だった。エレベーターのドアが開き、銃撃戦が始まる。激しい赤の世界が広がった。だがそれは一瞬の出来事だった。
夢莊はエレベーターから出る。
『うおーー!!!!!』
猛き雄叫びとともに遂に突入した。
一人目の肩に撃つ。
そして二人目の足。
三人目の膝。
四人目。
五人目。
相手に撃たれる前に、倒していく。
六人目に撃たれる。
転がり避けきる。
立ち上がり正面から六人目。
七人目は壁に退避される。
そして夢莊も壁へ。
一発撃たれる。
夢莊の左肘にかする。
壁越しに倒れる。
そこに七人目が襲いかかる。
パンパン
先に撃ったのは夢莊だった。
息は切れていたが、エレベーターに待避させておいた赤ん坊を抱いて、先を急いだようだった。
それから強い風はやんだ気がした。
~宮殿非常階段(宮殿7階から??)~
※※※
壮絶な闘いはひとまず、終わった。なんとか、おれは7人相手に勝つことができた。左肘は負傷したものの。まあエレベーターの菜亜ちゃんを狙われなくて幸いである。7階ではゆっくり慎重に部屋を確認し、次への階段、エレベーターを探した。その時たまたま見た窓からの外は大雨で、屋上でのヘリ乗っ取りは面倒なことになると悟ったものだった。そして見つけた非常階段。非常階段へいくのはドアが必要なので、8階のしたっぱテロリストにばれずに、上がることが可能だ。だから俺はこれで上がれるだけ上がることにした。そもそもこれでしたっぱテロリストは合計10人倒している。もう敵も少ないだろう。
そんなかんなで、俺は今、非常階段を上がりに上がっている。赤ん坊は疲れかもれなく眠ってくれた。お陰で刺客の奇襲はなく上がっていくことができていた。
8階
9階
俺はただひたすら上っていった。友人古川を始め、テロリストにねらわれる人々のため、テロリストを許さないがため!
遂に非常階段で上れる最上階へ突入した。そこはまだ屋上ではなかった。屋上へ行くための屋根裏にあるのだろうか、しかしここばかりは非常階段から出るドアを通ってその屋根裏に入り、屋上への道へ進まなければならない。ここが最終決戦になるだろうか。そうその迎えた最終決戦の地、それは……
<<F9M>>
と書かれてあった。floor 9 Mezzanineということか、ここは9階メザニン!!
~宮殿9.5階~
時間は11時50分になろうとしてた。俺は息を整え、ドアを開けようとしていた。深呼吸をする。
スゥーハッッ!!
そしてドアを開けた。案の定いたのは敵4人。不意的に次々に撃っていく。二人は肩に当て、倒す。残り二人はもう撃つ準備をしていた。万事休すか!!と思いながら最後の賭けで片方に飛び込もうとする。
飛びかかる。
二人で倒れこむ。
もう一人が撃ちつける。
倒れこみでなんとかかわす。
倒れこむ瞬間にもう一人を撃つ。
外れる。だが怯んだ。
倒れているやつも怯み中。
そして目指すは非常はしご。
赤ん坊を前にやる。
ただただひたすらはしごへ向かう。
上る。
開ける。
その時!怯みから解放された男から一弾!!
パンパン
『うわぁぁぁぁ!』
赤ちゃんもを前にやってた分、銃弾は俺の背中に命中した。だが
『うおー!!!!!!』
最後の力を振り絞り、俺は屋上へ到達した。まだ闘いは終わらない。
二人は追ってくる。
屋上へのドアを閉め、俺はひたすらヘリを探す。
~宮殿屋上~
背中に当たったというものの、これは想定澄みで、背中には防弾リュックを仕込んでおいた。時刻はまもなく0時。ヘリは今にも上がろうとしていた。
『まぁーーーてぇー!!!!!!』
離陸した。
そのヘリへ、俺は飛び付いた。
中に入った。中にはテロリストが一人、寝ていた。操縦者は怯えていた。おそらくこいつは脅されているのだと悟り、寝ている明らかにテロリストだろうやつを落とした。
『うわーーーー!!!』
目を覚ました男は驚いた。
追っ手二人が屋上に到着する。
俺はこの三人を撃ちまくり、怯ませていく。
『ど、どうすればいいでしょうか??』
『俺はテロリストじゃない!追っ手が撃ってくる急速に逃げてくれ!場所は………首里城だ!!』
『はいー!!!!』
待っていろ!古川!俺は助けにいくぞ!!
『うおーー!!!』
雄叫びとともに、時間は
11時59分58秒
11時59分59秒
そしてヘリは飛び去った。
雨はやんでいた。
~???~
風が強く撃ちつけ、波打ち、雨打つ海の前。白い浜辺は夜遅くの暗さの中で光となりつつあった。今日の雲の中、月の明かりはなかった。ただただ暗い閑散とした世界。
その中に風に抗う者がいた。
長髪、日本人とは言えないような体、顔つき。
立ち尽くしていた。
南の空をみて何やら呟いていた。
『……………… 二人ガ アセ運命デムヌ アンチャメヨオ ヌサリデムヌ あーーーーーーーーーーーあーーーーーーああ』
何かの民謡だろうか。女は呟くというよりはこれを叫んでいた。この湿った夜に何か訴えるかのごとく、この女は歌い終わった。
『…………この臭い、色、味、感触。あの時と同じ。あの10年前と!!』
この女はなにやら感傷的になった。そして雨と波しぶきの隙間に何やら他の液体が頬を流れた気がした。
『…………もう私は負けない。絶対に守りきる。』
そして彼女は風に押された。