表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天気輪の柱  作者: EXPO'91
8/14

少し開いた窓からは、夏の風のにおいがします。


「最近、顔色がよくなったねって、みんな言ってくれるの」


トモちゃんは私に嬉しそうに言いました。


「喘息の発作も出ないし、きっとキョウ君のおかげだわ」


それを聞いて、私はとても嬉しかった反面、彼女が病人であるということを再認識しました。


私といるときのトモちゃんは、いつも明るく笑っている、ひまわりのような女の子でした。


だから、彼女が病人であるということを、私はすっかり忘れてしまっていたのです。


彼女もあえて病気のことに触れたりはしませんでした。


「早く治るといいね」


私がそう言うと、トモちゃんは少しうつむいて言いました。


「私が遠くに行っても、キョウ君、忘れないでね」


「忘れるもんか。退院して東京に帰っても、必ず会いに行くよ」


「ありがとう」


そう言ったときのトモちゃんは、なぜか少し寂しそうでした。



「こほん、こほん」


トモちゃんが、少し変わったせきをした様に感じました。


「ごめん、今日はちょっと疲れちゃったみたい」


トモちゃんは私に、申し訳なさそうに言いました。


「じゃあ、今日は帰るよ」


「うん、またね」


そして私とトモちゃんは、いつもと同じように手を振って別れました。




「やぁ、少年」


廊下の突き当たりを真っすぐ行ったところで、私は、ちょうどトモちゃんの回診に向かう医師に呼び止められました。


前に私をつかまえようとした、あの若い青年医師でした。


私はあの時から、彼にはあまりいい印象をもっておりませんでしたし、彼もまた、私がトモちゃんと会うことをよく思っていない様でした。


「今日もお見舞いかい」


「そうです」


私が無愛想に言うと、彼も引きつった笑みを浮かべます。


「ちょうどいい。君に話がある」


青年医師は私に、一緒に屋上に行くように言いました。


あまり彼とは一緒にいたくない私でしたが、それでも嫌とは言えないくらい、彼の眼には強い決意がこもっていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ